表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第五章 傭兵派遣会社壊滅編
168/256

145 VSラオメイディア―7

「ど、どうなっているんだ。俺の剣が!」

「魔剣ブラッディソードが、君の聖剣を腐蝕させているのさ。ほら、もう刃がなくなっているよ」



 聖剣の刃が魔剣の刃と接触するたびに、聖剣が朽ちていく。

 とうとう持ち手だけとなり、レイランは腹を思いっきり蹴られた。

 衝撃で剣を手放してしまい、床を転がる。

 周りは機械龍の攻撃により、火の手があがっていた。

 焦げ臭い煙が、レイランの鼻孔を刺激する。



「くそ、これじゃあ……」

「僕に勝てない、よね? これで君は、お終いだ」



 レイランは両腕に力を込めて、起き上がる。

 ただ、その手には武器が握られていない。

 絶体絶命に陥ったレイランは、どうしようもなく拳を固めるだけだった。

 ラオメイディアが魔剣を振りかざし、ゆっくりと一歩を踏み出して迫っていく。

 


「僕は過去に全てを奪われた。奪われたものは、もう戻ってこない。だけど、僕には皆から託された夢がある。僕の夢が叶って初めて、あの子たちは報われるんだ」

「何を言ってるんだ、お前は」

「君のように、僕も友達を奪われた。先生も奪われた。だから、君のように復讐を誓った。夢を叶えることを誓った。レイラン、あの時は仕方なかったんだ。君の村を襲うことで、大金が手に入った。傭兵派遣会社をより成長させるための資金を手に入れたんだ」

「黙れ! お前のせいで、家族も友人も失ったんだ!」

「運が悪かったんだよ、君たちは。残念だけど、僕のために犠牲になってくれ。それが僕のためであり、君のためにもなるんだ」



 ラオメイディアは、目の前のレイランに剣を振り下ろす。



「終わりだ!」

「させるかよ!」



 振り下ろされた刃が止まる。

 血に塗れていく片手で魔剣を握り締めていたのは。



「ミミゴン!」

「同情させられんなよ、レイラン! 倒すと決めたんだろ。倒して、復讐を終わらせるんだ」

「藤原君を倒したの、王様? さすがだね」



 人間に『ものまね』したミミゴンが立っていた。

 ミミゴンは掴んでいた刃から手を放し、ラオメイディアは後ろに飛び退く。

 受け止めた手のひらは血だらけで、指先から血が垂れている。



「ラオメイディアも、レイランと同じように哀れな人生を過ごしたのか。だから、同情してほしいのか」

「同情を求めて、負けてほしいと思ったんだけどね。案外、簡単に折れないんだね、決意した心は」

「お前の目的が見えてこない。この傭兵派遣会社で、何がしたかったんだ」



「法則解放党、という秘密結社を知ってる?」



 ミミゴンは顔をこわばらせて、話を聞いた。



「奴らは、僕を殺した。友も殺した。先生も殺した。だから、僕は法則解放党に対抗するため、傭兵派遣会社を設立した。だが、奴らは現れない。おそらく、どこかに身を潜めているのだろうね」

「だから、世界を荒らしまくる。そうすれば、奴らも黙っていないと」

「エンタープライズは潰しておきたかった。世界各国は、君たちを何と評価していると思う? 最強の国だって。じゃあ、僕たち傭兵派遣会社が倒せば、大国は恐れるだろうね。恐れる世界を支配すれば、法則解放党が僕たちを倒そうと現れるだろう」

「協力するということは考えなかったのかよ」



 ラオメイディアは笑う。



「信じることができないよ。信用できるのは、僕を心の底から崇敬する部下だけ。法則解放党は既に、大国を支配している。こうなっては潰すしかないよね、世界を」

「裏で通じているというのか、グレアリングやリライズが」

「エンタープライズを襲ったのも、単に最強を名乗りたいからじゃないんだ。ミミゴン、君が法則解放党に通じている可能性があるからだ」

「何を馬鹿なこと言っている。むしろ、俺たちが法則解放党を目の敵にしている。グレアリング王国が襲われたんだ、奴らに」

「法則解放党の最高責任者は、転生者と呼ばれる存在だ。君は転生者だよね。ミミゴンから漂う雰囲気は、転生者に似ている。藤原君や先生、乃異喪子と同じ臭いだ」



 ミミゴンの目の色が変わる。

 ラオメイディアはミミゴンの変わりようにも動じず、話を続けた。



「転生者というのは本当みたいだね。安心したよ。君も随分、疲弊しているね。藤原君のおかげかな」

「俺を倒して、奴らの場所を聞き出すってわけか」

「正解だよ」

「だったら、無駄だな。俺を捕まえても、奴らについて全く知らないから答えようがない」

「だけど、転生者なんでしょ。法則解放党に繋がる情報を持っているかもしれない。関係ないって顔をされても、僕はやるよ。じゃ、話は終わり。決着をつけようか!」



 容赦なく、ラオメイディアは攻めてきた。

 ミミゴンは、レイランに向き直って叫んだ。



「剣を失くしたのか!」

「すまない、ミミゴン。奴の魔剣は、あらゆる武器を腐蝕させるらしい」

「想定外の事態だな」

「そうでしょ、ミミゴン! 抵抗なんて無駄なんだから、大人しくやられなよ」

「だからって立ち止まっているわけにはいかない。レイラン、俺を使え!」

「は?」



 真っ赤な刃が、ミミゴンを襲う。

 刃の動きを見極め、華麗に避けて、レイランの前に立った。



「俺が『ものまね』できるのは、人や魔物だけではない。物にも化けることができる。そして『ものまね』は、化けた対象の性質を完璧に得ることができる」

「つまり……」

「上手く扱え、ってことだ! 『ものまね』!」



 『ものまね』が発動した途端、ドローンが小さく変形し始めた。

 やがて、聖剣D・ワーフへと姿を変えたミミゴンを、レイランが手にした。



「君が剣になったところで、意味はなさそうだけど」



 魔剣を構えて、ラオメイディアは歩く。

 不敵な笑みを浮かべ、どこからでもかかってこいと訴えるような目で睨んでいる。

 レイランは足元に火が付き唇を噛みしめるが、聖剣となったミミゴンが『念話』で励ました。



(握り締めろ、レイラン! 決して、俺を離すんじゃないぞ。俺も戦うから、お前も戦い続けるんだ!)

「ああ、全力を尽くすのみ……だな!」



 聖剣に雷が走り、レイランは瞬間移動する。

 そして、互いが刃を押し付けた。

 力と力の比べ合い。

 それは自分の全てを理解させようという必死さを感じさせた。

 どちらも主張を譲らず、強引に通そうとする。

 我儘を貫き通すために、二人は戦うのだ。

 全身から噴き出してくる勇気。

 いったい、どこに隠れていたんだ。

 傷口から逃げていく血液に恨み言をぶつけながら、レイランは剣を振るった。

 そんなレイランを見て、微笑みながら語り掛ける。



「もっと早くに、レイランと出会っていたら……僕たちは手を取り合っていたかもしれないね」

「そもそも、村を出る必要はなかったんだ。俺はお前を倒す一心で、飛び出してきたんだぞ! 今は黙って戦えよ!」



 ラオメイディアは距離をとり、ゆっくりと大きな呼吸を始めた。

 腹の底から声を引き絞り、バーベルを持ち上げるように力んでいる。

 すると腕や脚が発達し、スーツの上からでも筋肉が大きくなっているのが確認できた。

 小さく髪に隠れていた角も、全体が威圧感を増すたびに鋭く伸びていく。

 完成された姿は、もはや人ではなく怪物と呼ばれるに相応しい体つきとなっていた。



「『龍化ドラゴハーモニー』! ふふ、一応龍人なんでね。僕の全力、発揮してみるよ」



 変化前と比べ、一回り屈強になった様子は恐怖を引き起こすのに十分だった。

 それでも、レイランは剣を放さなかった。

 これまで積み重ねてきたエンタープライズとの思い出。

 そのことを想うと、何が相手でも立ち向かってやろうという精神力が湧いてくる。



「ぶっ潰す! 絶対に!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ