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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第一章 環境順応編
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14 吸血鬼:脱獄

「あのね、あいつがどんなことしたか分かっているの?」

「ああ、理解してる。だけどな、だからといって処刑は無しだ。だったら、俺の国で有効活用だ!」



 ハウトレットが険しい顔をして、俺の提案を否定する。

 死刑反対だ、グレアリング王国!

 殺すことで許すのか、この国の連中は。

 吸血鬼って珍しい魔人なんだろ。

 働かせて世のために貢献させた方がいいはずだ。



「アンタが、あの殺人鬼を操れるの?」

「ああ、あいつは『あなた様についていきます』と言ったぞ」

「殺されたくないからじゃないの? 助かった後で裏切られるのがオチよ」

「そうとは限らないだろ」

「可能性は高いですけど。まあ、それより処刑のことね。国としては早く殺したいはずよ。国民の前で殺せば、平穏が訪れたと安心するの。アンタは、殺人鬼が出没するようなところに人が行くと思う? 人間とはそういうものよ」



 近くで通り魔事件が発生しました、犯人は今も逃走中です、って言われて、じゃあ遊びに行こうかとは難しいしな。

 言いたいことは分かるが。



「当日、どういった処刑方法なんだ?」

「さあ? 首チョンパされて火あぶりかもしれないし、新たに開発された毒薬の実験に付きあわされるかもね」

「俺としちゃ、丸々解決できる方法が良いんだけど」

「ま、頑張りなさいな。私はこの件に一切関わらないし、じゃあね」

「せめて、情報を! 王城の内部とか、見張りの数とか」

「知らなーい。ワタシ、シロニイッタコトガナイカラ」

「嘘つくなよ!」

「処刑されるの、明日だと思うから」

「ハァ!?」



 ハウトレットは、さっさと出て行ってしまった。

 俺一人で何とかしろと。

 今夜で策を立てろと。

 国に気付かれないように処刑を回避し、吸血鬼を連れ去る方法。

 無理に等しいのでは。



(何悩んでいる、我が親友よ。我がいるではないか)



 エルドラ! 手伝ってくれるのか!



(もちろんだ。助け合うのが親友なのだ)



 心強いぜ、エルドラ!

 もたもたしてる場合じゃない、すぐに出発だ。

 しばらくしたら考え付くだろ。



「アイソトープ、ラヴファースト! 俺の呼びかけに、いつでも対応できるよう王城前に待機だ」

「かしこまりました」

「本は、いいのか?」

「そんなもん、いつでも探せる! 俺に触れろ」



 未だ吸血鬼の俺に二人は触れ『テレポート』を発動する。



(まあ、何も思いつかんがな)







 瞬間移動で、王城前。

 浮かれているのか、上機嫌の衛兵が城の前を行ったり来たりしている。

 邪魔だなー、蹴散らして進めればどれだけいいだろう。

 いざという時の二人は目立たない位置に配置させ、俺だけで攻略する。

 『ものまね』とか駆使すりゃ何とかなるはず。

 その辺の衛兵に化けて、お邪魔する。



 よし、すんなり通れた。

 開きっぱなしの扉を潜り、赤色の美しい絨毯の上を歩き、見張りしているような足取りで、地下牢まで進む。

 目当ての牢は地下二階に存在していると、エルドラから連絡が入った。

 ついでに見張りの数や位置も教えてくれる。

 あれ、楽勝じゃないか。

 案内された通りに、地下一階へと続く階段を下りていく。

 階段を下りた先の長い通路を突き進んでいった。

 倉庫とかの物置部屋が多い。

 あれは、地下二階への階段か。

 慎重に下りていくとするか。



「おい、止まれ。そこの衛兵」

「は、はい!」



 うん、誰だ?

 恐る恐る振り向くと腰に剣を帯び、強そうなオーラを醸し出している男がいた。

 少々老けており、50手前といった感じか。

 動きやすそうな防具を装着した人物が俺を呼び止めた。

 ばれる可能性あるかな。

 自然に振舞おう、そうしよう。



「ななななな、なんでしょうか」



 全然、自然じゃない。

 不自然の極みだ、これでは!

 『危機感知』が反応し続け、落ち着けない。

 いらないよ『危機感知』なんて。

 オフにできないのこれ。



〈できますよー〉



 できるんかい。

 さっさと、オフにしてくれ。



「質問! どうして、こんなところにいる?」

「は! きゅ、きゅうてつちを……」



 肉を貫く鈍い音が、耳に入ってくる。

 腹に剣が刺さっていた。

 て、なんで剣刺さってんだよ。

 緊張で舌、噛んだだけだろ。

 許してくれよ、それぐらい。



「怪しいな、見張りなら足りているが」

「足りてないですよ! だって、さっき見張りをよこせって」

「だったら俺に届いているはずだよな、その連絡」



 怪しいからって、いきなり刺すかよ。

 いつ刺したんだよ、見えなかったぞ。

 こうなったら、強引に突破するしかない。



「お前、誰なんだよ」

「ほう、白状したか。俺はアルテック。グレアリング最強の剣士と呼ばれている」

「自己紹介どうもありがとう。じゃ俺、忙しいしまたな」

「質問! 行かせると思うか?」



 何が質問だ。

 答えは沈黙だ、答えられないんだよ。

 じゃあ……な!

 階段目がけてダッシュしたが、足を斬られて前のめりに倒れてしまった。

 迷いなく両足真っ二つにしやがって。

 断裂面から血が出てきて、痛みを教える。

 アルテックは腹に刺した剣と別の剣を手に持って、油断なく構えている。



「質問! 足を失った感想は」

「痛いし、死にそうが答えだ。満足しただろ、オッサン。テレポ……」

「オラァ!」



 『念話』で、エルドラに助けを求める。



 緊急事態!

 こちら、ミミゴン!

 今、ザックリとトマトを切るように、鎧を貫通し背中を斬られました!



(こちら、エルドラ。直ちに『テレポート』を行え)



 茶番は続けなくていいんだよ。

 それより、『ものまね』の効果が切れる前に早くしないと。



 了解、『テレポート』!



 追加の斬撃を食らう前に脱出を果たす。

 スキルの効果が切れ、機械の体に戻る。

 城を離れ、オルフォードがいた洞窟に移動した。

 それにしても容赦なさすぎだ、アルテック。

 動けない俺に斬撃の雨でも浴びせよう、と言わんばかりに突いてくるし。

 あいつに見つかって今頃、城の警備はより強固になっただろうな。

 いっそのこと殺すべきか。

 いや、より騒ぎになるな。

 地下二階までの道は一回見たし、そこまでは余裕だが。

 エルドラ、あいつはどこにいる?



(ターゲットの真ん前だ。これでは脱獄など不可能だ)



 オッケー、ありがとう。

 さて、助手。



〈はーい『見抜く』を使用しましたー。睡眠耐性は半減ですねー〉



 半減でも効くんだったら、俺の『邪悪』は発動するな。



〈その通りですー。対象を眠らせるスキル『グッスリープ』でいい夢、見させましょーう〉



 目が覚めたら悪夢だけどな。

 さてと、第二ラウンドの始まりだ。







 『テレポート』で地下二階へと忍び込む。

 『潜伏』で姿を見えにくくし『消音行動』で音を立てず、目的地までササッと目指す。

 あちこちにいる衛兵も、俺の存在には気付かず、吸血鬼のいる牢へ瞬時に辿り着いた。

 当然、アルテックが衛兵と共に前に立っている。

 と、ここで『グッスリープ』を発動する。

 それによって、ホワーと白い煙がアルテック達を包み眠らせた。

 グレアリング最強の剣士でも疲れているはずだ、眠ってくれ。

 眠っていることを確認した後、牢屋の奥に足枷をはめられた吸血鬼の様子がうかがえる。

 牢を指でコンコンと叩き、俺がいることを知らせる。

 暗い表情の顔を上げ、状況を確認する。



「あなたは……」

「お前を出しに来た。ちょっと待ってろ」



 素の俺である宝箱の背面から一本の手が出てくる。

 エルドラが造った『ロックピッキング』のスキルが付与された小さな手を鍵穴に差し込み、すぐにガチャンと扉が開く。



「よし、よく聞いておけよ」

「は、はい……」



 一通り作戦を話終わり、一件落着のために二人は動きだした。

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