吸血鬼を倒した英雄
アリオス視点。吸血鬼逮捕から、しばらく時が経つ。
「ウ……ウーン」
「目が覚めたか、アリオス」
「……ガルドさん?」
真っ白なシーツが下半身を被さり、ベッドの上で目が覚めた。
腕を見て、胸を見て生きていることを確認する。
生きている……けど、包帯で巻かれ、傷がどうなっているかは確認できない。
吸血鬼との戦闘は、どうなったんだ?
あの人は。
「あの……」
「心配しなくていい。吸血鬼なら牢の中だ。日を拝むことのできない場所にな」
「え?」
「アリオス、お前のおかげだ。奴を捕まえることができたのは。今頃、お前が国を救った英雄ってグレアリング中に広まってるさ。殺すことが任務だったが、まあ捕らえることが良いか」
「僕が、やったのか?」
ガルドさんの体にも包帯は巻かれ、それらを隠すように服を着ている。
胸にナイフが刺さっていた体だったのに、ガルドさんは何事もなかったかのように振舞っている。
こうして生きているのも、あの人がいたからだ。
「僕が吸血鬼を捕らえたとなっているんですか?」
「ああ、今度の王城で開かれるパーティーには主役として出てもらうだってさ。それに褒美も豪華だとよ。良かったじゃねーか」
「いえ、僕は……何も活躍していません! あの人達がいたから」
「――謙遜も過ぎれば傲慢だぞ。アリオスがやったんだ、気絶していたらしいから記憶がハッキリしてないんじゃないか。それともあれか、師匠が言っていたが無意識で……」
生還者は僕ら二人のみ。
ロータスにエアド、サダルも帰らぬ人となってしまった。
そして、吸血鬼を捕らえたガルドとアリオスが英雄となっていた。
いや、僕がやったわけがない。
あの人がやったんだ、きっと。
褒美を受け取っても使わない。
いつか探し出してその時に渡すんだ。
「あの、ガルドさん。僕、ハンターになります」
「ハ!? バカか! お前な、王に仕えることの有難さや王が育てて下さったことを忘れるっていうのか? 解決屋になるより金は貰えるし、比較的安全だ。家族だっているだろ!」
「探したい人がいるんだ」
「だったら解決屋に頼めばいいじゃねーか」
「う……」
確かにそうだ。
解決屋に頼めば見つかりやすいし、楽だ。
だけど探すにしても特徴がない。
人探しには特徴をいくつか求められる。
覚えてないよ、あんな状況で。
自分で地道に探すしかないのか。
けど、僕に目標ができた。
恩人を探すという、目標が生きる動機になった。
今までただ飄々と、目的も持たずフラフラと暮らしてきた自分に、光が宿った。
必ず見つけ出し、感謝しなければ!
「おとうさーん!」
今はしっかり働いて、家族を守らないと。
恩人に助けられた意味が無いから。