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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第五章 傭兵派遣会社壊滅編
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122 魔法剣―7

「私も戦おう。『魔法剣』は今こそ、輝く時なのだ!」

「バルゼアー師範……なら、俺は空の化け物を何とかする!」

「無理はしないでくれ」



 師範は要塞に戻り、兵士に色々と指示している。

 兵士は聞いて頷き、それぞれの場所に向かって走っていく。

 もしかして師範って、ここの権力者に値するのか。

 俺もじっとしていられない。

 周りの人を驚かせるかもしれないが、サイボーグドラゴンは厄介だ。



〈うーん? 『見抜く』が反応しませーん〉



 弱点などの情報なら、戦っている内に収集できるはずだ。

 助手、攻撃を任せたぞ。



〈自分勝手ですねー。では……飛びますよー!〉



 嬉々とした声が脳を揺らす。

 『自由飛行』を発動させる。

 腰を落とし、助手が身体を制御して、脚に思いっきり力を込めた。

 そして、天空を貫く。







 風が顔に打ちつけられ、赤い髪は暴れまわっている。

 正直、目を閉じてしまいそうな勢いだ。

 それでも必死に、こじ開ける。



 真っ直ぐに伸ばした体で、巨大な龍の正面に占めた。

 龍の無機質な目が、こちらを捉える。

 近くにいるからこそ感じる……圧倒的な大きさ。

 蛇足と同じくらいの巨大さではないか。

 奴は機械の口を大きく開けて、待機していた。

 熱気が収束していっている。

 助手、大丈夫かこれ。

 当たったら。



 不意に体が動く。

 すると、さっきまで漂っていた空間に一筋の光線が貫通していったのを横目で見た。

 ギリギリ!

 光線の行く末を確認すると、背後の山が大爆発を起こし、山全てが消失していた。

 なんだ、その威力。

 爆発の影響は近くのセルタス要塞にも被害を及ぼし、様々な物資が空へ舞っていくのを見つめていた。

 砂煙の中に、人影もある。

 あれを絶対に防がないといけないな。

 振り返って、敵を睨む。



「ミミゴン……あの時、殺せなかった奴だ」



 サイボーグドラゴンから声がしたような。

 強い風が、邪魔をして上手く聞き取れなかったが。

 確実に今、こいつは声を発した。

 深刻なほどに弱い声、気力の欠片も感じられない調子。

 独り言を呟くように。



「おい、お前! このサイボーグ! 傭兵派遣会社の奴だな!」



 風に負けない覇気のある声で問い質した。

 機械仕掛けのドラゴンとはいえ、聴覚はあるはずだ。

 耳がどこかは分からないが。

 再び、聞き取りづらい声が漏らされた。



「偉そうに。良太のチートを潰しておいて……」

「なんだって? 全然、聞こえねぇんだよ! ちゃんと喋れ!」

「エンタープライズ! 特に、あの剣士!」



 助手が聴力を良くするスキルを発動してくれたのか、今度は上手く聞き取れた。

 エンタープライズ……剣士?

 ラヴファーストのことか?

 なんでこいつ……ラヴファーストのことを。

 と考えていたら、龍の頭に誰か乗っているのが見えた。

 小柄で栄養不足と言っても過言ではない少年。

 男は不安定な足場で立ち上がり、俺を指さした。



「この……なんだっけ、いま、いまじ……ああ、そうだった! AI搭載人造魔生物”イマジン”! 殺されろー!」



 弧を描くように顔を動かし、咆哮する。

 音が戦場を揺動していた。

 次の瞬間、イマジンの翼、胴体からミサイルの頭が飛び出し、狙いを定めて放たれた。

 エックスの爺さんが作ってた49号よりも、凶悪な改造をされているみたいだ。

 機関銃も現れ、連射し始めた。

 助手に任せるしかない。



〈私の体じゃないんでねー!〉



 飛来するミサイルを次々と躱し、体はねじ切れそうなくらいに捻っている。

 痛みは感じないが、本物の人間だったら危険な行為だ。

 他人の体だからって、やりすぎだろ。

 ミサイルは自動追尾するみたいで、再び束となって襲い来る。

 銃弾も蜂の巣にしようと加速して囲んできた。



〈ミサイルは、避けちゃえー〉



 目が回るほど、空中で一回転し、すんでのところで避けたみたいだが。



「そこで爆破!」



 少年が叫ぶと、共鳴するようにミサイルが弾けた。

 ミサイルの自爆は無数に発生し、それは俺の周りでの出来事だ。

 爆発の衝撃が押し寄せてくる。

 じょしゅー!

 花火大会の上空のように爆散し、激しい破壊力を伴って殺しに来た。

 助手は咄嗟に『バリアウォール』を張ったみたいだが、少々爆発に巻き込まれたみたいだ。

 片足がちぎれ飛んでいる。

 落ちていく片足を容赦ない弾幕で、粉々になった。

 ゲームオーバーが目の前で再現されている。

 助手、あんなことにはなるなよ。

 『バリアウォール』に、大量の散弾が衝突し裂けて割れている。

 魔力が続く限り、黄色い障壁が破られることはないが。

 じっと守りを固めていても、攻撃していることにはならない。



 エルドラの力を借りるか!

 助手、付いてこいよ!



〈私のセリフですよー!〉

(我の”ものまね”をするなら許可を……)



 いちいち許可取ってられっか!

 『ものまね』!



 肉体が変化し始める。

 人間だった肉体は、引き伸ばされるように高身長となっていく。

 筋肉は徐々に厚みを増していった。



 ……あれ、人間で変化が止まった?

 手も足も、人の状態だ。

 確かに変化したよな、俺。

 エルドラをイメージしながら……。



(ミミゴン! 前だー!)



 顔の真ん前に、ミサイルの頭があった。

 鼻を直撃し、中が割れ……全てを蒸発させるほどの爆裂を引き起こした。

 景色が一瞬にして、真っ白に無理替えられる。

 意識をも脳内から排除され、時が止まったかのように体が反応しなくなった。



 絶叫を絞り出してみたくなった。

 どれだけ声が出せるか、調べてみたくなった。

 無意識が雄叫びを噴出させたのだ。



「あああぁぁぁぁぁー!」



 脳に纏わりついていた靄が一気に晴れた気がした。

 限界まで振り絞った声が、全ての感覚を呼び戻した。



〈遅いですよー。さっさと慣れてくださーい〉

(ミミゴン! 聞こえるか! 我だ、エルドラだー! 殴り飛ばしてやれぇ!)



 目が覚めると、空を蹴り飛ばして、一瞬でイマジンの許まで詰め寄り、胴体に一発渾身の右ストレートを打ち込んだ。

 くの字に折れたドラゴンの背から、少年が落下していくのが視界に入った。

 開き切った瞳をしていた。

 胴体に穴を空けられたイマジンも、少年と同じように沈んでいく。

 やっと反撃できた……これで終わりだと嬉しいが。



(よくやったぞ! ミミゴンと……”最強の我”が繰り出した拳! これが一番強い組み合わせだ!)



 エルドラの言葉に引っ掛かった部分がある。

 あれほどの威力を発揮した、この拳は。

 人の姿をしたエルドラだった。

 強力な爆発を顔で受けても、無傷だ。

 人型のエルドラをイメージしたのか。

 コンパクトな体型ながらも、エルドラの力が使えるとはな。

 『ものまね』の強さも、ハッキリした瞬間だった。



「このクソ野郎がー! ぶっ殺す! お前も、この地も全て!」



 下から喚く言葉が飛んでくる。

 空に浮く俺は、見下ろして確かめた。



「エルドラの一撃だぞ!? なんで、あいつらも無傷なんだよ!」

〈油断しないでくださーい!〉



 宇宙を目指すロケットのように、垂直に突っ込んでくるドラゴンは大口を開け、光線を連続して発射してきた。

 背には、怒りを爆発させた少年も乗っている。

 助手による身体操作で光線に掠ることもなく、避けて避けてを繰り返す。

 突進するイマジンから『テレポート』で距離を離したのだが、押し上げられるほどの風圧を喰らった。

 それでも、エルドラだからか飛ばされるようなことはなかったが。

 ここにいても、あの強風。

 まともに食らっていれば、無事では済まないだろう。

 先ほどから、嫌な想像ばかりが脳裏をよぎっていく。

 集中しろ、俺!

 背に乗っている少年から怒気を含めた大声が、解放されてくる。



「腹が立って腹が立って! 抑えきれない! うぜぇんだよ、ゴミが! てめぇは、さっさとくたばれよ!」

「言いたい放題言えて、満足だろ。なら、俺も言わせてくれ」



 区切って、深く吸い込んで……風をも跳ね返す叫び声を振り絞った。



「人を見下す発言が大っ嫌いなんだよ! 思い通りいかないくらいで暴言なんか吐いてんじゃねぇよ! 二度と、その口から人を激怒させる言葉、出すんじゃねぇ! お前は、家に帰ってパズルゲームでもしてろや!」



 怒鳴り声を発しながら、イマジンは頭突きを繰り出してきた。

 人間の姿で食らえば、骨と付くものは粉々になる威力だろう。

 握り拳で、空間を振動させる頭突きに打ち放った。

 台風のような強い風が発生し、お互い突き進もうと力を込めている。

 背で睨んでくる少年を鋭い眼差しで睨み返す。

 お前が相手しているのは誰だ。

 パワードスーツ着たドラゴン如きに負けてたまるか!

 胸に溜まった怒りを吐き出し、それをパワーに変える。



「押し返す! 俺に勝てるもんかー! バー……カッ!」



 めり込ませた拳を中心に、頭部の装甲が剥がされていく。

 剥がされた装甲は風に巻き込まれ、行き先を見失ったように舞っていた。

 どんどんと、へこんでいく鼻頭。

 耐え切れなかったイマジンは、後方に吹っ飛んでいく。

 少年は回転する龍の背で、必死に操縦しようと踏ん張っていた。

 怯んでいる隙に、追撃しようと拳を構えたが助手の声で遮られてしまう。



〈レイランたち、苦戦しているみたいですねー。先ほどから状況が進展していませんよー〉



 レイランたちを死なせるわけにはいかないな。

 助手、ここは頼んだ。

 攻撃を決して、セルタス要塞に当てないでね。



〈はいはい、任せてくださいー。それと『分身』で、エルドラに変身しないでくださいねー〉



 なんでだ。



〈このエルドラ、消費する気力が激しいんですよー。あと一回しか『ものまね』できませんよー〉



 わかったよ、人間で挑む。

 『分身』を発動させ、エルドラの肉体から分身体の人間が現れる。

 毎度おなじみの赤髪人間だ。

 『自由飛行』を解除して、スカイダイビングを楽しむように地上を目指した。

 どうやら、10人ほどの竜人相手に苦戦しているみたいだった。

 予想は悪い意味で当たってしまったのだ。

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