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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第五章 傭兵派遣会社壊滅編
129/256

119 魔法剣―4

「ほんとにあるのか、その……祠。それに武器! 聖剣……エクスカリバールだっけ」

「あるらしいぞ! 情報を信じてやれ」



 セルタス要塞から歩いて、30分。

 山の中腹まで登り続けて来たものの、今のところ何もない。

 魔物も、ハンターが狩りまくったのか……一匹も現れないのだ。



「早く振り回してやりてぇ! 『魔法剣:雷』!」

「いてッ! 急に発動するな!」



 レイランの肉体は雷を纏い、散った火花が俺の皮膚を焦がした。

 はぁ、助手……この辺の魔物を探してくれ。



〈『探知』ー! ……何体か、こちらに向かってきましたよー〉



 そうか、ありがとう助手。

 礼を伝えて、レイランに向き直る。



「近くにいるみたいだぞ」

「そうみたいだな。早速、見つけたぜ!」



 大型の魔物が、レイランを目指して駆けているのが確認できた。

 まずは、毛色が青い馬型の魔物か。

 叫び声を発し『ブリザード』を唱えようとしているみたいだ。

 それに対し、レイランは剣を構え、魔物に狙いを定めて。

 瞬間移動した。



「ハァッ!」



 胴体に電撃の走るブレードを突き立て、一瞬の間に何度も切り裂く。

 目で追えないほどの斬撃を繰り返し、魔物は小さく唸って横ざまに倒れ落ちた。

 まさに、瞬殺と言うべき速さで仕留めた。



〈『魔法剣:雷』は自身の肉体を魔法の電気に変化させ、高速行動できるのですー〉



 魔法剣すげぇな、体も変化させるのかよ。

 レイラン本人は嬉しそうに左手を握り締めていたが、大きな音が響いて、すぐに剣を構えなおした。

 音の発信源に顔を向けると、根元から抜けた大木がレイラン目がけて飛空していたのだ。

 おいおい、大丈夫か。

 手を伸ばしてレイランを庇おうと思ったが、本人は平気な顔をしてスキルを詠唱した。



「『魔法剣:氷』!」



 彼の体を覆っていた電気は散り、一瞬にして剣が厚い氷に覆われていく。

 出来上がった大剣を振り下ろして、間一髪激突を防いだのだ。

 大木は中央で断切され、他の大木を倒すかのようにして衝突し、沈黙した。

 レイランの剣は、元の二倍ほど長くなり、氷の刃へと進化している。



〈『魔法剣:氷』は魔法の氷によって武器を変化させたりー、活用すれば自身を守る鎧もつくれるスキルですー〉



 次々と大木がレイランを襲うが、斬り飛ばしながら走り抜け、魔物を討伐しにいった。

 レイランの雄叫びが高らかに響いてくる。

 さて、この間にエルドラに探してもらうか。



(任せておけ! 出番出番だ!)







 木に寄り添って座り込んでいるのは、レイランだ。

 肩を上下させ、呼吸が荒い。

 拠点開発研究所にもらったバトルスーツが、血と泥に塗れていた。



「『フェムトヒーリング』……はぁ。レイラン、レベルは上がったか?」



 呆れながら訪ねると、悠長に頷いた。

 伸ばした手を握り、立ち上がったレイランは大木に背を預ける。

 周りは、可哀想な魔物の死体で溢れかえっていた。

 今さら、レイランは魔物の素材など不必要だろう。

 ということで、こちらで有効活用させてもらおうか。



「ツトム、お前の経験値に使ってもいいぞ」

「ありがとうございます、ミミゴン様。それでは……いただきます!」



 黒い影が飛び出すと、魔物は瞬きする間に血が吸われ尽くされ、醜い状態になっていた。

 片付け終わると、再び俺の影に潜んだ。

 思わず、という表情でレイランは目を見開きながら聞いてきた。



「今のは……なんだ?」

「はは……秘密だ。俺の中に三人いて、その内の一人が飛び出したんだ」



 助手、エルドラ、ツトムが俺の内にいるのは事実だ。

 馬鹿げた話だが、とてつもなく心強い仲間。

 さあ行くぞ、と声を出して、レイランは歩き出す。



「なあ、ミミゴン。聖剣がある祠は、どこなんだ?」

「ん、ちょっと待っててくれ」



 エルドラに頼んでから、しばらく経っている。

 『念話』で状況を確認しようとしたが、既に脳内に声が届けられていた。



(あったぞ、ミミゴン! というわけだ、助手よ。『土地鑑』のスキルを発動させて、我が位置情報をマークするぞ)

〈はいはーい〉



 無気力感漂う声が聞こえたかと思ったら、不意に周りの地理が理解できるようになった。

 まるで、以前から現在に至るまで何回も来たことがあるかのように、セルタス山に慣れた気分だ。

 当然、例の祠も感じ取れた。

 手招きして、レイランを付いてこさせ、自分は祠まで一直線で向かうことにした。







 大木が生え揃い、草は茂り、誰でも歩けるような綺麗な道などあるはずもなく。

 雑草を踏みつけ、ようやく辿り着いた場所には。



「ここに聖剣エクスカリバールが」



 レイランは目の前の殿舎を眺めて、呟いた。

 確かに、一般的な”祠”を発見した。

 神を祀った小規模ながらも、不穏な雰囲気を放つ祠だ。

 観音開きの戸に木製の切妻屋根。

 戸を開けたいところだが、こういうのにあまり触れたくないものだ。

 日本の祠には仏像や神像が収められていたはずだが、ここは異世界。

 何が出てくるか。

 近づいていくことで、目当ての物も発見できた。

 祠の前には石の台座があり、聖剣が刺されて安置されている。

 レイランが早速、引き抜こうと柄? の部分を握り、持ち上げた。



「おお! これが聖剣か。何だろう、神秘的な何かが胸の内を占めていく感じだ」



 ……バールだ。

 二メートルほどの大きなバールを構えたレイランが、重々しく振り回していた。

 てこを利用する鉄製の大工道具にしか見えない。

 扁平な形状をしており、片方の先端は90度近く曲がっている。

 釘の頭が引っ掛かるように切り込みもある。

 しっかし、これが聖剣エクスカリバールなのか。

 それに、この祠はなんだ。

 謎が多いな。



〈祠はともかく、レイランが振り回しているバールは間違いなく聖剣エクスカリバールですよー。込められているスキルは『能力無効化』ですー。つまり『超再生性質』を持つラオメイディアにも、ダメージが入るということですねー〉



 勢いよく振り回されていたバールの先端が地面に落ち、レイランはかなり疲労していた。



「お、重すぎる……それに、力が抜けているみたいだ」

「なに? ちょっと貸してみろ」



 聖剣を受け取り、掲げてみた。

 確かに重さを感じる。

 かなり重いと言うほどではないが、レイランからしてみれば持ちにくい重さだろう。

 それに力が抜けているみたいだ、と言っていたが。



〈これは転生特典の武器ですよー〉



 転生特典の武器?

 ということは、俺のような転生者が手にしていた武器ということか。



〈これは転生者以外が手にすると、体力が奪われてしまいますー。……レイランには相応しくない武器ですねー〉



 なんだよ、そりゃ。

 こいつが無いと、まともにラオメイディアと対峙できないぞ。

 どうにかして、レイランでも扱えるようにしないとな。

 『武器スキル付与』で『無重量』でも。



〈『武器スキル付与』を使用することはできませんよー。これ以上、スキルを付与することができないのですー〉



 一先ず、こいつは預かっておくか。

 レイランに軽く説明しておき、納得してもらったところで『テレポート』を発動する。

 帰ったら、レイランは師範と修行だな。

 俺は、聖剣をどうするか考えないと。

 最後に祠を見つめた。

 神を祀るための祠だが、こいつはいったい何を祀っているのか。

 誰が祠をここに建て、誰がバールを突き刺したんだ。

 バールの持ち主は、どんな人物だったんだ。

 俺の周りは、”謎”に囲まれている。

 俺が何かするたびに、問題が発生していく。

 いつになったら、スッキリできるんだ。

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