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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第五章 傭兵派遣会社壊滅編
122/256

112 VSラオメイディア―5

 ラオメイディアは構えた拳を振り下ろしてこない。

 首に走る痛みを我慢して、顔を見上げる。

 奴は俺でなく、横を向いて立ち止まっていた。

 驚いたのは、ラオメイディアの胸に短剣が刺さっていたこと。

 誰かがやったのか。

 解決屋も特殊部隊も全滅したはずだ。

 生き残りがいたとは考えにくい。

 死体は爆発したのだ。

 じゃあ、一体誰が。

 耳も目も不確かになってくる。



「『ベノムレイン』『ジャッジメント』!」



 『ベノムレイン』による毒の弾丸が、ラオメイディアを狙撃する。

 脚に渾身の力を込めて、俺から一気に離れていく。

 後退するラオメイディアに、空から光の槍が降り注ぐ。

 『ジャッジメント』という第三クラス魔法にして、最強の魔法。

 最初の一発は躱しても、連続して降り注ぐ魔法に貫かれていく。

 それでも致命傷には見えなかった。

 余裕の表情、獲物を発見した時の喜びを表現しているみたいだ。



「その赤毛……まさか、君まで来るとはね。やっぱり、僕を殺すために?」



 誰と会話しているんだ。

 首を捻って、ラオメイディアが見ている視線の先にいる者を確認する。

 あ、あいつは。



「今回は違う。そこに倒れているテル・レイランを助けにきたんだ」

「ミミゴンだよね! 【名無しの家】での出来事……最高に悔しかったよ」



 ミミゴン……!

 黒い人影が地面に沈んでいくのを見て、目を擦ってしまったが……こっちに足を進めてきているのは間違いない、ミミゴンだ。

 あいつだけが放つ独特の雰囲気……エンタープライズで感じたのと同じだ。

 ミミゴンはゆっくりと近づいてきて、俺に辿り着くと。



「酷い様だな。それに、この場所も……」

「なぜ、ここに……来たんだ」



 声を発するだけでも、全身に激痛が行き渡る。

 人間の姿をしたミミゴンの足首を掴む。



「レイランを死なすわけにはいかないからな。さ、帰るぞ」

「ラオメイディアを……倒してくれ! 奴を!」



 俺が決着をつけたかった。

 けど、今……奴を殺せるのは、ミミゴンしかいない。

 縋るように頼んだが言葉にしたとたんに、嫌な顔をして体を持ち上げられた。



「ばーか、あいつはお前が倒すんだよ。そのために今まで生きてきたんだろ」

「でも……俺じゃあ、勝てない」

「”今”はな。けど、不思議なことに人っていうのは、成長できる生き物なんだ。復讐でも、しに行けばいいさ……レベルアップした後でな」



 言い返せなかった。

 今、死んで復讐すらできないか……後ででもいいから、生きて強くなるか。

 後者の方がいいよな。

 ミミゴンの言う通りにした方がいいのか。



「前回の続きをしようよ、ミミゴン! 『テレポート』は使わないでね」

「……テレ」

「『スクリューショット』ッ!」

「いてっ……うわぁ、穴あいちゃったよ」



 鳩尾が服も肉も捻じられたような見た目になってしまい、中心部分に穴ができていた。

 血が噴出しているが、さほど困った様子はなく、手を当てて治したみたいだ。

 ミミゴンも恐ろしい。



「あはは、ミミゴンくん……驚いたよ。強すぎるんじゃない、君?」

「いや、もっと強い奴いるからね。あと、お前も強すぎるだろ。さっきから見てたけど、首取れても元通りなんてな」

「ミミゴン……君は合格だ。君になら殺されても構わないよ。さあ、来なよ」



 ミミゴンは鼻で笑って。



「今度な。傭兵派遣会社『VBV』ごと潰しに行くから、待っておいてくれ」

「なるほどね、分かった。僕は本社で待ち構えておくよ。時間はいつでもいいよ。好きな時に攻めてきてくれ。それまで、僕は働かないから……傭兵たちもね。君たちと再戦したいと思っていたんだけど、ここで叶うなんてね。今日は、これで”終わり”だ」

「ユーモアな社長で、ありがたい。『テレポート』!」



 突き立てられた剣を回収して、ミミゴンは奴に背を向けた。

 ミミゴン……お前には分からないかもしれないが、僕は本気でやって……こんな様だ。

 なのに、どうして平気なんだ。

 人としての心はあるのか?

 それとも、強すぎる力を持っているからか?

 俺は今日、全てに決着をつけたかった。

 今日は15年前、マギア村が世界から消え去った日。

 同時に、10歳の俺が誓った日。

 あいつらを救って、ラオメイディアを殺すと誓ったんだ。

 今日は特別記念日なんだ。



 真っ白な光を浴びて、目を閉じてしまった。

 死闘から解放されたからだろうか、無理矢理抑えていた疲れが湧き出てきた。

 ああ……よく戦ったな、俺。

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