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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第一章 環境順応編
11/256

11 グレアリング王国:解決屋

「ここが【不羈の王国 グレアリング】か」

〈グレアリングは主に人間が多く暮らしており、人が中心の国ですー。現在は『グレアリング・リーブ』が王を務め、国民をまとめていますー〉



 『高速移動』のスキルで一気に走ってきた。

 いい加減、旅がウンザリしていたのだ。

 その旅も終わり、身近にいた女の子に『ものまね』で化けた。

 フード付きの衣服を着ていたのでフードをかぶり、こそこそと解決屋ハウトレットへ、ラヴファーストと共に目指していた。

 門から入って、驚いたのは人の多さだ。

 屋台を開いて商売していたり、買い物客や行商人で、にぎわっている。

 中には、鎧や武器を担いだ人も見かけたり、助手に聞いていたドワーフと思われる大人の身長の半分くらいで立派なヒゲを付けた者が鍛冶をしていたり。

 石畳の地面にレンガの家、中央には大きな城が誇らしげに建っていた。

 あの城には王様が当然いる。

 『危機感知』もあちこちから反応して、うざくなってきた。

 さて、解決屋ハウトレットと書かれた建物の前に来たわけだが、そんな簡単に長と会えるのか?

 そんなことを考えている間に、ラヴファーストが建物に入って行った。

 俺も続けて、入ろうとするが。



「おい、お嬢ちゃん。すまんが、小さい子は中に入れないんだ。悪いな」



 門番二人が、俺の目線に合わせようと膝を折って話しかける。

 うーん、あまり目立たないと思って女の子に化けたんだが、入れなかったら意味ないな。

 どっか適当に別の大人に化けて、また戻ってこようか?

 めんどくさい。

 一度、奴らの視線を外して、『潜伏』で目立たないよう姿を半透明にして、こっそり隙間を縫うようにして中に入った。

 解決屋の中も、人だらけだ。

 いかついおっちゃんに、可愛い顔して鋭い槍を背負う女性。

 彼らはハンターと呼ばれ、解決屋で働く人のことを言うそうだ。

 武器を背負って、魔物を狩りに行く者も見受けられた。

 ラヴファーストを探そうとするが、あちらこちらに受付があり、なかなか見つけられない。



[ハンターになりたい方はこちらです]

[ランクF~Bのハンターはこちらです]

[依頼される方はこちらです]

[価値のある情報が欲しい方、情報を売りたい方はこちらです]



 案内板を頼りに、それぞれの受付近くに行き、見渡すもいない。



[苦情の受付はこちらです]



 次はあそこに行ってみるか。

 ……いた!

 ラヴファーストを見失って、心配した。

 この心配をドッキリに変えて、ラヴファーストを驚かしてやろう。

 背後から『潜伏』でそろりと、とびかかろうとしたが。



「やっと来たか、ミミゴン様」



 ば、ばれてるー!?

 『潜伏』を解除し、姿を露わにする。

 受付のお姉さんが驚いてくれたので、満足だ。



「で、ラヴファースト。ハウトレットに会えるのか?」

「今から会うことになる」







 ハウトレットと、対面の時間がきたか。

 エルドラを迷宮から出すための手段を知るため、苦労してここまで来たんだ。

 何としてでも、手掛かりを得ないと。

 男の職員が、長のところへ導いてくれる。



「こちらに、ハウトレット様がおられます。粗相のないように」



 重厚な木で出来た扉を開けると、真ん中に横長の机と椅子があり、誰か座っている。

 あの人が長か?



「やあ! もう会えないかと思っていたぞ、ラヴファースト」

「久しぶりだな、ハウトレット・ナーレ。相変わらず、その身体か」



 椅子を回転させ、俺らに向いたのは……女の子だった。

 小学生くらいでツインテールの少女は、ニカッと笑っている。

 こいつが解決屋の長、ハウトレット?



「となりの女の子は?」

「王様だ。……ミミゴン様、元の体に戻れるか?」

「ここで戻るのか!?」

「ハウトレットなら信用できる」



 ラヴファーストが言うんだから、しょうがない。

 元の機械に戻った。



「そいつが王!? ああ、デルト達から話聞いたよ。妙な事を喋るロボットが村にいたって。それ、アンタのことでしょ?」

「ほんとに、この幼女がハウトレットなのか?」

「おうよ! アタシが解決屋ハウトレットの本部長、ハウトレット・ナーレよ。この身体は、呪いをかけられてなったのよ。アタシは、この呪いを解くために解決屋と称して世界中から情報を集めているの。一応、目的の情報以外も集まるから情報屋としても親しまれているわ」

「情報屋で解決屋……」



 呪いを解く情報に紛れる、様々な情報も扱うか。



「そう、あとは国や街の警備も担当しているから警備屋でもあるわね。支部局を置かせてもらう代わりに守ってあげているの」

「結構、幅広く活躍しているんだな」

「恩を返さない奴はダメ人間、とハウトレット家では教わっているしね。ところで、ラヴファースト。6年ぶりだけど、いきなりどうしたの?」

「今日は情報屋として話にきた」

「おっ! 良い情報かい? なら……」

「6年前、頼んだよな。【英雄の迷宮】の開け方を調べてくれと」

「…………」

「調べてないのか? 恩を返さない奴はダメ人間、なんだろう?」

「し、調べたけど。あ、あの時は強引に……」



 ラヴファーストが机を叩くと脳を突き刺す音を発して、静寂が訪れた。

 エルドラを解放するための方法を、情報屋でもあるハウトレットに聞きにきたのか。

 6年前、何があったんだよ。



「落ち着け、ラヴファースト。なあ、ハウトレット。6年前、何があったんだ?」

「『ハンター潰し』だよ……」

「え?」

「こいつは『ハンター潰し』と言われ、恐れられていたんだ」

(『ハンター潰し』とは、かつてハウトレットと関係を築くために、ラヴファーストに全ての依頼をこなさせ、付けられた愛称のことだ)



 エルドラが説明を始める。

 『ハンター潰し』が愛称なのかという疑問が生じた。

 嫌な話を聞かされそうだ。



(ラヴファーストがやってきた一日で、全ての依頼をこなし、ハウトレットに会おうとしたが会えず。次の日からもドンドン来る依頼を全て引き受け、達成する。が、他のハンターは依頼を受けることができない。つまりは、ラヴファーストに仕事を潰されたからだ。そして、この話題作りのため、やっと帰ってきたハウトレットに会うことができたのだ! どうだ、我がラヴファーストに授けた作戦は)

「お前のせいか!」



 恩を無理矢理に作ったようなものだ。

 ハウトレットも普段は顔を見せないらしい――多分、呪いのせいだな――から来客を断っていたんだろうが、残念だったな。

 最強の馬鹿者は容赦しない。



「情報は、どうしたんだ? 調べたんだろ?」

「う……あの日アタシに依頼して以来、会えなかったからどっかに仕舞いっぱなしだよ」

「そうか、探せ」



 と、容赦ないラヴファースト。



「えー! 情報処理の仕事があるのに!?」

「そんなものは、どうでもいい。こっちが優先だ」

「じ、時間が空いた時に探すから」

「どれくらいかかる?」

「……1年くらい?」

「今すぐ取り掛かれ」

「無理だって! この6年間でどれだけの情報が蓄積されたと思ってんの! それじゃあ、自分たちで探してよ! 隣の部屋に情報が集まっているから!」



 ラヴファーストのしつこさに、ハウトレットは泣きかけている。

 泣きそうな表情で、机に備え付けてある電話の受話器を取り、隣の部屋の鍵を取ってこいと職員に伝えている。



「これで……いいでしょ!」



 受話器は叩きつけられた。







 明かりが灯り、大量の本棚を照らす。

 近くの本を取って中身を見ると、一週間前からの情報が載っていた。

 文字は漢字、ひらがな、カタカナを用いて……つまり日本語だ。



 トリフィドの村を襲う『ティグリス』を討伐。

 デルト達が依頼を引き受けた。

 気になる事:依頼された際の調査では『ティグリス』は一体と報告されていたが、デルト達は二体いたという。

 『ティグリス』は『ビッグタイガー』の進化した魔物であるが、そこまで育つことはない。

 『ティグリス』という魔物の名も皆、忘れていたほどだ。

 そいつが一体いるだけでも問題だが、それが二体もいると思うと……。

 もう一つ、デルト達は『ティグリス』の猛攻撃により全滅したが、『ティグリス』の死体があるのだ。

 戦場には一体の骸だけが、放置されていた。

 その二体が争った末なのかと思うが、死体の状況から見ておかしいのだ。

 鋭い牙や『フレイム』、『サンダーボルト』といった魔法を使用するのだが、『ダークネス』による攻撃の跡。

 更に毒、おそらく『ポイズン』による体の内部を侵食した跡も見つかる。

 謎だらけだ。

 村のロボットが倒したとか言っているらしいが。

 信じることは難しいが。

 依頼無事達成!



 迷いの森の主『イエロードラゴン』について……

 チーム『アイラブユー』の男女2人が引き受けた。

 依頼無事達成!



 こういう感じに、依頼内容がまとめられている。



「それにしても、この中にある大量の本を一冊いっさつ調べろってか」

「いやいや、ちゃんと区切られているよ。1年前……からね。6年前となると奥の方の本棚にぐちゃぐちゃに混ざって入ってるから。じゃ、あとはよろしく」

「ハウトレット。お前も手伝うんだ」

「え!? ここに入れるだけでも、すごいんだよ! 恩は返しただろ?」

「ふん。時間がある時に、また来い」



 ラヴファーストの発言に顔が引きつっていたが、ゆっくり頷いて飛び出していった。

 手伝いに来てくれるか不安だが、生身の人間だしな。

 倒れたら困る。

 休みながらでも、来てもらいたいが。

 目的の本がありそうな雑に管理された本棚の群に到着し、本を読みまくる。

 ラヴファーストも、ページを高速でめくり、速読した後、本棚に戻すを繰り返す。

 俺は面白そうな見出しを見つけると、時々読んだりしている。

 漫画を整理する時、つい読んじゃって整理が進まないってことがある。

 これ全部、ハウトレットが書いているのだろうか。

 丁寧で読みやすい字で書いてある。

 慣れ親しんだ日本語の文字で。

 異世界の言語が日本語で、よかった。

 これ、面白いな。

 さて、息抜きに読む……か。



「ミミゴン様、いつまで読んでいる?」







 図書室の中で、永遠と読み続ける。

 エルドラの朝6時を伝える『念話』が聞こえて、朝と理解した。

 でっかい本棚の半分は読んだ。



 見つからない。

 それもそのはず。

 7年前のとか8年前のとか、混ざっているんだからな。

 ちゃんと管理しといてくれ、ハウトレット。

 ずっとこれでは、楽しくないので息抜きに依頼を受けてみようと思う。

 隣の部屋に入っていく。

 ハウトレットに厄介な依頼はないのかと尋ねると。



「そーだなー。国から依頼されているんだけど、1年前から、グレアリングで全身の血を抜かれ、死者が出る殺人事件が起こっているんだけどね。国の軍隊が犯人を捕まえようと躍起になって、捜索したんだけど、結局見つからず。更には、捜索隊の何名かが死体になって発見。犯人は、魔人である『吸血鬼』じゃないかと言われているんだけど、すでにこの世から消えた存在でね」

「本物の吸血鬼とは思えないと」

「そういうこと。模倣犯という線だね。けど、いてもいなくても実際に殺されている。誰かがやっているのなら止めないと」

「ああ、やってやるよ」

「ありがと。頼りにしてる。何かあったら言って」



 吸血鬼について、教えてもらったことを基に作戦を立てる。

 今回こそ、俺が解決し、好感度を上げよう!

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