変わっていく日常
〜海原 仁〜
「あなたはとても幸運です。ですから違う世界で異世界ライフを楽しんじゃったりしませんか?」
金髪美少女はそう言ってきた。
さらに気付けば周りの風景が変わっている。見渡すと真っ暗な空間、足の下には何色もの魔法陣らしきものが描かれている。
「ここはどこだ?」
尋ねたのはカブトだ。この状況で当然の質問だろう。
だが、金髪美少女から返ってきた返答は予想と違っているものだった。
「え?え?あれぇー?」
金髪美少女は焦ったように俺とカブトの方を交互に見る。
「どうして、二人いるんですか!?」
どうしてって言われても…そういやここに来る前に 「あなたはとても幸運です」って言ってたな
なら本来ここに来れるのは俺かカブトのどっちかだったってことか?先にその辺を確認しておくか。
「先にさっきの質問に答えてくれ、どうして俺達はこんなよく分からんところに移動させられた?」
周りの景色だけ変わって、実際は先ほどの現在地と変わってないなどの可能性もあるが、今重要なのはそこじゃない。
「は、はい。えーとどこから話せばいいのでしょうか…まず、ここは転送空間と言い、条件を満たすとここに転送されます。簡単に説明しますとここに転送される条件は私のことを助けてくれた人なんです。ですから今回は私に食べ物をくれた人なのですが…」
なるほど、食べ物をあげた人が転送される条件なら、
俺とカブトが転送されたのは間違いではない。
渡したのは俺だがお茶は俺の、おにぎりはカブトのだからだ。
「それなら原因がわかった。お茶は俺の、おにぎりはカブトのものを渡したからだ。」
「おにぎりがあなたのものではなく、そちらの方の物だったと…なるほど、それなら説明がつきますね。」
金髪美少女は納得したようだ。
「わかったところで自己紹介といこう。俺の名前は
海原 仁でこっちが…」
俺はカブトの方を指差すとカブトも自己紹介する。
「福島 兜だ。よろしく!」
「海原様に福島様ですね。わたしのことはノアと
お呼びください。」
金髪美少女はノアと言うらしい。今後はノアと読んでいこう。
「じゃあノア、質問がある。」
「なんでしょう?」
「スリーサイズを教えて欲しい。」
「そ、それはお答えできません。」
顔を赤らめながらノアが言う。
答えれないのか…胸もほどほどにあるし良いプロモーションしてるから気になったのになぁ…
俺が落ち込んでいると今度はカブトが質問する。
「じゃあ性感帯を教「それもお答えできません!」」
さらに顔を赤くしたノアが声を上げる。
カブトよ…貴様は勇敢な男だな…
嫌われる前にそろそろ本題に入るか…
「ノア、質問がある。」
「変な質問でなければ答えます…」
ソッポ向いたまま横目でこちらを見ながら言ってくる。
「どうして、お腹が空いているフリなんてしてたんだ?それが条件だからか?だとしたら、それを条件にした理由はなんだ?」
「わたしは2日前からなにも食べていませんでしたが…なぜそう思ったんですか?」
「ノアの着ている服が濡れていなかったからだ。」
あの雨の中服が濡れていないのはおかしい。アスファルトも濡れていなかったし、おそらく雨対策でノア周辺に小さなバリアかなにか張ってたんだろう。
だが、雨が降り始めたのは今日の朝だ。2日前ではない。
「ああ、それはですね。2日前の夜から特殊な空間魔法を使ってあの周辺を遮断してたからですね。」
空間魔法ときたか…ん?てことは2日前からノアはずっとあの場所に居たってことか?
「まて昨日の朝、俺達が通ったときノアの姿は見なかっんだけど…。」
カブトが言う。確かに昨日の登校は二人で学校に向かった。下校はカブトの自転車がトラブって俺一人だったが…。
「カブトの言うとおりだ。さらに俺は昨日の夜もあそこを通ったがノアの姿は見かけていない…。」
「それは、まだわたしのことを認識できる段階でなかったからですね。」
「段階?」
「そうです。要はわたしが空腹になるまで見つからないようになってるんですよ。」
つまり、食べ物もらうのに空腹になるまで我慢しなきゃいけなかったってことか?そこに至るまで2日かかったと…そこまでする必要あるか?
「なぁ、なんでそこまでして異世界に招待したいんだ?行きたそうなやつならいっぱいいそうな気がするんだが…」
「確かに。ノアの言い方だと異世界ライフを断ることもできるんだろ?なんか割に合わなくないか?」
カブトも同調してくる。
「た、確かにわたしにはその人が異世界に行きたがっているか否かわかります…。」
「じゃあ、どうしてこんな面倒くさいやり方をする必要があるんだ?」
「それはですね…優しい人、善良な人を見つけるためです。」
「どうゆうことだ?」
「まずですね、わたしにはあなた方のように異世界に行きたがっている人がわかります…というのもわたしのことを認識できる人が異世界に行きたがってる人なんです。」
「なるほど。」
つまり、俺とカブトは異世界に行きたがっているからノアを見つけられたが、見つけられない人も当然いるってことか…
確かに俺は異世界に行きたい超行きたい!チート能力で無双したいし、ハーレムだって築きたい!
「ですが、異世界に行きたい人には当然、犯罪を犯したいと思うも人もいます。ですから、空腹の人を助けてくれるような善良的な人を見つけるため行動に移ったわけです!」
「行動を起こした理由はわかった。じゃあカブトが言ったように、なんであんな勧誘の仕方をする?」
「死が伴うからです。」
ノアは迷うそぶりも考えるそぶりもせずに答えた。
「魔法や剣のある世界ですよ?今より死ぬ可能性は圧倒的に増えます。行く異世界もランダムで固定ではありません。それに転移ではなく転生になります。生まれたままの赤子に自分を守る術があると思いますか?それが勧誘の仕方の理由です。」
確かに厳しいな…異世界ライフも簡単じゃねぇってことか。でも、それでも俺は異世界に行ってみたい!
〜福島 兜〜
転生か…それは確かに死ぬ可能性は高くなるんだろうなぁ。転移ならまだ死ぬ可能性は転生よりは高いだろう。てか、強制イベントじゃないあたり本当に良心的だな…
チラッとジンを見てみると…
うわぁーメッチャ目輝いてんじゃん。行く気満々だよこの男…未練とか何もねえのかよ。
正直、今の話を聞いた上で行ってみたいとは思う。
俺だって非日常な日々を待ち望んでいたからな…
だが、実際にその瞬間になると未練がないと言えば嘘になる。家族に別れを言いたいしホルモンやコバにも言いたいことがある…
「ノア、もし行くって言ったらすぐにでも異世界に行っちまうのか?」
「そうですね…」
「どうした?未練でもあるのか?」
「ジンはないのか?家族やコバやホルモンに言いたいこととかあるだろ?」
「まぁ、無いと言えば嘘になるな…ノア、異世界からこっちに帰ってくることは無理なんだろ?」
「できないこともないですよ?」
「やっぱ無理…ん?できるのか??」
「はい、できないこともないです。説明しましょうか?」
「頼む」
「まず異世界に行った場合、この世界は停滞?停止?します」
「停止?どういうことだ?」
「そのままの意味です。ある時が来るまでこの世界の時間は止まったままです。」
「ある時っていうのは2人あります。1つは海原様と福島様が異世界転生を断った場合。この場合は私に会った記憶を消して元どおりの生活になります。もう1つは異世界転生後に同じ時間を過ごすことです。」
同じ時間…つまり16年以上過ごせってことか?頭で考えた疑問をそのままノアに問いかけてみる。
「そのとおりです。同じ年月を過ごすと同時進行でこの世界の時間も動き出します。その時初めて海原様と福島様の存在がいないことにこの世界の人々は気づくでしょう。」
俺の考えは会っていたらしい。なるほど、存在自体が消滅するわけじゃないんだな。
「ですが、それはあくまで最低限満たしてもらうことに過ぎません。」
「最低限?てことは16年以上生きた上で、さらに条件があるってことか?」
ジンが尋ねる。
「はい、といっても条件は色々あって一番手っ取り早いのが功績を残すことですね。功績といっても神様に認められるくらいでないとダメですね。」
「明確なものってわからない?」
「そうですね…以前帰ってきた人は世界平和にしたら認められたらしいですが…」
世界平和か…想像もつかないな。
「そいつって異世界転生した時何か特典とかあったのか?ステータスが高いとかチート能力持ちとか?」
ジンが今さらなことを聞く。確かにそれ最初に聞けよって話だな、完全に忘れてたわ。
「はい、異世界転生する際にはみなさん何らかの特典がございます。平等ではございませんが、特典がないということはありません。」
「なるほど、じゃあこの世界に帰ってこれそうだな」
なんで?と俺とノアは疑問を浮かべる。
「だって、そいつは1人で世界平和を成し遂げたんだろ?確かに1人だったらキツイかもしれないが…」
ジンが言いながら顔をニヤけさせる。俺もジンの言いたいことがわかって顔がニヤけていき、ジンに言う。
「俺達は2人いる」
「そうだ、だから異世界を平和にすることもできる!」
そうだなジンがいれば…
異世界を平和にすることも二人ならできる!
ここまで来るまで周りくどすぎな気がする…
てか、カブトパート短すぎますね…
次回から話ごとに視点が変わります。特典とかなんですかね?チート能力だったりしますかね?