7 魔法学校の生徒
・魔法学校に通っています。マリーといいます。
魔法の成績は中の下……というか下の下なんだけど、なりたくてなってるわけじゃなくて、授業中よく眠ってしまうんです。これでも私の両親は一応、みんなが知ってる大魔法使いです。私は寮生活だし、親もほとんど家にいないので、ふたりの教育を受けたことはあまりないですけど。
そんな話はどうでもよくて、こんど学校の恒例行事で、4年生の魔法対抗戦があります。3対3のチーム戦で、結果が成績につながるのでみんなわりと本気です。先生が成績の平均化を考えたのか、私のチームメイトはシェッドとルネになりました。ふたりとも成績優秀で強い子たちです。私が足を引っ張らないようにがんばりたいんですけど、不安です。ルネは大丈夫って言ってくれるけど……。
あとひとつ、心配があります。ルネは言ってしまうと大企業のお嬢様で、シェッドは元孤児のクールな男の子です。実は、ふたりはお世辞にも仲がいいとは言えないのです……。
きょう早速、練習でぎくしゃくした雰囲気になりました。私自身、魔法の成績が良くないので、あまり強く意見が言えないことも悲しいです。もっと勉強しておけばよかった。
・わたくし、ルネはここで負けるわけにはいきません。お父様の期待に応えるためにも、対抗戦で優勝しなければならないのです。そのためにはチームがひとつになることが大切でしょう?
なのに、今日の練習でつまずいてしまいましたわ。対戦相手の対策をするかどうかで、シェッドと意見が分かれましたの。わたくしは勝つために相手を分析することは当然だと思いましたけど、彼は意外にもそれを拒みましたわ。作戦を練るなんて本物の強さじゃない、などと言って。シェッドはきっといろんな生徒を見下しているのでしょう。対策なんてしたら自分のプライドが傷つくのです。そして、彼はきっとわたくしのことがキライなんでしょう。わたくしも彼がキライですから仕方ないですわね。
自分が彼をきらう理由は、わかっています。おそらくわたくしは、彼に嫉妬しているのです。両親もおらず、孤高に魔法の修行に励んでいるシェッドを見ていると、自分の環境が悲しく思えるのです。この実力が、両親や家によるものだとつきつけられているようなのです。わたくしは彼の強さに嫉妬し、弱点を見つけると得意げになって罵ってしまうのです。彼が他者をこばみ、独りよがりになっているところを見ると腹が立つのです。
もうひとつ、彼をきらう理由があります。優しくてかわいいマリーが、あきらかに彼を好いているということです。素直になれない彼を、支えてあげたいんですって。わたくしはとてもショックを受けています。
・シェッドだ。今日は疲れた。
俺たちは今日、対抗戦の初戦を無事に突破した。が、ルネが言っていた通り、相手は俺たちを徹底的に分析していた。相手チームの実力はこちらよりはるかに劣っていたはずなのに、俺たちは苦戦した。俺たちは初戦で敗退していてもおかしくはなかった。マリーの機転と、あらかじめルネが考えていたらしい作戦でなんとか勝てた。
俺は自分の間違いを認めざるを得なかった。マリーにまで「思ったことちゃんと言った方がいいよ」などと言われ、俺はルネに頭を下げた。こんなに人に謝るなんて、何年ぶりだ。頭を下げたのなんて初めてかもしれない。
俺はずっとひとりだった。剣闘士だったクソ親父はとっくに死んだし、母親も俺が小さいころに無理がたたって死んだ。誰にも頼れなくて、自分のちからだけが頼りだった。この世界、強くなきゃいずれ強いやつに殺される。恵まれた環境のルネに、嫉妬していなかったと言えば嘘になる。
こんな学校行事で負けてちゃ、どうしようもない。勝つためにはなんでもしなきゃいけない。勝ったやつが強者なんだ。俺はそれを忘れていた。今回、俺はマリーやルネに助けられた。それが事実だ。
自分の今までの生き方にしがみつくつもりはない。だけど、俺のなかで何かが崩れていくのを感じる。のたうちまわるほどの感触ではないが、気持ち悪かった。
@KosugiRan http://twitter.com/KosugiRan
どうしてもネタが出てこなかったので、頭の中でずっとウロウロしている人物たちを。