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6 早く大人になりたい子ども

・ くそ、なんだってんだよ

 わけわかんねえ大人に怒られた。オレはまだガキなんだって、掃除も洗濯も皿洗いもできない、ぜったいにひとりで生きていけない、本当のガキなんだって。

 なんだよ、オレは家でめっちゃ頑張ってんだぞ。母さんに言われたとおりに勉強だってしてるし、やりたくなかったけど運動部にだって入ってレギュラーにもなった。アホみたいに勉強してテストも良い点とってるし、先生だって「あなたは本当によくやってくれる」って言ってくれる。でも、あの野郎に言わせるとオレはだめなんだって。となりの家のさよ子に比べて、オレは圧倒的にガキなんだって。

 じゃあオレはどうすりゃいいんだよ。このままじゃオレはしんじまう。誰にも頼らずに生きてきたのに、誰の助けも借りずに生きてきたのに。「ありがとう」とか「ごめんなさい」とか、しぬほどかったるいことなのに。オレは人一倍がんばってるはずなのに。

 だれかオレを早く大人にしてくれ。誰にも頼らずに生きていけるように。

 

・ 好きな人ができました。

 あいては、近所のお兄さんです。お兄さんはわたしの倍くらい大人です。わたしにとても優しくしてくれます。

 と言っても本当は、好きっていう気持ちはよくわかりません。何回も声に出して「お兄さんのことがすき」って言ってみましたが、なんだかしっくりこないのです。まるで映画のせりふを言っているような気分になります。「好き」と言った瞬間に、なんだかもやもやした気持ちになります。わたしの思っていることと、この言葉はどこか違うようなのです。

 もしかしたら、私のきもちは嘘なのかもしれません。どこかに行ってしまうかもしれません。早くあの人の力になりたいのに、わたしにはできません。わたしは子どもすぎます。がんばろうと思っても、頭にへんなモヤがかかって、その先に行けないのです。なにかの映画で見たような、考えに制限がかけられているようなのです。

 はやく大人になりたいです。せめてこの気持ちの名前がわかるくらいには、強くなりたいです。


・ なんとも幸せそうなガキたちを見た。ガキって言ったって、ちょっと前まであたしもその歳だったんだけどね。ちがうのは家が裕福かどうか、ちゃんとした親がいるかどうか、学校に行ける根性があるかどうか。

 ガキたちははやく大人になりたい、なんて思ってるかもしれないけど、ゲームじゃあるまいし、何歳になったらぱぱっと変身してなれるもんじゃない。大人と子どもは地続きでつながってる。大人ってなにか、そりゃ10年後のアンタが大人さ。ゴミみたいな大人もいるし、大人みたいな子どもだっている。あたしはそれを知ってる。昔みたいに、成人するときにチョンマゲにすれば変わるかもしんないけどねぇ。

 あたしだって、自分がまともな大人なのかって自問したら、不安だよ。でも、大人っぽく振る舞わなきゃ、って思うときがいつか来るんだ。そばで小さなこいつを見てたらさ、そう思うんだよ。こいつのお手本にならないといけないってね。


@KosugiRan http://twitter.com/KosugiRan




(月並みな子どもたちですが、あまり子どもを書いたことがなく……)

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