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3 不老不死のひと

・不老不死になると、まず色々なことがてきとうになる。

 いくら腹が減っても死なないわけだから、食事をするのを忘れる。死にはしないので生活のリズムも崩れる。言ってしまえば路上で寝て一晩を明かしても大丈夫だし、5日くらい部屋でぼうっとしていてもなんとかなる。あれをしなきゃ、これもしなきゃーーでもまあいいか、死なないし、永遠に生きるし、何百年も生きるし、という超々ダメ人間になる。

 ただ、気持ち悪くなるので結局は生活を整えることになる。口の中が不快になるので朝は歯もみがくし、風邪をひきたくないので路上では寝ないし、病気で苦しみたくはないので健康にも気を使う。ブクブク太りたくはないのでそれなりに運動もする。

 だけど、やはり気持ちはのんびりにはなる。私もかれこれ80年は生きた。色々やりたいことはあるが、目立つと面倒なのであまり何もしない。最愛の嫁とも死に別れてしまったが、私はそれなりに幸せだった。いまは田舎で悠々自適の毎日を過ごしている。



・不老不死になると、まずやりたいことを考える。

 わたしはもともとせっかちな人間だった。承認欲求のかたまりのような人間だった。まず最初に大学で勉強をしまくり、大企業に入社してやりたいことをしたあと、業界の中でさんざん暴れまくった。わたしの名前は世界レベルで有名になり、わたしが考えた商品で人の生活様式が変わり、社会が変わり、歴史が変わった。最初の50年はそうした。その動機が承認欲求のなかでも、他者から認められたいという、かなり下位の欲求であることを知ったのは後々のことだ。

 名声がほしいわたしは、途中で挫折した。実はいったん名声を得ても、不老不死であることがばれてはいけない。それがばれたら、人々はわたしを見捨てる。「ああ自分たちとは違うんだ」と見切りをつけられるのである。つまりわたしは適当な整形をして老いた演技をし、さいごは雲隠れしないといけない。同じ名前でもういちど表舞台に立つことはできない。再びビッグになるには、また1から実績と人脈をつくっていかなければいけない。

 わたしは俗世から離れた。他人から承認されたいという欲求ではなく、自分で自分を承認したい欲求に駆られた。田舎に引っ込んでのんびり菜園をつくったり、絵を描いたり、自然の中を散歩したりした。以前のわたしの日常は充実こそしていたが、心から楽しんではいなかった。わたしは120年近く経って、ようやく人生の楽しみ方を知った。

 時々、ニュースを見ていると、また世界の表舞台に立ちたくなるときもある。ただ、わたしは知っている。不老不死の人間がこの世の全てを手に入れたとき、何をしようとするかはわかっている。

 


・クソみたいなやつらにあった。不死のくせに、のんびり暮らす方が楽しいとかいうふざけたやつらだ。

 俺は世界を終わらせる。正確に言うとこの地球を滅亡させる。

 理由なんてねえよ。罪悪感なんてこれっぽっちもねえ。俺は早く死にてえんだ。俺みたいな不老不死もかなりいるだろうから、俺が代わりに全部ぶっこわしてやる。地球が壊れれば全部終了だ。

 俺はどんどん出世して、ついに大統領にまでなった。出世の途中で2回ほど失敗したが、そのたびに雲隠れして、若くて優秀な政治家をぶっ殺してそいつにすり替わった。それを繰り返していま、ようやく俺は世界一の軍を手に入れた。

 このあいだ、俺を不老不死だと知ったやつがいた。そいつも不老不死だった。そいつは俺のやろうとしていることが気に入らないらしく、クソみたいに妨害しようとしてきた。始めはうっとうしいと思ったが、だんだんそいつとのやりとりが面白くなってきた。ようやく俺が本気を出せる相手ができた。あいつが勝つか俺が勝つか、決着がつくまでやってやる。俺が勝ったときは、もちろんこの世の終わりだ。


@KosugiRan http://twitter.com/KosugiRan

不老不死の題材はもうちょっと使うかも…

めも:魂のメトセラ

時は早く過ぎる。脳の老化がすごい


http://gigazine.net/news/20100819_immortality_would_be_worse_than_death/

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