表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私立セクマイ高校女装部  作者: 小野寺広目天
第一章 遠藤玉三郎
7/47

1-6

 その日、俺は帰り道にコンビニで雑誌の立ち読みをして、せっかくなので家まで山駅ほど歩いてみようかと思っていたところだ。

 そんなところに、ひとが派手に転ぶような音がした。

 場所は駅から少し離れた裏道。

 音がした方に目をやれば、金髪をライオンのたてがみのように逆立て、改造学生服を着た、いかにもヤンキーといったふうの男が見えた。

 さっきの音は、そいつがニット帽をかぶった男を殴って、持っている鞄を奪ったときのものだろう。

 正直、関わりたくないと思った。だが周囲にひとは居ない。

 自分がやらなきゃどうするんだ。俺は二人に向かって駆け出した。

「待てえ!」

 声が裏返ったのが自分でもわかる。怖かったが助けなきゃならない。

 ヤンキーがこちらを睨む。

 怖かったが、近づいてみれば、ヤンキーの身長は、決して高くない俺とあまり変わらなかった。

 俺は拳を握りしめてヤンキーの顔を狙う。

 ――気づくと、俺は腕をひねられて地面に引きずり倒されていた。

「……」

 決して痛くはない。だがヤンキーは何も言わなくて、すごく怖かった。

「あたしの鞄!」

 そこに女の子が叫んだ。あれ、この声は……。

「……ほら」

 ヤンキーが低く声を漏らして、さっき男から奪った鞄を、女の子に渡す。

「ありがとうございます! 助かったっす!」

 組み敷かれたまま目をやれば、それはよく知った顔。さっき学校で別れた千住さんごだった。そういえば、その鞄にも見覚えがある。

 あれ? ってことは……。

 殴られていたニット帽の男が起き上がり、一目散に逃げ出してく。

「何やってんだ、オメー?」

「何って……その、俺が聞きたいんだけど」

「じゃあ、答えてやるよ。あたしがひったくりにあって、それを取り返してくれたのがその兄ちゃんだよ」

「……」

 さんごがそう言うと、ヤンキーは俺を開放してくれた。そしてその……ひったくりの男が走っていった方に駆け出していった。

「あっ、あの! ありがとうございましたっす!」

 その背中に向けてさんごが大声で礼を言った。

「……じゃあ、俺……勘違い?」

「オメーがあの兄ちゃんに殴りかかったあたりから見てたけどさ……。外見でひとを判断するもんじゃねーよ? ほら、立てるか?」

 そう言って、さんごは俺に手を差し伸べる。

 俺はなんだか恥ずかしかったので、その手はとらない。自分で起き上がって、服の埃を払った。

「あー……俺、カッコ悪い……」

「そうだな。けど、あんな怖そうな兄ちゃんに向かっていったのは、勇気じゃね?」

 さんごのフォローは、俺にとって慰めにもならなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ←参加しています。面白いと思ったらクリックしていただけると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ