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「ごめんなさい!」
「は……?」
ユーキは、頭に手をやって、ウィッグを脱いだ。
一学期の間に少し伸びたショートヘアが、ばさりと広がる。
「お、オンナァ!?」
「はい、女です。その……コスプレです、これ」
「マジか!?」
「おまえこんなのにやられたの?」
呆然とするニット帽に、フードキャップの男が言った。
「んなバカなことあっか! 女だぞ」
「はい、女です。なので、その……喧嘩とかは、ごめんなさい。できません……」
祐希は怯えたふうに言った。
「あの……人違い、ですよね? 女の僕ひとり呼び出すために、わたし(圏点)の友だちを二人も誘拐したわけじゃ、ないですよね?」
「ヤベエんじゃないっすか? これ……」
「……知るかよ! おい、こいつらも女なら、ヤっちまおうぜ!」
ニット帽は言った。だが、他の連中は沈んだ表情でなにも言わない。
「おい、なんだよオメーら……。あと二人だぜ? ヤれんだろ?」
「ケンちゃん、そうじゃなくってさ。窓の外……」
「あ?」
ケンちゃんと呼ばれたニット帽が外を見る。
「あ!」
その窓には、赤いランプが回転しながら影を作っていた。
階段を登ってくる足音が聞こえる。
「おまわりさん、三階です!」
ラブミさんの声がした。何人もの足音が後から後から続く。
「あの、その……誘拐は悪いことだと思ったので、おまわりさん、呼びました。勝手なことしてすみません」
「ち、畜生!」
ニット帽はそう叫ぶと、四つん這いになって床を叩いた。




