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私立セクマイ高校女装部  作者: 小野寺広目天
第四章 姫武台祐希
42/47

4-4

 絆創膏の男とキャップの男の他に、スキンヘッドにヒゲの男、フード付きパーカーの男、キャップにフードの男、ニット帽にフードの男。計六人の男がそこにいた。その後ろには、乗ってきたのだろう、趣味の悪い飾りのついた真っ黒なワゴン車がある。

「なんだ、女じゃねーか」

「おいおい、さっきハダカだって言ってたのは、お楽しみの最中でしたかー?」

 男どもが下品そうに笑う。

「え?」

 言われて気づく。そうだ、俺はまだ女装しているんだ。

「女はすっこんでろ。さっきの男出せ!」

「あ、あの……」

 出鼻をくじかれた俺は、一瞬で意気消沈してしまう。

「何やってんだよ、明宏!」

 さんごが言った。

「アキヒロ? なんだ、てめえカマか?」

 それを受けてスキンヘッドの男が言った。

「ヤベーな、あいつそういう趣味の持ち主だったのか?」

「オカマもわりとヤバイぜ。男のイイところ全部知ってやがるからよ」

「ないわー。マジヤバイ」

「うるさい!」

 囃し立てられてようやく、俺は居直った。

「男だとか女だとか真ん中だろうと、関係あるか! 俺は俺だ!」

 反論されると思ってなかったのだろう。男たちの間に不穏な空気が走る。

「あのさー。坊や、俺たちはあの男に用があって来てるのよね?」

 鼻に絆創膏をつけたニット帽が、前に歩いてくる。

「カッコつけるのもいいけど、怪我するよ? アキヒ子ちゃん?」

「アキヒコって、それじゃやっぱり男の名前じゃねーか」

 さんごの隣に立つキャップの男が笑った。

「それより、そいつも人質にしちまえよ。一緒にオネンネしてたお友達なんだろ?」

「賛成。俺、オカマはじめてだけど楽しめるかな」

 ゾクッとした。

 こいつら、さんごと俺になにをさせるつもりなんだ?

 どうやらユーキが出てきても、それで穏便に終わるわけじゃなさそうだ……。

 どうする? どうすればいい?

「なあに、優しくしてやるからよ」

 ニット帽が絆創膏のついた顔を近づけてきた。

 どうしよう、怖い……怖い、怖い怖い怖い怖い。

「うわあああああっ!」

 次の瞬間、頭の方から鈍い音がした。

 気づけば、俺はその男の顔に頭突きを叩き込んでいた。

「ふがっ」

 絆創膏のついた鼻に直撃し、ニット帽がつんのめる。だが大して効いていない。

「てめえ!」

「明宏!」

 さんごの声が聞こえると同時に衝撃が走る。

 かぶっていたおさげのウィッグが飛んでいったのが見える。

 ガクガクしていた足は、衝撃を支えきれず、俺は塀に倒れ込んでしまった。

 外見が女だから手加減されたのだろう、拳ではなく、ビンタだった。

「連れてくぞ! ケータイ取り上げろ!」

「あの古臭いヤンキーはどうすんだ?」

「うるせえ! どうせ家は割れてんだ!」

 俺はそのまま、さんごといっしょにワゴンの後ろに放り込まれた。

 車が走りだすと、さっき『オカマもいいぞ』とか言った男に体中をいじられる。まさか、男の俺がこんな対象に見られる日がくるとは思ってなかった。

「こいつ、ケータイ持ってねーよ」

「マジでか? 今どきのJKがケータイ持ってねーわけねーだろ」

「家ん中じゃね? 鞄とか持ってねーしよ」

 正解。

 女の服はどうしてか男のとくらべてポケットが少ない。

 だから俺は最近、女装するときは財布や携帯は鞄に入れることにしていた。

 貴重品を持ったままこんな連中と喧嘩できるかよ。

 結果的に、それは幸いしたわけだが……同時にそれはユーキと連絡する手段がなくなったっていうことでもある。

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