3-9
「おまえ、女だったのか?」
ユーキに言われて俺は正気に返る。
客出しを終えて、教室には演劇部員だけが残っていた。裏方の先輩たちはさんごも含め、外の片付けを始めている。
「……違う」
「こんな立派な乳もってやがって、何が違うだ!」
ユーキが乱暴にキャミソールの中に手を突っ込んだ。
「あんっ」
思わず俺は甲高い悲鳴をあげる。
「くそっ、やっぱり本物の乳じゃねえか! この柔からさ、体温!」
「ユーキ、何怒ってるの!」
ラブミさんが言った。
「仮にクマちゃんが女だったとして、それを責める権利はユーキにあるの?」
そりゃそうだ。ラブミさんの時に怒った海老さんをボコボコにしたのはユーキである。
「まあ、まあ。とりあえず落ち着いて」
マメさんがなだめた。
「明宏くんはちゃんと男の子だよ。胸はあるけど、間違いない。それは僕が証明する」
「じゃあ、この乳はなんだってんですか」
マメさんは、俺を見て言った。
「自分で言ったほうがいいだろう?」
……ここまで来たら、隠し通せないだろう。
「女性化乳房症、って言います。理由はわかりませんけど、身体のホルモンのバランスが崩れて、こうなりました」
「そっか……。じゃあ、ただ胸がある男の子ってわけなんだね」
ラブミさんは自分の胸に手をあてて言った。
「はい」
「わたしたちとは違って」
「……はい。いえ、そう違いはないかもしれませんけど。女装部に入って救われたように思ってるわけですし……」
「まあねえ。違いをいちいち細かく追求してたら、性の世界はきりがないからねえ」
マメさんがつぶやいた。
「わかった。それじゃああとで詳しく聞くかもしれないけど、今はお片付け優先! とりあえずこのことはわたしたちだけの秘密ってことで、いいね?」
「はい」
「喋った人は厳罰ってことで」
「また俺とキスさせるのか……」
海老さんはぼやきながら、舞台袖のついたてを畳みはじめた。




