2-15
放課後すぐ、海老さんマメさんと合流して、俺たちはラブミさんの家に向かった。
ラブミさんは妹久間学園前から出ているバスで行く、双子玉川という街に住んでいる。
「なるほど。だが、勘違いとはいえ、俺は千住を許す気にはならんぞ」
俺はバスの中で、さんごに悪気がないということを海老さんに説明した。だが海老さんは納得しないようだ。
「海老さんは、知ってたんですか?」
「なにをだ」
「その……ラブミさんの秘密のことを」
俺は聞いた。だが海老さんはすっぱりと切り捨てる。
「知らん。千住の勘違いなんだろう。俺は信じん」
「僕はうすうすそんな気はしてたけどね」
マメさんが言った。ちなみにさすがにマメさんも今日は女装していない。
「具体的にはわからないけど、ヘテロセクシャルじゃあないと思ってたよ」
「マメ。くだらないことを言うんじゃない」
海老さんがそれをたしなめる。
やがてバスが双子玉川の停留所につく。
そこからラブミさんの家までは、だれも口を開かなかった。
「ここだ」
駅前から少し離れた住宅街の一軒家。その前で海老さんが言って、そしてチャイムを鳴らす。
「はい」
俺たちが固唾をのんで見守るなか、数秒待って、返事があった。
「……こんにちは。島海老です」
ぷつっと、インターホンが途切れる。
「ラブミの声だった!」
海老さんはチャイムをまた鳴らす。返事がないと知ると、何度も鳴らす。
「海老さん、落ち着いて」
マメさんがなだめるが、海老さんは聞かずに続ける。
「ラブミ、いるんだろう! 話がしたい!」
やがて海老さんはいらだちがつのってか、大声で家の中に呼びかけた。
演劇部で鍛えている海老さんの大声は尋常ではない。耳がきいんとなった。
「わかった、わかったから。近所迷惑だから……」
インターホンから再び声がきこえると、外門のオートロックが外れた。
「……いまわたししか居ないけど……」
ラブミさんは寝間着のままだった。髪の毛もボサボサで、ずっと寝床に居たようだ。
「……とりあえず入って」
リビングに通される。そこそこの広さがあるリビングにはカーペットが敷かれていて、ローテーブルも置いてある。直に座るようにしているのだろう。
「まあ、座れ」
まるで我が家のように言ったのは海老さん。マメさんやユーキも座り、俺も適当に腰を下ろす。
立ったままなのはラブミさんだけだった。
「座れよ。話したいことがあるんだ」
海老さんは繰り返した。
「話すことなんてないよ。みんなが知ってる通り」
「俺はうわさ話を信じない。おまえを信じてるんだ」
ぼんやりとしたふうに言うラブミさんに、海老さんは即座に答える。
「……どうしても、わたしの口から言わなきゃだめ?」
「だめだ」
「……言いたくない」
「俺も信じたくない。だがおまえが言うことなら信じられる」
「わかった」
ラブミさんは、目を伏せて、重い声で言った。
「わたしは、本当は男の子でした。今まで騙していてごめんなさい」




