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私立セクマイ高校女装部  作者: 小野寺広目天
第二章 茅大愛
27/47

2-14

 月曜日。教室に行くと、さんごが今にも死にそうな顔で机に頭を投げ出していた。

「茅大先輩、夏風邪で休みだって……」

 俺を見つけたさんごは、力なくそう言った。

「担任にも聞いたんだけどよ。……あーあたしってばなんてことしちまったんだろ!」

「おちつけよ……」

「おはよう、さんご」

 そのさんごに、別の女子が話しかけてくる。

「ねえ、ツイッターに書いてたのってほんと? あの写真、演劇部の三年生だよね。女装して通学してるけど実は男だって話」

「勘違いだったってあとで書いたじゃねーか!」

「なーんだ。そうなの? わたしリツイートしか見なかったから」

「わかってくれりゃいいんだけどよ……」

 そうするとその女子は、さんごに興味をなくしたかのように立ち去る。

「今みたいに聴いてきてくれりゃいいんだけどさ。そうじゃねーと訂正すら出来ねーんだよな……」

「千住、いる?」

「またかよ! あれは勘違いだっつってんだろ!」

 そう言って教室に入ってきた人影に向かって、さんごは反射的に怒鳴り返す。

「先生に向かってそういう口のきき方はよくないなあ」

 入ってきたのは担任だった。まだホームルームまでにはかなり時間がある。

「げっ……センセ……」

「ホームルーム前にちょっと話が聞きたいんで、職員室に来てくれる?」

「はい……」

 さんごは立ち上がって、そして俺の方を見て、つぶやいた。

「あー……。たはは、もう、あたし……ダメだな……」

「おまえは悪くないよ。勘違いなんだから」

 俺は励ましの言葉をかけてやったが、さんごは肩を落とし、とぼとぼと担任についていった。


 さんごはそのまま教室に戻ってこなかった。

 体調不良による早退だと担任は言った。

 だが……。

「明宏、見てよこれ」

 休み時間になって、祐希が携帯を見せてくれた。


689 :名無しさん@お腹いっぱい。ID:hawSI2M3er

 男の娘欠席、さんごちゃん早退したもよう。


 そこにはそんなことが書いてあった。

「これって?」

「匿名でだれでも書き込めるインターネット掲示板。どうも、さんごとラブミさんが監視対象になってるみたい」

「なんでそんなことになってるんだ?」

「元男性の女子生徒ってだけでスキャンダル対象だし、さんごはその秘密をばらした悪い奴、って扱いみたい」

「うちの学校に芸能リポーター気取りがいるのかよ……悪趣味な連中がいるもんだな」

「さんごはしかたがないよ。本名でツイッターやってればこういうこともあるし。問題は、ラブミさんだね……」

「だな……」

 ラブミさんの秘密は明らかになってしまった。

 しかもそれがインターネットで公になってしまうなんて、とんでもないことだ。

「まいったなあ……」

 俺がつぶやいた時、教室のドアが乱暴に開いた。

「千住さんごはどこだ!」

「海老さん!?」

 飛び込んできたのは、三年生の島海老先輩。つまり、演劇部の海老さんだ。

「クマ! おまえの友達はとんでもないデマを流してくれたな!」

「待ってください、とりあえずここでは……」

「ココもナッツもあるか!」

「海老さん、落ち着いてください。さんごは今日は早退しました」

「だったら家を教えろ! 俺が話をつけてやる!」

 その海老さんの迫力たるや、以前にみた借金取り役も超える本気の怒りだった。

「海老さん、ラブミさんのお家は知ってますか?」

 それをなだめるようにユーキが聞いた。

「知ってるがどうした」

「だったら、ラブミさんのケアが先です。そうは思いませんか?」

「……………………」

 海老さんは、顔色を真っ赤にしながら、考えこむように黙り込んだ。

「そうだな。放課後に行く、お前らも来い」

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