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私立セクマイ高校女装部  作者: 小野寺広目天
第二章 茅大愛
21/47

2-8

 織田急(おだきゅう)線で妹久間学園前(せくまがくえんまえ)から二駅下り、駒江(こまえ)駅で降りると、そこには三階建てのスーパーマーケットが建っていた。

 その三階には『ファッションセンターほむら』という服屋があった。

 おれの家はこの隣駅。歩いても十分以内だ。

 自転車でよく近くを通るし、ここの三階にそういうお店があるのは知っていた。けど、自分で足を運んだことはない。

「マネキン買いって、聞いたことある?」

「ありませんけど、なんとなく意味はわかります」

 マメさんは、店内に立っているマネキンを眺めながら言っていたので、俺は察することができた。

「マネキンが着てる一揃えを、そのまま買って着ちゃうこと……ですよね、たぶん」

「正解。お店のコーディネーターさんがコーデしたものだから、これを合わせていればだいたい間違いがないの」

 そのマネキンたちの前には春物処分品と書いてある。

 ひとつはデニムのワンピースに薄手のパーカーをあわせたようなもの。その隣はTシャツにエプロンと一体化したようなスカート。さらに隣はYシャツとデニムといった、若干メンズっぽいコーデ。

「わたし、これなら平気です」

 俺はそのメンズっぽい服をさして言った。

 メンズっぽいなら、着るのに抵抗がない。いざ友達に俺だとバレても傷は浅いだろう。

「んー。却下」

 しかしマメさんはそれをすぐ取り下げてしまう。

「君は今、これなら誰かにバレても、女装しているとバレても傷は浅いって思ったんじゃないかい?」

「なんでわかったんですか!?」

「女装初心者の考えそうなことだからね。でもね、逆なんだ。いつもの自分と出来るだけ違う格好をした方がいい。過剰なまでに女を装うほうが、男性だということがバレにくくなるんだ」

「でも、マメさんはパンツルックじゃないですか」

「わたしは慣れてるからいいの」

 言ってマメさんはくるっと回った。

 しかし、言われてみれば確かにそうだ。

 バレてもダメージが少ない方に逃げたらバレやすくなる。それは本末転倒だ。

 だったらバレにくくなるよう、盛ったほうがいいに違いない。

 もし俺の男友達とすれ違った時、相手が普段の服にかつらと化粧だけしてきたらすぐわかるけど、服も全部違うものだったら、俺は気づかずに素通りしてしまうかもしれない。

「すると初心者用はどれですか?」

「こんなのだろ」

 ユーキが少し離れたところにあるマネキンをさした。

「そ、それは……」

 俺はそれを見て絶句する。

 全身ピンクのワンピース。リボンやフリルで飾られ、スカート部分も重力を無視して傘みたいに広がっている。

「ゴスロリなんて無理ですよ」

「ゴスじゃねえよ、甘ロリってんだよこういうのは」

 ユーキが反論してきた。俺には違いがわからないけど。

「ユーキはどうにも極端なジェンダー観の持ち主みたいだね」

「えっ……そ、そっすか?」

「徹底的に女らしく、あるいは徹底的に男らしく。それじゃ結局、男は男らしく、女は女らしくっていうのとあんまり変わりないよ」

「……痛いこと言いますね……」

 俺にはわからなかったが、ユーキにはどうも刺さる言葉だったらしい。

「とりあえずこのマネキン、一揃い試着してみようか」

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