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私立セクマイ高校女装部  作者: 小野寺広目天
第二章 茅大愛
20/47

2-7

 数分後、ユーキは立派な好青年に仕上がった。

 短いウィッグ、フレームの太い眼鏡にチェックのワイシャツ。ちょっとオタクっぽい外見だが、シャツが赤系のちょっと派手なものなので、オタクっぽい感じは薄まっている。ズボンは太めのチノパン。あまり細いとお尻が目立っちゃうからね。

 その後、俺も部室で着替える。一応、男女交代制だ。順番はレディーファーストらしいんだけど、この部でその単語を聞くとは思わなかった。

 今日は試しに、マメさんに言われながら自分でメイクをしてみた。

 重ねて塗らなきゃいけないのが、お絵かきとはちょっと違う。化粧品の選び方次第で少し結果が変わるというのはなんだか面白い。

「興味があったら化粧品も揃えようか。特に君は日焼け跡が目立つから、ファンデーションの色も考えないとならないしね」

 俺の頭のなかで、一〇〇〇円札に羽が生えて飛んで行く姿が見えた。

 化粧品っていくら位するんだろう……。

「やっぱ、おまえかわいいな……」

 ユーキが出来上がった俺を見て言った。

「それにその胸、本物みたいだな……」

 キャミソールから覗く胸の谷間にユーキの視線が注がれる。

「あれ? 継ぎ目どこにあるんだ?」

 つけ胸の継ぎ目は本来なら首のちょっと下と、両肩あたりに出来る。肩はカーディガンで隠せるが、首の下はマメさんのようにスカーフを巻かないとならない。

 だが俺は、スカーフのようなものは巻いてなかった。

「あんまり胸をジロジロみるなよ……恥ずかしい」

 そう言って俺はごまかす。

「アキちゃん。言葉、言葉」

 それに重ねるようにマメさんが言った。

 うまく変えられた話題に俺も乗っかる。

「そ、そうね。わかったわ。女の胸をジロジロ見ないでほしいわ」

 言った瞬間、マメさんとユーキが同時にぷっと吹き出した。

「わ、笑うならやりませんよ!」

「アキ、そんなまんがみたいな女言葉を使う人、今どきいないよ?」

 マメさんが言った。

「そ、そうなんですか……」

「きみはもっと周りの女性を観察したほうがいいだろうね」

「だったら、俺が女役やればよかったなあ」

 ユーキは言う。

「おまえ、男役なんじゃないのか?」

「細かいことは言わない言わない。男になったり女になったり、自由なのが女装部なんだから」

「じゃあ俺が男役でもいいですよね」

「君は今日の主役だから、だめ」

「なんですか、その理由……」

 俺の提案は、よくわからない理由で却下されてしまった。

 考えてみれば、わからないこともない。

 この中で、異性装の経験が一番浅いのは俺だ。マメさんやユーキに比べて、俺の女装歴はまだ一週間もない。

 それなら異性装しなきゃ、経験がつめないということなのだろう。

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