表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私立セクマイ高校女装部  作者: 小野寺広目天
第一章 遠藤玉三郎
2/47

1-1

 私立妹久間(せくま)学園高校。

 ここが今日から俺が通う学校だ。

 家から三駅と、ちょっと遠い。

 だが、俺の秘密を誰も知らない学校なのだ。

 おっぱいのことでからかわれるのは、俺にとってひどく辛いことだった。

 これからは、そんなこと気にしないで生きることができる。

 知り合いなんか誰もいないはずだ。よし、頑張るぞ!

「あれ、明宏(あきひろ)じゃん」

「えっ」

 誰も俺のことを知らないはずなのに、聞いたことのある声が俺を呼んできた。

 振り返るとそこに、制服の生徒に混じって見知った女の子がいる。

「明宏、ここ受かってたんだ。なんだよ、お隣さんなのにあたしに教えてくんなかったなんて、水くさいなあ」

 千住(せんじゅ)さんご。中学校は別だったが、家が近くて小学校が一緒ということもあり、そこそこ親しい異性だった。

 残念ながら、俺のおっぱいのことを知っている。よく揉まれたものである。

「さんご!? おまえもここの学校だったのか?」

「あれ、言ってなかったっけ? あたし中学から妹久間だけど」

 妹久間学園は幼稚園から大学院まで、成績さえ悪くなければ面倒をみてくれる大型私立。逆に高校から入ってくる俺のほうがイレギュラーだ。

「で、これについては秘密なの?」

「ひゃうんっ」

 俺は情けない声を漏らす。そりゃそうだ。いきなり胸を揉みしだかれてびっくりしない奴はいない。男だってそうだ。

 まあ……俺には事情があるんだけど。

「触んな! ……この話はあとでだ。誰にも言うなよ?」

「オーケー。これはシークレットってことな?」

「ああ。そのために地元の公立じゃなくて、難関私立受けたんだから」

「わかった、わかった。誰にも言わないから、さんごさんを信じなさい。そそ、記念に写真撮っていい?」

 言うが早いか、さんごは携帯をとって俺の横にならんだ。そしてぐっと俺の身体を引き寄せて……。

「って、胸触んな!」

「いいじゃん、あんた男なんだし。はいイチ足すイチはー」

「死語だろそれ」

 あきれつつも、俺は無理やり堅い笑顔を作ってやった。

「満足したら、教室入るぞ?」

「あー、ちょっと待って。これも撮るから」

 さんごはその携帯を、今度は正門前の『入学式』と書かれた看板に向ける。

 まったく、現代のひずみが生み出したような奴だ。暇さえあれば写真ばっかり撮っている。

「ところで明宏はクラスどこなの?」

「俺? C組だけど」

 こういう時、クラス決めは校内に張り出していることも多いけど、この学校では入学案内に所属クラスが添付されていた。

 もしかすると、個人情報保護とかそういうのかもしれない。

「げ、マジ? あたしもC組」

「なんだよ、『げ』って」

「あたしクチ軽いからなー。同じクラスだと誰かに言っちゃうかもしんないよ」

「げ」

「パフェかなんか接着剤代わりにしとかないとやばいかもしんない」

「……考えとく」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ←参加しています。面白いと思ったらクリックしていただけると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ