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私立セクマイ高校女装部  作者: 小野寺広目天
第二章 茅大愛
19/47

2-6

「それじゃあ、女装部の活動を始めます。おはようございます」

 日曜日。俺は休日練習と称して演劇部部室に呼び出された。

 今日の活動は、演劇部ではなく女装部だ。

 マメさんと俺が部室の鍵をあけたあと、しばらく待ってユーキが来る。三人揃ったところでマメさんが挨拶をした。

 マメさんはすでに女装姿。ユーキも例のヤンキー姿だ。

 演劇部にも休日練習はあるのだが、それは夏になってから、あるいは秋になってからなど、公演の直前になる。

「休日練習って、なにをやるんですか」

 俺は恐る恐る聞いた。

 『練習』というくらいだ。まず自分でメイクするとかそういうことはするだろう。でもそれは普段の活動でもやっている。

 いきなり女装外出を強制してきたマメさんのことである。何をさせられるかわからない。

「そうだね。今日は都会へ出ようか」

「いっ……いきなりですね」

「女装部も服のストックがそう多いわけじゃないからね。特に、自前の改造学生服で男装してるユーキはともかく、君の服がない」

 確かにそうだった。

 俺が借りていつも着ている服は一着限り。しかもサイズが小さい。

 マメさんは、筋肉質な俺に比べてやや細身だ。だから俺にはマメさんから借りた服は少しサイズが小さいんだ。

「でも、俺そんなにお小遣いないですよ。女物の服って高いんじゃないですか?」

 俺は言った。

 マメさんから借りたのは服だけではない。女性向けファッション雑誌なども借りて読んでいた。

 そこに記載されている服の高いこと高いこと。

「女装初心者の『あるある』さ。ファッション雑誌のものは高いものしか掲載してないからね。僕が着ているもの、ウィッグやつけ胸を除いて、いくらくらいだと思う?」

 マメさんがいま着ているのは、キャミソールにカーディガンまでは色違いだが、この間と同じ。下半身はパンツルックだ。尻周りに詰め物をしてるそうで、女性的なラインを作っている。

「三万円くらい……ですか?」

 ファッション雑誌計算だとそんな感じ。

「二万円くらいっすかね」

 ユーキの答えはだいぶ俺とは違う。

「パンツが七〇〇〇、キャミが五〇〇〇、カーデが六〇〇〇ってとこだと思うす」

「ふたりとも残念。実は全部で五〇〇〇円切ってる」

 マメさんは言った。

 ごせんえん? え、そんなに安いのか?

「ユーキが見抜けなかったのは意外だね」

「たはは。俺、女物の服は親に買ってもらってるんで」

 ユーキは頭をかきながらいった。

「五〇〇〇円って、どこで売ってるんです? 男物でもそんなに安くは手に入らないんじゃないですか?」

 俺もユーキと同じで、自分の服は親に買ってもらってる。かといって店で値札を見ていないわけじゃない。

 だから男物ならこれくらい、女物はファッション雑誌基準でこれくらい……というのはなんとなく知ってるつもりだったのだが。

「安い店のセール品を買うのさ。知っての通り、異性の服は親に言って買ってもらえる服じゃないからね。少ないお小遣いでやりくりしないとならない」

「まあ、あれこれ言うより見てもらったほうがいいだろ? 君たちも着替えて、行くよ」

「俺は着替えなくていいっすよ」

 そう言ったユーキの格好は、いかにもといったヤンキー風だ。改造学生服に、逆立てた金髪、薄い眉毛。もっとも眉毛は天然で薄いらしいから普段は書いてるらしいけど。

「悪いけど、君のその格好はちょっと時代錯誤気味なんだよね」

「え、そうなんすか?」

「今どきいないタイプの非行少年だよ。ちょっと一緒に歩きたくないなあ」

「それって性差別じゃないんっすか!」

「違うね。ファッション差別だよ」

「差別じゃないっすか、結局」

「うん、だから僕のセンスでどうにかしよう。遠出する日だけでかまわないからさ」

「かっこいいと思ってたんすけどね……。この学生服も高かったし」

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