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私立セクマイ高校女装部  作者: 小野寺広目天
第二章 茅大愛
14/47

2-1

「オメー、なんか複雑な顔してねえ?」

「え?」

 教室で、さんごにいきなりそう言われた。

「なんかよー。嬉しそうなんだか悲しそうなんだかわかんねーけどよ。あたしで良かったら相談にのるぜ?」

「うーん……なんていうのかな。新しい出会いとそれにまつわる期待と不安っての?」

「ツイッターでもやってみたら? 五セントいただきます」

「なんだそりゃ」

「なに? スヌーピーの話?」

 さんごと俺が話してるところに姫武台さんが割り込んでくるパターンは、もはや毎日の恒例になってきた。

「おう、情弱の明宏は、ルーシーの精神分析スタンドも知らないんだってさ」

 スタンドってのはあれか、よくわからないけど、オラオラとか無駄無駄とかいうやつかな?

「さんごちゃんあれ好きなんだ。僕もだよ。同世代の子が五セントでカウンセリングしてくれるって、シュールだけどなんだか頼れるよね」

「なに、姫武台さん。悩み多い系?」

 さんごが聞き返す。

 俺はなんとなくその悩み相談の理由がわかっていた。口には出さないけど。

 いま目の前にいる姫武台さんは、ヤンキーのユーキと同一人物だ。

 ユーキは自分が女であることに違和感があると言っていた。そこに至るには、きっと何か、理由があるに違いない。

 俺だってそうだ。この胸の中を打ち明けられる相手がいたらどんなに救われるか。

「そりゃ、僕だって悩みは多いよ。思春期だもの。ところで熊美くん」

 姫武台さんは俺に用があるようだった。

「演劇部の練習前に部会があるから、今日の放課後は視聴覚室集合ね」

「え、なに? 明宏も演劇部入ったの? あたし聞いてねーよ」

 さんごが言った。

「言ってないからな」

「ほー。明宏が演劇部ねえ。ロミオとジュリエットとかやるの?」

 と、言われても……俺が入ってるのは女装部こと裏演劇部なわけだが。

「演目とかは僕らはまだ知らないけど、夏休み前と秋の文化祭、それに年度末に一本ずつやるらしいよ」

「へー」

 別にさして興味はないふうにさんごはうなずいた。

「千住さんも演劇部に入れば? 楽しいよ」

 と、姫武台さんはとんでもないことを言い出した。

 姫武台さんはともかく、俺が入ってるのは裏演劇部。

 さんごが表の演劇部に入ったら、そっちに俺が在籍してないのがバレちゃうじゃないか。

「あー、あたしパス。女装サークルなら考えてもいいけどよ」

 うん。それ裏の演劇部です。

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