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「オメー、なんか複雑な顔してねえ?」
「え?」
教室で、さんごにいきなりそう言われた。
「なんかよー。嬉しそうなんだか悲しそうなんだかわかんねーけどよ。あたしで良かったら相談にのるぜ?」
「うーん……なんていうのかな。新しい出会いとそれにまつわる期待と不安っての?」
「ツイッターでもやってみたら? 五セントいただきます」
「なんだそりゃ」
「なに? スヌーピーの話?」
さんごと俺が話してるところに姫武台さんが割り込んでくるパターンは、もはや毎日の恒例になってきた。
「おう、情弱の明宏は、ルーシーの精神分析スタンドも知らないんだってさ」
スタンドってのはあれか、よくわからないけど、オラオラとか無駄無駄とかいうやつかな?
「さんごちゃんあれ好きなんだ。僕もだよ。同世代の子が五セントでカウンセリングしてくれるって、シュールだけどなんだか頼れるよね」
「なに、姫武台さん。悩み多い系?」
さんごが聞き返す。
俺はなんとなくその悩み相談の理由がわかっていた。口には出さないけど。
いま目の前にいる姫武台さんは、ヤンキーのユーキと同一人物だ。
ユーキは自分が女であることに違和感があると言っていた。そこに至るには、きっと何か、理由があるに違いない。
俺だってそうだ。この胸の中を打ち明けられる相手がいたらどんなに救われるか。
「そりゃ、僕だって悩みは多いよ。思春期だもの。ところで熊美くん」
姫武台さんは俺に用があるようだった。
「演劇部の練習前に部会があるから、今日の放課後は視聴覚室集合ね」
「え、なに? 明宏も演劇部入ったの? あたし聞いてねーよ」
さんごが言った。
「言ってないからな」
「ほー。明宏が演劇部ねえ。ロミオとジュリエットとかやるの?」
と、言われても……俺が入ってるのは女装部こと裏演劇部なわけだが。
「演目とかは僕らはまだ知らないけど、夏休み前と秋の文化祭、それに年度末に一本ずつやるらしいよ」
「へー」
別にさして興味はないふうにさんごはうなずいた。
「千住さんも演劇部に入れば? 楽しいよ」
と、姫武台さんはとんでもないことを言い出した。
姫武台さんはともかく、俺が入ってるのは裏演劇部。
さんごが表の演劇部に入ったら、そっちに俺が在籍してないのがバレちゃうじゃないか。
「あー、あたしパス。女装サークルなら考えてもいいけどよ」
うん。それ裏の演劇部です。




