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私立セクマイ高校女装部  作者: 小野寺広目天
第一章 遠藤玉三郎
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1-10

 数分後、俺のおっぱいには立派な谷間が出来上がっていた。

 今まで医者以外には見せたことがないこのおっぱいも、遠藤先輩にブラを付けさせてもらうときは、なぜか恥ずかしくなかった。

「男でも少しお肉があれば谷間は作れるからね。もともと胸がある君の場合、結構サイズ大きくなっただろう? Eカップ用ブラジャーだよ、それは」

「い、いーかっぷ……」

 えー、びー、しー、でぃー、いーかっぷ。

 今までCくらいだと思ってたけど、そんなにでっかかったのか、俺のおっぱいは……。

「さ、今度はウィッグだ」

 ウィッグというのはかつらのことらしい。そんなおしゃれな呼び方があったんだね。

「ロングヘアとショートヘア、どっちが好きかな? 茶髪と黒髪とって選択肢もあるけど」

「……よく、わかんないです」

「じゃあ僕が選ぼうか。……そうだね、これなんかどうだろう」

 遠藤先輩が選んだのは、暗めの茶髪。それをヘアネットの上に乗せていく。ヘアピンで何箇所か固定したあと、ヘアゴムでサイドを二箇所まとめた。

「これで完成。さあ、鏡の前に立ってごらん」

 遠藤先輩に促されて、俺は姿見の前に立った。

 そこには、俺だとわかっていてもかわいい女の子が立っていた。

 胸を強調したキャミソールに、明るい色のカーディガン。赤いスカートに濃い青のカラータイツ。ヘアスタイルは両サイドを縛ったミディアムロング。

「……俺、かわいいです」

 そうつぶやいた口元も、さっきメイクだけしたときとはだいぶ印象が違った。薄紅色に染まった唇は、それだけで触れたくなるような雰囲気を持っていた。

「うん、とてもかわいいよ。自信をもっていい。どうだい、今日だけは、胸があってよかったと思わないかい?」

「なんだか、すごく解放されたように感じます……」

 遠藤先輩の言うとおりだ。

 俺は今までおっぱいを押しつぶしていた。でも今はおっぱいを放り出してる。

 男の格好では決して出来ない。女装しているからこそ自然な感じにおっぱいが出せるんだ。

「よし、それじゃあ僕も着替えようかな」

 そう言って、遠藤先輩は制服を脱ぎ始めた。

 ブレザーを脱ぎ、ワイシャツのボタンを外す。

「えっ」

 そこで俺は思わず声を漏らした。

 遠藤先輩の胸にも、昨日はなかったはずの、女性のようなおっぱいがあったからだ。

「遠藤先輩、その胸……」

「ああ、これかい?」

 言って、遠藤先輩は上着をすべて脱ぐ。

 そうして分かった。先輩は胸全体を覆うような偽おっぱいを身につけていたのだ。

「普通のパッドとかでもいいんだけど、僕は痩せ型で谷間が作れなかったからね。色々探して、こういうものをみつけたんだ」

 そうして遠藤先輩は俺と色違いのキャミソールに、カーディガンを着る。首の下に繋ぎ目は残るけど、それはスカーフを巻いて隠した。

「どうだい。僕にも胸があるみたいだろう?」

「……すごくリアルですね」

「そうだろう?」

 遠藤先輩は鏡で自分の姿を再確認して、言った。

「よし、それじゃあ行こうか」

「行く? 行くってどこにですか」

「町をちょっと一回りしにいくのさ」

「ええっ!? 外に出るんですか?」

「ここにいるだけじゃあつまらないだろう。せっかくのかわいい君を誰かに見てもらわないと」

 遠藤先輩は当然のように言った。

「そんなの、恥ずかしいですよ。もし知り合いに会ったら……」

「誰も君が君であることはわからないよ。そういうふうにメイクしたからね」

「でも……」

 『女装してみること』に『外を歩くこと』まで含まれているなんて聞いていない。

 言われてないのだから、もしかして外を歩くのは女装した時は当然だってことなのかもしれないけど……。

「もしあまり気に入っていないとしても、せっかくの体験なんだ。二回不本意なことやるよりは、一度で全部体験しておくといいよ。なあに、取って食いやしないさ」

「やらない、って選択肢はないんですね」

「あるよ。でも、それで後悔しないかい?」

「……」

 俺は悩んだ。

 正直、女装するのは気持ちいいと思った。おっぱいをナベシャツから解放している今、心もなにかから解放されてるようだった。

 ……やめたくない。後悔のないようにしたい。

「……わかりました。外に行きます……」

 俺は蚊の鳴くような声で言った。

「いいね、そう言ってくれると僕も嬉しい。けどね」

 すると遠藤先輩は、小さく笑って、細い目を開く。

「お願いします、を忘れてるよ」

 俺はその顔を見て、本能的に理解した。ああ、この先輩……ドSなんだな……。

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