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1.プロローグ

読んでってください

 私が住んでいる国デアルーン共和国は、一昔前は平和でみどりが豊かな国でした。 

 燦々と輝く陽の光を浴びながら、私を含めた平民の方々がえっさ、ほいさと活気に溢れながら畑を耕し、新鮮な野菜や美味しいお米を作っていたのです。採れたてのウェイスという紫色の野菜を食べた瞬間、口内に広がったあのシャキシャキとした食感は今でも覚えています。


 農作業以外にも、この国にはたくさん魅力があります。季節ごとに開催される祭りだったり、大きな会場で行われる騎士同士の戦闘だったり、国の四割を占める広大な海だったりなどと、とにかく私の国はみんな活気にあふれ、とても賑わっていました。笑顔が絶えない素敵な国だったのです。


 しかし、平和というものは恒久的には続きません。五年前を境に、長く続いていた国の安寧は少しずつ凋落を迎えていったのです。その最大の要因が、この世界を収める魔王と勇者の争いでした。

 この世界は全部で二十カ国存在し、その内の十七ヶ国を勇者様が修めています。残忍で冷酷な魔王の手から私達を救ってくださっているのです。

 しかし、悪逆無道な魔王がこのまま黙って勇者が総べている国々を指をくわえてみているはずがありません。劣勢を強いられていた魔王はとうとう憤激し、勇者様に宣戦布告をしてきたのです。


 戦争が始まってから、私達女性組は農作業をする暇なく働き続けました。過度な節約を強制され、ご飯も満足に食べられない状態で勇者様の軍隊が使う武器を作ります。過労で次第に体は痩せていきますが、疲弊した体に鞭打って国の役に立つべく己を動かしました。


 男性組の皆さんは勇者様のサポートに回ります。お友達や、その父親さんも兵士としての訓練を経てから立派な兵士として魔王城と駆り出されます。


 戦争が始まってから早くも五年が経過し、そろそろ肉体的にも精神的にも限界が訪れたというときに、魔王の下っ端からあるメッセージが世界全体に届きました。

 とうとう敗北を認め、再度世界に平和が訪れるのかと安堵していた瞬間、下っ端はとんでもないことを言いました。

「魔王様と勇者様は五年という歳月を経て、固い絆を結んだ。これからは協定を結び、一年以内にこの世界を全力でつぶすという方針だ」


 一瞬脳内が真っ白になったことを今でも覚えています。夢かと思って頬を何度もつねりました。しかし、地味な痛みが全身に流れるだけで、眠りからは中々さめません。これは現実なのです。

「いったいぜんたい、この世界に何が起きているのでしょうか」

 今後を想像するだけで足が震えてしまいます。勇者様と魔王。この二人に勝る人種はこの世界には存在しません。魔法を扱えるこの二種族とは違って、私達へ遺民は魔法の類は一切扱えないからです。

心の底から叫びます。……誰か、助けてください!!




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