表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

ゲーマーの彼女の彼氏

 私はゲームが好きだ。

 どのくらい好きかと言われると、今付き合っている彼氏と同じくらい好きだ。まぁ彼には絶対にこんなこと言えないけど、きっと彼も気が付いているのだと思う。

 私は元々そこまで話すタイプではなく、だからこそ一人でも楽しめるゲームに惹かれたのかとも思う。今考えると、昔から人付き合いは苦手で、外に出て遊ぶよりも歳の離れた兄と一緒になってゲームしてるほうが楽しかった。その兄が大学進学を機に家を出て行ってしまってからは、一人で黙々とゲームをしていることが多かった。 

 私も大人になって薬剤師の資格を取って、仕事をしながらゲームのことを考え、家に帰ってはゲームをしての生活をしていた。

 そんな私の前に、今の彼が現れた。

 最初はなんてことのない、ただのお客さんだったのだが、『なんかこの人よく見るなー』と思っていたら、食事に誘われた。給料日前のゲームの発売日ラッシュでちょっと困っていた私は、相手も気を遣うことのないようにと、近所のラーメン屋さんへと行った。

 その後もいろいろとお誘いがあったのだが、帰ったらゲームをしないといけないということもあり、断り続けた。

 それからも誘い続けてくる彼に、ちょっとしつこいと思い始めていた私は、自分がゲーマーだということを素直に打ち明けた。もちろん早く帰ってゲームがしたかったから、それはもう手短だった。

「私、ゲームのほうが好きなので」

 たしかこんな感じ。

 そして、彼が今までの彼の発言の中で一番ときめいた一言を言ったのだ。

「うちにも昔のスーファミのソフトとかあって、たまにやってるんで、その辺は気にしないです!」

 そう。彼の家には現役バリバリのスーファミがあるそうなのだ。

 その日の夜に彼の家に上がり込み、そのスーファミを触らせてもらった。もちろん実際に起動して操作して堪能させてもらった、という意味。今思うと、私、大胆だな。

 まだ潰れていないコントローラーのボタン。適度に動かしているせいか、繊細すぎないソフト、コントローラーのコードの短さ。やはり昔のゲームは風情があった。

 私が……きっと一心不乱だったのだろう。私がスーファミをいじっていると、彼が隣で笑い出したのだ。私は画面から一瞬だけ視線を外して彼を見て言った。

「何かありました?」

「いえ、本当に楽しそうだなって思って」

 きっとこの瞬間に、私は彼と付き合ってもいいかなって思ったんだと思う。少し赤くなりそうだった頬をごまかすためにも、私はゲームに集中していた。

 昔のゲームは、全クリアをするまでにさほど時間がかからない。アクションゲームならなおさらだ。

 私のプレイしていたゲームも一通りクリアし、時計を見てみると、その針はすでに十一時を指していた。終電を逃すとマズイと思い、いそいそと帰り支度をし、外へ出た。

「では今日はありがとうございました」

 私が頭を下げると、彼も靴を履いていた。

 送る、という彼と、大丈夫、という私。

 散々お邪魔しておいて断る権限なんて無いと思った私が折れることになり、駅まで彼が送ってくれることになった。

 その道中。

「俺と付き合ってください」

 告白された。しかし私は彼のことをゲーム以上に愛せるとは思わず、そのままのことを言って断った。

 しかし彼は諦めず、それからしばらく私に付きまとった。というか、彼もゲームを始めた。

 共通の話題というのは話が進むもので、最近のゲームの超初心者である彼にそのゲームのことを教えるのは、楽しかった。

 私の持っていないゲームを彼が始めたら、私がそれを後から買って、彼よりも早くやり込みつくしてしまうというのはザラだった。

 そんな時期がしばらく続き、私の心境にも変化があった。

 彼をゲーム以上に好きになるのは無理そうだが、ゲームと同等くらいには考えられるようにはなってきたのだ。

 そんな状態の私に、なんともタイミングよく彼が告白をしてきたもんで、私は『ゲームよりも好きではないけど、あなたのことは好き』というニュアンスのことを伝えた。

 

 それから何年も付き合うことになり、同棲まですることになった。

 関係は、私がゲームをして、彼が楽しそうに私にくっついてくる。そんな感じだ。ゲームばかりしているのは申し訳ないと思って、電気代は私が全額出している。ここだけは譲らなかった。

 今日も私のゲームがキリの良いところまでいくのを待っていてくれたし、正直お世話になりっぱなしな気もしなくもない。こんな私と付き合ってくれてるんだから、めっちゃいい人なのだろう。

 食べるのが遅い彼よりも先に食事を終え、ゲームを再開していると、コーヒーを持った彼が隣に座って何か話しかけてきた。集中していたこともあって生返事で返してしまい、彼がため息のような『ふーん』を言う。

 ちょっと悪いことをしたかなと思って、ちらりと横を見ると、なんともなかったような顔でゲーム画面を見ていた。

 きっと『このゲームは面白いのか』とかそんなことを考えているんだろう。本当は興味はないけど、私がやっているゲームだから興味を持っているんだろう。

 そんな彼で、私は良かったと思っている。

 実際問題、彼じゃないと私に付いてきてはくれなかっただろう。なんだか本当にいい人と付き合ったんだと思う。

 そう思った私は、ゲームを中断すると、この想いを彼に伝えようと思った。とはいえ、口で言うのはなんだか恥ずかしいので、行動で示そうと思った。

 キスは何回もしたことがあるし、これだけでも伝わると思い、彼にキスをした。

 本当は頬にする予定だったのだが、彼がタイミングよくこちらを見たので、口にした。

 私がゲームを再開すると、彼が抱き付いてきたので叱った。

 叱られたのに彼の顔は幸せそうに笑顔で、こっちまでニヤけてしまうほどだった。

 まるで、犬みたいな人だと思った。



おしまい。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ