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僕と侑依 1
俺は、ただの高校生だったはずなのに。
ただの高校生なりに、彼女がいて幸せだったのに。
こんなことになるなんて。
今でも鮮明に思い出すことが出来る、6月12日金曜日。ちなみに天気は雨。
帰る前の清掃後、考えるのも嫌な数学の補習が始まる前だった。
「ちょっといいかな」
声を掛けてきたのは同じクラスの夜潟侑依。
美しいというより可愛いらしい、地味な女の子。
「どした」
荷物を片づける手を止め、夜潟を見る。
話しかけられて嬉しいのに言葉を冷たく言い放つ、自分の口を呪いたい。もう少し愛想よく出来ないのか。
「今から補習?」
「だけど」
「その後、教室でちょっと話せないかな」
「いいよ」
俺のばか。三文字で返答してばっかりだ。