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scene 7 「精霊」



「『2大精霊』……、か」


弱みは見せたくなかったのだが、交渉のテーブルに付くには自分の手札を知らないといけない。それを相手に教えてもらうのはどうかと思ったのだが、イープの人となりをとりあえずは信用し、なぜ自分を特別扱いするのか聞いたところ、こんな答えが返って来た。


曰く、ルア……ルーアマダザは神話に登場する2大精霊の一体で、歴史上、契約できた人物はいないとされているそうだ。

精霊と契約すること自体は特に日常的な行為で、精霊との親和性の高いアールヴは成人になると、かならず精霊との契約を結ぶらしい。

そのため、契約自体はありふれているののだが、その相手となる精霊の格がルアは桁違いとのことだ。


「はい、マスター。私が≪流転≫を司る2大精霊の一つ、名をルーアマダザです」


どことなくルアが自慢気に見えるのは間違いではあるまい。

尻尾でもあれば忙しなく振ってそうだ。


思わず手を頭の上に乗せて撫でると、目を瞑ったまま、ルアが嬉しそうに破顔する。お前は犬か。


イープの説明では、契約者の魔力素養によって契約できる精霊には厳格な位があり、特に古代ではより強力な精霊と契約できたものは英雄として名を残したそうだ。

宇宙へ進出した(何度聞いても本当かと思ってしまうが)現代でも、高い魔力素養をもち、位の高い精霊と契約できた人物は出世コースまっしぐらなのだそうだ。


そしてその精霊の格は、次のようになっているそうだ。


2大精霊 -> 神話クラス

8大精霊 -> 伝説クラス

16大精霊 -> 英雄クラス

大精霊 -> 名人クラス

上位精霊 -> 良人クラス

中位精霊 -> 普通クラス

下位精霊 -> 劣化クラス

微精霊 -> 精霊が意思を持たないため契約不可


大体アールヴは大精霊か上位精霊と契約する。

イープやヌーは上位精霊で、今はいないがこの聖森守護隊の隊長は大精霊と契約しているとのこと。


そしてルアは2大精霊で、その名前は神話にのみ登場し、有史以来8大精霊以上と契約できた存在はいないらしい。(それこそ真偽が怪しい伝説にのみ、8大精霊と契約できた存在が書いてあるそうだが)

そのため、ルアと契約できた俺はとても稀有……らしいのだが。


(実感が無いな)


特別な存在だ、と言われることは素直に嬉しいし、優越感だって湧くが、準は自分自身を自惚れるタイプではないと思っている。

神話クラスと契約できる魔力素養の持ち主、と言われたところで地球の自分自身を思い返してみると、別段特別なところはなかったはずだ。

無論、地球に精霊などという存在はなかったので単純な比較はできそうにないだろうが。


(しかし、懸念点がある)


大精霊という大げさな名前を引っ提げたルアだが、一体どこまで出来るのだろうか?

現代兵器がどの程度までこの世界にもあるかどうかは分からないのだが、単体でどれほどの戦闘力を持つのだろうか。


イープはまだルアの特別性を語っている。聞いてみるか。


「イープ、話の途中すまないが一点聞きたいのだが良いだろうか?」


「――というわけでルア殿は……うん、なんだろうか?」


「俺が、まぁ、稀有な精霊と契約していることは理解した。だがそれで、俺に何をしろと?まさか、呪文を唱えれば敵国が崩壊するわけではあるまい」


ルアが何を出来るのかによるだろう。

海を割り大地を裂いたとしても、多分それは意味が無い。なぜならば――


「確かに、ルア殿、そしてキリシタ殿は人のみであれば最強という言葉すら生ぬるい、神のような存在になる。これは間違いない」


しかし、とイープは続ける。


「だが、大地のみで争っていた古代ならばいざしらず、星間戦争となった現代では、あまり意味は無いだろうな」


全くそのとおりだ。俺の予想通りだ。たとえ人が100の武術を修め、人類という種の頂点を築いても、ミサイルを10も撃てば片がつくだろう。

技術の発達、文明の発展とはそういうものだ。


特にこの世界は地球より発展しているといえる。つまりは、たとえ火の玉を100個創ろうが氷の矢を万本撃てたとしても、宇宙船にとっては痛くも痒くもないだろう。無論、地球の宇宙に対する常識がそのまま適用できたらの話だが。


しかしより解せなくなった。

イープの話では、ルアの力では戦力として期待されていないとしか考えられない。


いや、もしかして


(人間としての戦闘力は最強……なんだ、敵の本拠地に乗り込んで暴れまわれってか?)


確かにそれなら……等と思っていると、イープが良く分からないことを言った。


「キリシタ殿はご存じないのか?我々が駆る宇宙艦の出力は、艦長の従属精霊の格によって決定されることを」


「なんだって?」


出力が従属精霊の格によって決まる?


「ふむ、まぁ専門的な話は省くがな、宇宙艦を動かすには魔導機関を駆動させる必要がある。これは人間が魔法を使うのと同様の処理をしているのだ」


イープの説明によると、人間は誰もが魔力の生成を行えるのだが、その生成されたての魔力では、魔術を行使するには効率が悪すぎてとても使えないのだそうだ。そのため、生成したての魔力を精錬する必要があり、その工程は精霊にしか出来ないのだそうだ。この工程を踏んだ魔力を「錬魔」と呼び、魔術の行使に必要なものは後者とのこと。


人間が地上のみで生活していた時から研究はしてきたそうだが、一向に成果が上がらず、今現代でもこの事実は不変の事実としてあるそうだ。


人間が魔力を生成 -> 精霊が精錬 -> 錬魔が生成される -> 錬魔を用いて魔術を行使


人間がどの程度の魔力を生成できるのかも重要だが、なにより契約した精霊がどの程度精錬できるか(質の高い錬魔を生成できるか)も重要視され、図らずもルアは2大精霊の名に恥じず、高い練磨生成技能があるらしい。


そして、宇宙艦の動力となる駆動炉、これを動かすにも錬魔が必要、らしいのだが……


「素人考えで申し訳ないのだが、一ついいだろうか?」


「キリシタ殿、なんだろうか?」


「高い出力を出したいのであれば、複数人の契約者で錬魔を生成すれば良いのではないか?」


要は掛け算だろう。素が小さければ数を集めれば良いのだ。


「たしかにその方面で研究している者もいるが、現状、一般的ではないな。どうやら精霊同士が相互に干渉し合い、複数で同一の魔導機関へ錬魔を注ぐのは出来ないのだ」


「なるほど」


じゃあ駆動炉を複数用意すればいのと思うのだが、まぁ何らかの技術的な制約があるのだろう。俺も専門的な話をされてもわからないので、一先ず納得しておこう。


「すまない、話がそれたな。それで、俺に何をして欲しいって?」


しかしここまで進めば多少は想像がつく。


「ルア殿が駆動炉に錬魔を注げばまさにその宇宙艦は一騎当千の動きをするだろう」


だろうな。


「キリシタ殿、貴殿を旗印として、我が王国の宇宙軍に是非招待したい」




結局イープの話しは蹴った。

彼は気が向いたら何時でも来てくれて構わない、歓迎すると言っていたが、多分もう逢うことはないだろう。


俺は子供の頃から小説が好きで、ファンタジー、恋愛、推理モノなど、その範囲はそこそこ広いと思っている。

中でも好きなのはSF、特に宇宙を題材にしたもので、未知の生物と交信するもの、地球から広く離れた惑星で実施される不思議な冒険、そしてやはり、宇宙空間における艦隊同士の戦闘。これらの本は俺の宝物だった。

中には10回以上読み返したものだってある。


大学も理系にして、宇宙工学を専攻しようと思ったのだが、実力が足りなくて浪人した。悔しいという思いもあったが、何かそれ以上に気が抜けて、1年間勉強もしないで本を読み漁っていた。


「ん~、気持ちのいい日差しですね~、ポカポカしててお昼寝したくなりますね」


そしたら、父に無理やり自衛隊へ入れさせられた。

別に特段厳しい親でもなかったのだが、さすがに毎日ダラダラと過ごす俺を見かねたのだろう。

どうやら父方の叔父が自衛隊の幹部クラスのようで、いつの間にか話がついていた。ある日起きたら叔父さんがニコニコ顔+スーツ姿で立っていて、『さぁ、準くん、行こうか』と言われた。あの時はさすがの俺も目が点になって、流されるままに手を引かれた。


「あ、ほらマスター。あれ食べましょうよ。美味しいんですよ、あれ」


自衛隊の訓練はもう辛かった。毎日毎日如何に手を抜くかしか考えてなかった気がする。同期で沼田というやつがいたのだが、こいつも入隊当初はひ弱で、俺とドベを競っていた。


「マスター、


「ルア。俺はなんでこんなところにいるのだろうな」


まぁあいつには感謝している。沼田がいたからこそ鬼教官のシゴキにも耐えられたんだと思う。向こうも同じ事思ってそうだが。

あれよあれよという間に4年が経ち、俺は結局民間企業に就職することにした。


(それから1年……とちょっとか?気がつけば異世界とはな)


「え、えっと……それは、その、マスターのお祖父様の……」


ああ、そういえばそういう設定だった。


「言い方を変えようか、ルア。俺は何をしたら良いのだろうな」


「それはマスター。マスターのお気の召すままに」


「……そうか、ありがとう」


「いいえ」


ルアはそう言ってこちらに微笑みかけてくる。

先程も沈黙していた俺に話しかけてくれていたようだし、こいつは良い奴だ。俺にはもったいない、と思う。


(王国軍になって戦闘艦の艦長になる)


それはとても心惹かれる誘惑で、今まで本で読んでいたスペースオペラの世界に飛び込めるわけだ。高校生の自分なら先ほどのイープの話に飛びついていただろう。


「しかしマスター、良かったのですか、先ほどの話は」


「ああ、構わない」


俺の自衛隊時代、辛い思い出ばかりで、唯一の娯楽が飯だった。

正直に言うと、戻りたいとは全く思えない。


「そぅ、ですか……少し、残念です」


「……」


それでも、学んだことはあるし、今だから思えるが、入ってよかったとも思う。


「マスターならバンバン敵を落としてすぐエースになっちゃうと思ったんですけどね」


すまないな、ルア。

俺はこれでも元自衛官だ。


人を殺すために武器は取らないと誓った身なんでね。


ご意見、ご指摘等お待ちしております。


なお、連休中は筆者のプライベートのため更新できません。

そのため、次回投稿は7月21日以降とさせて頂きます。


申し訳ありませんが、ご了承ください。

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