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記憶の森  作者: sarsha
8/11

(7)記憶の木



「ロビン!!」


 ハッと気付いた時には、アルフィが俺の腕を強く掴んでいた。


「……お前の家に着いたぞ」


 そう言われ、周りをゆっくりと見渡すと、木造の小さな小屋が建っていた。俺の家だ。額から滲み出た変な汗を拭うと、馬から降り、ウェルトとノヴァンの冷たい視線を感じながらも家に入った。


 いつの間にか太陽も顔を覗かせ始めていて、小屋の中はうっすらと明るかった。ドアを開けてすぐの所にいつも立て掛けてある剣を手にし、ベッドの横に置いてあったベルトを腰に巻いてから剣を差した。


 森の中を、太陽が照らす。すっかり明るくなり、夜は不気味なこの記憶の森も、お伽話に出てくるような、妖精が飛んでいそうな、そんな森に見えた。


「着いたようだな、これが、かつての英雄、メモリアントが植えたと言われている、記憶の木だ」


 気付けば、目の前には大きな木が聳え立っていた。大きいなんてものじゃない。その存在だけで人を圧迫する。何か、大きなエネルギーが体に伝わってくる。俺は、何かに取りつかれたかのように馬を降り、その木に近づいて行った。周りが何を言っているかもわからない。ただただ、その木のことしか考えられなかった。恐る恐る、その木に手を伸ばす。


(よく来た。若き勇者、ロビン・アンソニックよ)


「何?」


(お前を待っていた。ここで、じっと、幾千年の時を)


「どういう意味だ?」


 手を伝って、微かな振動と共に声が体に染み込んでくる。


(最大の危機が迫っている。3つの世界を守っていた我々が消滅すると共に、世界が、消える)


「……」


(陸の国メモリアント、海の国シーザライス、空の国スカイロン)


「何のことだ?俺にはさっぱり」


(この世界には、3つの世界が存在する。お前たちの知らない、他の世界)


「おい、ボソボソと何を呟いている」


 急に肩を掴まれたと思ったら、一気に視界が開けて見えた。木に手を伸ばしていた時は、木しか視界に入らなかった。ウェルトは怪訝そうに俺を見ていた。


「ウェルト、待ちなさい」


 そう言って近づいてきたのはアルフィだった。アルフィは俺たちの横に立つと、俺と同じように木に手を伸ばした。


「久しぶりじゃのぉ、メモリアント。お前の声、皆に聞かせてやれ」


 アルフィがそう言った瞬間、アルフィの手が眩しく光った。


『アルフィよ、ずいぶんと久しぶりじゃないか。私の話を、聞きに来たのか』


 今度はウェルトたちにも声が聞こえるようになったようで、ウェルトやノヴァン、兵隊たちはどよめいて騒がしくなった。俺はじっと、木だけを見つめていた。


「それもだが、できれば記憶を返してもらいたい」


 木はしばらく黙ったままだったが、しばらくしてから声を発した。


『よかろう。ただし、私の話を聞いてからだ』


「かまわんよ。時間は、たっぷりある」


 そのアルフィの言葉に、またしても木は黙り込んだ。アルフィの厳しい目は、木を見続ける。


『アルフィよ、時間はないのだよヴォルデオが、他の世界を移動し始めた』


 ざわっと風が吹き、木々を揺らす。すごい勢いで鳥たちが木々から離れていく。雲が森を覆うと、あたりは少しだけ、薄暗くなった。とてつもなく大きなものが動き出している。そう思った。体の中の何かが俺に警告する。俺の知らない記憶が、俺が忘れてしまった記憶が、俺に、訴えかける。


―オマエハヒトリダ


―ボクヲ、コロサナイデ


 激しい頭痛が襲ってきて、その場に崩れ落ちた。片膝でなんとか姿勢を保ち、そこからフラフラと起き上がろうとする。俺は何を忘れている?どんな記憶を持っていた?何かを忘れてしまっている。


 一体、何を―?


『アルフィよ、時間はないのだよ。ヴォルデオが、他の世界を移動し始めた』


「急がば回れと言うのだよ」


 気がつけば、俺は変な汗を流して、傍から見たらすごい顔をしていたんだと思う。頭の中で、無い記憶の中をずいぶんと長い間彷徨っていたと思ったのに。しっかり地に足を着けて立っている。


『それでは話すことにしよう。私の記憶のほんの一部を』



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