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かくてカラスはうたいだす  作者: トトホシ
出動

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特攻

「落ち着いてください、死にます」

「これがっ! これが落ち着いていられるかっ!」

「あなたの狙撃の腕は信頼できないので、援護をお願いします。奴らは私が全員殺します、だから落ち着いて。まずは怪我をした大鵬の回収を」

「しんらいできな……?」


 そうしている間にも轟音とともに一羽、大鵬が地へと落ちていく。


「小隊長より指令。三号車は撃墜された大鵬の回収に急げ。怪我の程度を見て離脱、医療班と合流。判断は任せる」


 シキが無線で指示を与える。すぐに三号車了解の声が聞こえて、二号車の後ろを走っていた三号車がUターンして地上で羽をばたつかせてもがく大鵬の元へと走っていく。

 だんだんと小さくなっていく三号車の後ろを、ただ見つめるしかない。左側の頭がぎしぎしと痛んで、無意識に歯を強く食いしばっていたことに気がついた。


「よし殺そう」

「アンスール、いいか、落ち着けよ? ほかの連中も見てるんだ。ここで例のやつをぶっ放して見ろ。大鵬のヒナも無傷じゃすまない」


 シキが私の腕を強く掴んで耳元でそう言った。私は怒りに忘れつつある我を取り戻しながら、唇を噛みしめ小さく頷き、前方の車両に向けて小銃を構えた。軽装甲機動車ならば小銃弾程度は防げるだろう。ならば狙うは生身の人間だ。


 未だ大鵬を狙って車体から体を乗り出し、空に向かって小銃を構えている間抜けな頭に狙いを定める。


 あなたの敵はこっちですよ。


 引き金を引く直前で気づかれたのか、前を行く車両からもこちらに向かって小銃を向けられた。我々が乗り込んでいる装甲車は機銃がついている点では上だが、防御としての強度は同程度だ。小銃弾や断片程度は防げる。

 耳を聾するほどの音を響かせて、密猟者の小銃弾が火を吹いた。体を乗り出した私を狙っているようだが、相手は銃を使い慣れていないのか、私どころかこちらの車両にも当たりはしない。

 激しく上下する車両の中で、再び照準を敵の頭に合わせる。


「いっちにっの、さん」


 引き金を引くと、前を行く密猟者の鉄帽が吹き飛び、ぼん、と頭が弾けた。赤く飛び散る残骸は血か脳か。頭をなくした男の体はくの字に折れ曲がり、風にあおられて高速で移動する車両から落下し、地面に叩きつけられた。マネキンのようにくるくると横回転する体を無言で見送る。

 もちろん、そんな死体を回収している余裕はこちらにも、あちらにもない。

 大鵬の群が徐々に降下してきて、密猟者の車両を襲う。だが、人質がいる以上最大の武器である炎は吐けないようだ。体当たりを食らわせるも、甲機動車に対しては傷一つ与えられない。

 ハッチが閉められたので、頭上から直接中を攻撃する事も叶わない。


「大鵬殿、危険です。やつらはまだ武器を持っているはずです。下がっていてください、私がやります」


 小銃を肩に担ぎ直して大声を上げた。大鵬たちは互いに顔を見合わせが、長が上空へと旋回すると、それに追随して群全体が空高くへと舞い上がった。敵を一人殺したことで少しは信用してくれたということだろう。それでも大鵬は追跡することはやめない。


 これでいい。こちらもあちらも銃を持っている以上、あまり近くを飛ばれると邪魔だし危険だ。


「機銃だと威力がありすぎるので、俺がタイヤを打ち抜きましょうか」


 私としてはあまり腕に信頼のおけないユイスが両手で小銃を持ち上げた。


「そうだな。人質がいるし機銃だと危険か」


 シキが頷く。


「確実にタイヤを撃ってくださいよ。人質に怪我をさせたら私よりアンスールが怖いんですからね」


 機銃のハンドルを握りしめたまま、狙撃手のリコが振り向いてユイスに笑いかける。


「それはアイツ等の運転手に言ってよ」

「ユイス先輩なら軽いですよね」


 リコの嫌みにユイスが笑う。彼の狙撃の腕がポンコツ同然なのは周知の事実だ。

 己の評価を知ってか知らずか、笑いながら小銃を構える。間髪入れずに引き金を引く。

 銃弾は乾いた土を射止めた。


「大地ゲットです」

「一発なら誤射だっての!」


 二発目で左側後輪を打ち抜くと、タイヤが弾け飛び、車両ががたがたと上下して左右に蛇行をし始めた。スピードも明らかに落ち、ゆがんだホイールだけとなったが逃げることはやめない。


「当たった」

「奇跡ですね」


 リコとサフアンが顔を見合わせて笑う。


「まだ止まらないか」


 シキが焦げたタイヤの臭いに顔をしかめる。


「人質持ち出さなきゃいいですけど」


 リコが不安げな声を上げた。


「あっちはあと何名いるんだろうな」

「特攻しましょうか。私一人で十分です」

「そうだな……」

「とっとと終わらせましょう」


 鉄棒をきつく締め直すとシキが私の覚悟を感じ取ったのか、力強く頷いた。


「横付けします」


 操縦手が蛇行する機動車に合わせてスピードを落とす。


「アンスール、特攻するなら防御の『星々の祝福(ルネ)』を施してやる。ちょっとこっちこい」

「ありがとうございます」


 私の額に右手をかざしたユイスの体が青白く光る。『星々の祝福(ルネ)』と言われる特殊能力を発動するときに発する発光だ。

 指先で空中に文字を書くと、私の体もわずかに光を帯びた。先ほどタイヤを打ち抜いた引き金に掛けられていた太い指先が、今度は優しい光に包まれている。鳩尾に熱源を感じて、徐々に体全体がほんのりと暖かくなる。私は不思議な心地でユイスの太い指を眺めていた。


星々の祝福(ルネ)』は『星々に祝福された者(ルーン)』だけが使える力ではあるが、決して珍しいものではない。


星々の祝福(ルネ)』の種類がピンからキリと色々あるのと同じように、『星々に祝福された者(ルーン)』も数多くピンキリなのだが。


「よし、これでいいぜ。行け、特攻隊長」ユイスがばしんと音を立ててやけに強く背中を叩く。正直痛い。「前にも言ったけど、銃弾かわすのは無限じゃないからな。ある程度受けていたら効果も薄れる。銃弾はなるべく自分でかわすように」

「何度も言うようですが、銃弾は自分ではかわせません。ルネが切れそうになったら、遠隔でまたかけてください。よろしく」


 ふざけんな。遠隔は無理だっての、という言葉背後に受けながら、再び頭上のハッチを開く。


「気をつけろよ」


 シキの言葉に深く頷く。


 車両の上に立ち、同じスピードで走る密猟車の車両に飛び乗った。後輪のタイヤがなくなったせいで、上下運動が激しく乗り心地は最悪だが、スピードがないので振り落とされるほどではない。この仕事のおかげで足腰には大変自信がある。

 さてこれからどうするかと思うが早いか、突然足下のハッチが開き、そこから不意打ちのように機関銃が火を吹いた。防御のルネを施してもらったという油断もあり、うまく反応できずに全身に銃弾を浴びた。すさまじい衝撃に車上から落ちそうになる。だが、至近距離の機関銃といえども、防御のルネが発動している状態にあっては、ある程度ひるませることはできても、この体に傷ひとつ与えることはできない。

 それにしても危なかった。ルネを施していなければ蜂の巣になるところだった。独り言を呟きつつ、腰にぶら下げていたサーベルを引き抜く。


「なっ、子供!? いや、な、こ、こいつ、不死身かそんなば……」


 言い終わらないうちに、足下にいる男の心臓めがけてサーベルを突きさした。そのまま全体重をかけて男の体を踏みつけ、車内へと降り立つ。

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