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捜鷹記  作者: 檻の熊さん
13章

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灌頂 食べる物

 「死者との対話」なんて言ったら格好良く感じるかもしれませんが、薬の副作用です。入院したばかりの頃、当時のプレドニゾロンは日量60mgでした。使用量は急速に減って行ったのですが、中毒量というのは伊達(だて)ではないらしく、長い間不眠が続きました。どういう事かというと、深夜の0時になる少し前に目が覚めると、そのまま朝まで一睡も出来ません。逆に、食後の血糖値の上昇に応じて軽く眠くなる時間があるので、30分から2時間くらい、一日に3回ぶつ切りにして寝るというのが、当時の私の睡眠時間でした。このわずかな時間の間に、私、夢を見ました。独特なもので、死んだ祖母が出て来て、当時、子供の頃にみそ汁を作っていた祖母に私は「ああでもないこうでもない」と、出汁の取り方を教えておりました――――――昔は、出汁なんか取らないでみそ汁を作るのが当たり前でしたからね。今どきなら、AIが作った「それらしい人格」と話している感じになるのでしょうか、なぜだか昔のそのシーンに戻り、延々どうでもいい様な日常会話を「その人」と続けている。そういう夢です。ある時は、やはり亡くなった祖父が出て来て、当時、今考えたら胃がん関係の体調不良だったのだろうと推測出来るのですが、名古屋駅の地下街にある喫茶店で休んでいるとき、私、祖父に話しかけておりました。延々と、やはり意味のあるようでない日常会話をしておりました。そういう事を「した」のを、しっかりと覚えている状態で目が覚めるのです。かなり独特な体験でした。今では減薬が進んだので、こういう夢を見ることはありません。夜になれば、普通によく眠れております。しかし、「自分の頭は大丈夫なんだろうか?」と疑問に思う事があります。雌の鷹をね…。


 人間だったら媚薬のような物になるのでしょうか?「発情誘起飼料」という物はないのですが、採卵鶏を管理する為に使われている養鶏用飼料は、それに近い物です。世のニワトリやウズラは、この餌を与えられて生きております。やれカルシウムだアミノ酸だと色々と能書きはありますが、「高エネルギー食品」であるところに、よく発情し、よく卵を産む理由があります。「Gut(ガット) loading(ローディング)」は爬虫類に餌を与えるときの手法で、元はカルシウムを食べさせたコオロギなどをトカゲに与えて「カルシウム強化飼料」としたというのが始まりです。カルシウムの供給方法も今では変わりまして、コオロギとカルシウムの粉をビニール袋に入れてよく振ってから与える「Dusting(ダスティング)」の方が主流になりました。現在では「栄養強化」の目的で、カルシウム以外の栄養成分についてもこのどちらかの手法で供給が行われています。とくに「ウズラ」という飼料を考えた場合、爬虫類のコオロギとカルシウムの関係によく似た事をしている事に気付きます。つまり、雌のウズラには、産卵を促し、卵を毎日でも産み続けるのに必要な、過剰なまでの栄養素を全て備えた「高エネルギー食品」が生前与えられ続けていたのです。これを鷹が食べている。追加でサプリメントを餌に振りかけている飼い主がいたら、そちらはダスティングという事になります。

 生前、大した日数生かしておかないで飼料に回される初生雛(しょせいびな)については影響は少なくなるはずですが、長期に渡って採卵用の餌を食べ続けたウズラは違うようです。餌としてウズラを与えられている、痩せさせていない、体重のあるときのハンドレアードは、猟期中であっても何かの弾みで据前(すえまえ)相手に営巣アピールや「肩に乗る」などの発情期の行動を示します。この行動は雄と雌で違い、私自身が経験したのは雄の鷹ですが、ハンドレアードの問題行動に「過剰な発情」というものがありまして、どうしても目立つ事があるようです。例えば、まだ猟期中なのに、自宅周囲だと雄の鷹が背中に乗ってくるようになり羽毛が傷んでしまうとか、移動中など鷹が据前(すえまえ)が近くに居る事に気付くと独特な声で鳴いて五月蠅(うるさ)い、飛翔や狩りに集中しきれていないといった弊害(へいがい)があります。

 難しい方法ではないのですが、対策はふたつあります。ひとつは、詰めることです。痩せさせて「それどころではない」状態にしてしまえば、よく使える鷹になります。今どき、特にハリスホークは、何年も使っていると体重を下げないでもその辺で普通に飛ばせるようになりますが、ペアレントレアードでも刷り込みが入りやすく、食餌が高エネルギーであればなおさら、微妙な行動に遭遇することがあります。虐めているようなものですが、体重を下げたら問題は解決します。

 もうひとつは、「獲物」など、ウズラよりもエネルギーレベルが低いと考えられる食餌を与えることです。つまり、痩せさせてない鷹ならば、「同じ体重」で餌が違うと行動が異なるのです。まず、発情的な行動が現れなくなる、なわばりを守る為に現れる攻撃的な行動の出現時期が遅れる、獲物に集中して「やる気」を見せる様に成る、「真剣さが違う」、「よく捕る」そんな感じに成ります。獲物にはリスクが潜んでおります。一度だけ、私は冗談で獲物の鴨のレントゲンを撮った事があります。もちろん死んでいます。この時に撮影した画像の中に、金属片とおぼしき小片が多数見付かり、私は慌ててその鴨を廃棄したことがあります。今どきは鉛散弾とは限らないようですが、「撃たれた鴨」は体内に金属が残ったまま、生き延びて生活している事があるのです。この問題は、仮に銃猟禁止区域内で捕獲した鴨であっても同じで、「撃てる場所」で撃たれた鴨が「撃てない場所」に逃げ込んで、あらためて鷹狩をする人たちに捕らえられる事がある訳です。「獲物」にはこういったリスクが潜んでおりますが、飼料としてはむしろ「健全である」という考えもあります。とにかく行動が変わるのです。昔の人は、墨餌(すみえ)だの土餌(つちえ)だのと言って、鷹に提供する食餌の栄養価を落とす工夫をしていたらしいのですが、現代においてそういう事をしている鷹匠がいるとは聞いておりません。ただ、ウズラには「濃い餌」という印象が付きまといます。

挿絵(By みてみん)

ヒシクイです。鷹を飛ばしに出たとき、近所の水田で見かけました。

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