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捜鷹記  作者: 檻の熊さん
8章

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猟野にて 飛梟様無双3

 悪い事ばかりではありません。飛梟(とび)の様な鷹は怖い物知らずなので、背後に車が通過しても気にしませんし、田舎名物外国人研修生たちの自転車集団がやって来ても無視して呼べばこちらに飛んで帰ってまいります。なんなら、鷹の止まっている場所から道路1本隔てた背後の農地でキャベツ畑の散水が始まり、農家の人たちが数人でこちらを見ていたなんて事もありました。大した集中力ですが、本来なら拳に戻った時点でジェスをさばいて保持し直すなどの操作を行うはずが、迂闊(うかつ)に手を伸ばすと、興奮した鷹が足を突き出すか咬み付いてくるかして、場合によっては顔に飛びついてきてしまいます。


 まずは食わせて、食べ始めたのを確認したら、そちらに興味が逸れたのを足の動きとクチバシの所在から慮り(おもんぱかり)、ジェスを保持し直します。やっている内に、ウズラの羽節を使った呼餌(おきえ)の時の方が操作を許容する事が多く、餌合子(えごうし)の時の方がよろしくない事が分かってきたので、猟野ではあえて餌合子(えごうし)を使わないといった事に気を使う様に成りました。餌合子(えごうし)ですが、ジェスの保持が出来ていても駄目な勢いで電光石火(でんこうせっか)の蹴りが飛んできた事が度々(たびたび)ありまして(少しくらいの握力では抜けてしまう)、本来の操作から離れ、そのまま下方に落下させて右手で受け取るという事を長い間続けました。普通に、餌合子(えごうし)に蓋を上から被せてスッと抜くという操作が出来たのは、なんとか年を越す前に出来たとか出来ないとか、それくらいの難易度でした。


 興奮した鷹は姿勢が悪くなるものなのですが、拳の上の鷹がそういう素振りを見せ始めたら、もうその場所では鷹を放しません。放した途端に、拳の代わりに私の顔に直接飛びついてくるかどうかという危険な徴候だからです。そんなときは、「()せを切る」と言いますが、執着している本来なら獲物に対する猟欲(シアミ)を切る為に箱に入れてしばらくかかって狩場を移動したり、仕舞わないで周囲の景色を見せながら移動して、鷹が「こっち」を気にしなくなるのを待ちます。

 箱の中に仕舞うと、中で(たぎ)った鷹が暴れまくって飛翔に必要な長羽(ちょうう)を傷めてしまったり、剥き出しにして据えていたら鷹匠の顔からいつまで経っても目を逸らしてくれず、狩りに成らなかったとか、こういう方法には一長一短があります。飛梟(とび)については、雄の鷹だというのも大きいと思うのですが、時間経過と共に大概は「()せを切る」ことが出来る様です。雌のハンドレアードだったら、とにかく熾火(おきび)の消えない感じで行動が持続しますから、大人しくその日は帰宅して、罰ゲームよろしくスクリーンパーチにでも一晩(さら)していたでしょう。いえ、姿勢の悪いときの飛梟(とび)を放したところ、こちらが餌の準備をする前に一瞬で戻って来てしまい、背後から肩に止まられた事があります。わたしは、ヒヤリとしました。


 野生の若い鷹が、うっかり持って逃げる事の出来ない大きな獲物なんかを捕ってしまうと、集まってきたカラス相手に「獲物を放してアタック!その隙に羽毛を引きながら…やはり放してはアタック!」を繰り返します。「これは僕のだ!」と言っているのです。飛梟(とび)の私に対する攻撃は正にこれで、ハンドレアードですから、私の事を食餌を巡って「競合する同種」と思えばこそ、攻撃をしてくるのです。この点、ペアレントレアードはまず絶対に「顔に向かって攻撃」はしません。

 病気の関係で薬を飲んでいなかったら逆にえらいことに成ったのではないかと思うくらい、この鷹は何度も私の手や顔に攻撃を食らわせてくれました。雌だと、もっと「暴れ馬」に成りますから、手も足も出なかった事でしょう。


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