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捜鷹記  作者: 檻の熊さん
8章

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猟野にて 飛梟様無双

 免疫というのはよく分からない物で、「常識的に言って」当たり前の話がたくさんある一方で、「逆療法」という言葉にある通り、(いたわ)る代わりに(いじ)める事で是正されてしまう調整がある事が言われます。私の行動制限に関する諸々もそうで、「あれも駄目これも駄目」と言われていた諸々は、鷹を探している内に借金の証文よろしく踏み倒されてしまい、「さぞや酷い数値になるだろう」と検査に出かけてみたら極めて順調に数値が下がっていたりしました。「なぜ?」と聞かれて答えられるものではないのですが、私の体調は猟期に向かってグングン良くなり、自分でも「燃え尽きる前のフィラメントの輝きではなかろうか?」と、不安を覚えるほどになります。そんな中、梅雨の頃から頑張ってきた飛梟(とび)の調教も、一つの到達点に向かいます。


 猟期というのはつまり、1年目の若い鷹たちにとって「実地研修」の期間です。これまで自宅周囲の整えられた環境で行われてきた諸々を、実際のフィールドでも試し確認していく、あるいは新たに経験を加えて、より丸みを整えた行動にしていく、そういう事が行われます。

 「初めての猟野」に、格好いい話はありません。いちおう獲物を探し、何も居ないので車に戻ろうとする途中、「何故か行きたがるそこ」に向かって鷹を投げると、獲物なんぞ居るはずもないのですが、地面に降りて草丈の無い草むらの中を執拗に執念深く探して、呼べど叫べど帰って来ない。いいえ、呼べば呼ぶほどに、鷹は「そこに何かある」と思い込んでしまい、逆効果になります。阿呆らしくなって車に戻って待っていようとしたら、なんと車に辿り着いた所で,その場所からぽ~んっ飛んで屋根の上で「ひとあし先に」待っておりました。訳が分かりません。

 ならば、本当にカモを見せたら、どうなのだろう?そう思い、捕れるはずも無いのだけれど、目を背けるほどカモの居る池に連れて行ってみれば…。投げてみたけれど、手応えの悪さから、「そちら」に飛んで行く気が無いのが伝わってまいります。なんと、水面遥か手前で尻込みして躊躇(ためら)いのみさご羽(みさごば)(ホバリング)、空中でパタパタしたと思ったら、水面に映った何か、おそらく自分に向かって、フワリと降りる。捕る捕らない以前の話ですね。眼前の水面には、コガモにカルガモその他、数十羽のカモがガアガア五月蠅(うるさ)くしてります。もう、「見せに行った」だけで終わりです。意外にも呼餌(おきえ)への反応は良くて、すぐに呼び戻せたりしたのはつまり、「あんなもん、捕れるはずもない」と、鷹が思っているからこその行動です。


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