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捜鷹記  作者: 檻の熊さん
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帰宅

鷹たちだけが、出迎えてくれました。

 長い留守の後、我が家に戻るなり私がやったのは、屋内に居るはずの鷹たちの無事を確認し、拳に据え、「いつもの通り」に体重を量り、屋外の「いつもの場所」に繋留する事でした。初めに「わんわん」を、次に「薬研(やげん)」を、外に出しました。体重を確認したのは、こちらのコントロールを受け入れるレベルの体重なのかどうかを確認する為です。ついこの間まで、猟期で屋外で飛ばしていた連中です。体重さえそれなりならば、あとはどうとでもなります。いずれの鷹も、猟期中もかくやという体重が維持されており、問題無く拳に据える事が出来ました。

 「真砂(まさご)」だけは、期間中ずっと屋外に繋留しておりました。屋内の施設だと羽毛の損傷が激しくなる事が予想され、大緒(おおを)を食い千切る悪癖があったので、最悪は屋内を飛び立って行って別室に繋いである他の鷹を攻撃する危険があったのです。もちろん、施設内とはいえ、施錠の不十分な施設でしたから、屋外に繋留した場合は逃げて行方不明になる危険があります。確認すると、大緒を構成するパーツの内、小槌緒(こづちを)と呼ばれる構造の一部が食い千切られており、「細い紐1本」という状態で、かろうじて紐の役割をはたしてしました。冗談でなく、私の退院が遅れていたら、鷹は居なくなっていたと思われます。実際に、入院室のベッドの上で、私はそんな事ばかりを気にして、「出来るだけ早く退院させてくれ(通院なら、来週にだってとんぼ返りするから!)」と、医師の方に毎日のようにギャアギャア言っておりました。いえ、本当に「あとちょっと」という状態でした。私は賭に勝ったのです。


 留守中の餌やりは、放り餌で1日おきにやってもらっておりました。しかし、さすがに清掃まで依頼する訳には行かず、入院した日から26日間、汚れるだけ汚れた室内が、そこにありました。入院前には出来ていた事が出来なく成っていたり、出来なく成っていた事が出来る様に成っていたり、なんなら足元がもつれて転倒してみたり、大緒の着脱の際に異様な手の震えが現れて作業に手間取ってみたり、入院室のベッドの上に居るだけでは分からない様々な変化を短い間に体験しました。中でも一番印象に残っているのは、忘れるほど久し振りに、「汗を掻く」という体験をした事でしょうかね。とにかく、時間だけはたっぷりあったので、ゆっくり時間をかけて掃除をしました。


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