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97話 神話の継承と葛藤

八百万の神々と人々の共生を体感した仲間たちの前に、今度は「正史」と「忘れられた物語」の間に横たわる、深い葛藤が浮かび上がる。

天皇神話や王権神話が持つ政治性・歴史性と、土地に根ざした民間伝承――

主人公たちは日本という国の「語り」の構造そのものに、初めて真正面から向き合うことになる。


カナエ:正史と語り部のあいだで


図書館で、カナエは小学生たちに神話を語っていた。


「イザナギとイザナミが国を生み、アマテラスが天皇の祖先となった――これが『古事記』や『日本書紀』の物語です」


そこへ、地元の老人が静かに口を挟む。


「だがな、昔はこの町にも“まつろわぬ神”の話があった。天皇さまの話だけが“ほんとう”じゃない」


カナエは戸惑いながらも、子どもたちに問いかける。


「みんなは、どんな物語が好き?」


子どもたちは「おばあちゃんが教えてくれた山の神の話が好き」「昔の川の主の伝説が好き」と口々に語る。


涼太:天皇神話の政治性と地域伝承


涼太は大学の研究会で、天皇神話と地域伝承の関係について発表していた。


「天皇の神話は、古代から政治権力の正統性を支えるために編まれてきました。

『古事記』や『日本書紀』は、天皇の祖先が神であることを物語ることで、支配の正当性を保証したのです」


質疑応答で、地方出身の学生が手を挙げる。


「僕の地元には、天皇家とは関係ない神様の伝承がたくさん残っています。天皇神話とどう折り合いをつければいいんでしょう?」


涼太は答える。


「正史とされる神話の陰には、各地の“忘れられた物語”が無数にあります。

どちらも日本の歴史と文化を形作っている。両方を大切にしたいですね」


カオル:村の祭りでの葛藤


カオルの村では、今年から天皇即位の儀式に倣った新しい祭りが始まろうとしていた。


若手農家たちが集まって話し合う。


「都会から来た人たちが“天皇の祭り”をやろうって言い出したけど、俺たちは昔から田の神や山の神を祀ってきた」


カオルは悩みながら言う。


「天皇の物語も大事だけど、村の神様や祖霊の伝承も守りたい。

どっちか一方だけじゃなく、両方の物語を受け入れられないかな」


長老が静かに頷く。


「新しいものも古いものも、どちらも村の宝だ」


レナ:ネットで揺れる「正史」と「異端」


レナのSNSには、天皇神話を賛美する声と、地域伝承を“異端”とする意見が入り乱れていた。


「アマテラスの血筋こそ日本の正統」「地方の神話は作り話だ」

「いや、土地の物語こそ本当の日本だ」


レナは配信で語る。


「正史とされる神話も、忘れられた物語も、どちらか一方だけでは日本の多様性は語れません。

みんなで、いろんな物語を受け入れていきたい」


サラ:舞の源流をめぐる葛藤


サラは、天皇即位の大嘗祭を模した舞と、村に伝わる土地神の舞のどちらを伝承すべきか、師匠と議論していた。


「どちらも大切だけど、どちらか一方だけを残すのは違う気がするんです」


師匠が静かに答える。


「天皇の舞も、土地の舞も、どちらも時代の中で生まれた祈り。

両方を受け継ぎ、未来に伝えていくのがあなたの役目かもしれない」


サラは深く頷いた。


仲間たちの共鳴と葛藤


その夜、仲間たちはオンラインで語り合った。


カナエ「正史とされる神話も、忘れられた物語も、どちらも大切にしたい」


涼太「政治や歴史の中で神話がどう使われてきたか、もっと知りたい」


カオル「村の祭りも、天皇の儀式も、両方受け入れていきたい」


レナ「ネットでは対立も多いけど、多様な物語を認め合う社会にしたい」


サラ「舞も神話も、全部を未来に伝える役目を果たしたい」


悠馬が静かに言う。


「正史と忘れられた物語、その間で揺れる葛藤こそが、僕たちの新しい物語になる。

みんなで、未来の“記憶の橋”を架けよう」


こうして仲間たちは、神話の継承と葛藤の中で、

自分たちにできる“新しい語り”の形を模索し始めた。

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