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94話 国生みの謎

旅の途上、仲間たちはイザナギ・イザナミの国生み神話をなぞるように、“島”や“柱”にまつわる現地の伝承や祭祀を調査していた。

その土地ごとに語り継がれる“はじまり”の物語は、現実の地形や災害の記憶とも深く結びついていた。


カナエ:島の伝承と御柱祭


カナエは、海沿いの町で古老の話を聞いていた。


「この岬の先に浮かぶ小島は、イザナギとイザナミが最初に生んだ“オノゴロ島”だと言われてるんだよ」


カナエは目を輝かせる。


「古事記の国生み神話と同じですね。天の浮橋から矛で海をかき回して、滴り落ちた潮が島になった――」


古老は頷き、浜辺の御柱を指さす。


「島の祭りでは、今も“御柱”を立てて、神々の巡りを再現している。

昔は大きな地震や津波があると、柱を建て直して“国の再生”を祈ったそうだ」


カナエは御柱に手を当て、土地と神話の重なりを感じていた。


涼太:柱の巡りと災害の記憶


涼太は山間の村で、天の御柱を模した巨木の祭祀に立ち会っていた。


村の神主が語る。


「イザナギとイザナミは、この柱を巡って国を生んだと伝えられている。

村では、柱を三度巡ることで“新しい命”や“家族の安泰”を祈るんだ」


涼太は、村人たちが柱の周りを静かに歩く姿を見つめる。


「柱を巡る儀式は、災害や疫病の後に必ず行われてきたんですね。

神話の“国生み”は、現実の再生や復興の祈りと重なっている……」


神主が頷く。


「そうだ。この柱には、村の歴史と人々の願いが込められている」


カオル:淡島の伝承と土地の再生


カオルは、村の近くの淡島神社を訪れていた。


「イザナギとイザナミが最初に生んだ子は“水蛭子”で、葦の船に乗せて流された。その後に淡島が生まれた、と言い伝えられてるんだ」


地元の女性が語る。


「淡島は“流された子”の島。昔、大水害があったとき、島の祠に新しい柱を建てて、土地の再生を祈ったのよ」


カオルは、祠の前で手を合わせる。


「神話の失敗ややり直しが、現実の災害や再生とつながってるんだな……」


レナ:ネットで集まる“島”の伝承


レナはSNSで「#国生み」「#御柱」「#淡島」などのタグを追い、全国の“島”や“柱”にまつわる伝承を集めていた。


「日本各地に“オノゴロ島”や“淡島”と呼ばれる場所がある。

どこも、地震や津波、噴火の記憶と結びついてるんだ」


フォロワーから次々と情報が寄せられる。


「うちの町でも、御柱祭のあとに大きな地震があった」「淡島神社は水害の守り神です」


レナは、現実の地形と神話がネットでつながっていくことに、時代を超えた“国生み”の力を感じていた。


サラ:舞と柱の巡り


サラは、舞の師匠とともに御柱を巡る神事に参加していた。


「この舞は、イザナギとイザナミが柱を巡り、国を生んだ所作を再現しているのよ」


師匠が静かに語る。


「災害や疫病のあと、村人は舞と柱の巡りで“再生”を願ってきた。

国生み神話は、ただの昔話じゃない。今も土地と人を結ぶ祈りなの」


サラは舞いながら、柱に手を添え、土地の記憶と神話の息吹を感じていた。


仲間たちの共鳴


その夜、仲間たちはオンラインで調査の成果を語り合った。


カナエ「御柱や島の伝承は、災害や再生の記憶と重なってる。神話が土地の歴史になってるんだね」


涼太「柱を巡る儀式は、村の再生や命の祈りそのものだった。神話と現実が一つになってる」


カオル「失敗ややり直しも、神話の大事な部分なんだ。現実の再生の物語とつながってる」


レナ「ネットで全国の“島”や“柱”の伝承が集まってる。神話が今も生きてる証拠だね」


サラ「舞や祭りも、国生みの祈りを今に伝えてる。土地と人をつなぐ力を感じた」


悠馬が静かに言う。


「神話の“国生み”は、過去の出来事じゃない。今も、土地と人の再生の物語として生きているんだ」


こうして、仲間たちは“国生み”の謎を追いながら、

神話と現実が重なり合う日本列島の深層に、そっと手を伸ばしていた。

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