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80話 新たな橋の誕生――選択の果てに

梅雨明けの雷鳴が響く夜、仲間たちの決断が波紋を広げる中、町の中心部で異変が起きた。

「記憶の橋」のメンバーがそれぞれの場所から駆けつけた先には、地面が裂けた直径十メートルの陥没穴――

その底からは、古い石組みの祭壇と、蛇の鱗のような文様が刻まれた青銅の剣が現れていた。


カナエ:禁断の書庫の真実


カナエが封印された巻物を広げると、地下から轟音が響き渡った。

「この地図……江戸時代の大火事の原因は、アラハバキ神を封印した反動だった!」

真由が震える指で陥没穴を指さす。

「ほら! 巻物に書かれた『地脈の蛇』の絵とそっくり……」


その時、地面が再び揺れ、祭壇から青白い光が噴き上がる。

カナエは仲間たちに叫んだ。

「神話は隠すものじゃない! みんなで真実と向き合わないと――」


涼太:龍神伝承の検証


開発予定地で地質調査を行う涼太の元に、村の老人が駆け込んできた。

「お前の言う通りだった……祠の下には花崗岩の断層が!」

建設業者のリーダーが無線で叫ぶ。

「全員避難しろ! 地滑りの前兆だ!」


涼太は測定器の数値を見つめ、決意を込めて宣言する。

「この断層こそ『龍神の背骨』です! コンクリートで固めるのではなく、伝承通りに鎮魂の儀式を――」


カオル:科学と神の調和


石灰を撒いた畑で、カオルが村人たちを集めていた。

「見ろ! 一週間で微生物が復活した! データは嘘つかねえ」

長老が土を握りしめ、涙ぐむ。

「だが……この豊作は蛇神の加護でもある」


カオルは銀の指輪を光らせて笑った。

「ああ、オレたちは神様と科学の『橋』になったんだ。これから毎年、収穫祭と土壌検査を両方やろうぜ!」


レナ:デジタル幽霊の正体


廃病院の地下で、レナが朽ちたサーバーラックを発見する。

「『デジタル幽霊』の正体は……震災で消えた人々の記憶データ!?」

GoProの画面に謎の波形が映る。

「これは……津波の前に海底で録音された『地鳴り』の周波数!?」


突然、天井が崩落し始める中、レナはSDカードを握りしめて叫ぶ。

「生きて帰って、みんなに真実を伝える……!」


サラ:鏡の中の啓示


文化センターの鏡の前で、サラが神楽の舞を奉納していた。

「岩戸開きの儀式を再現します。どうか光を――」

鏡面が虹色に輝き、古代の情景が浮かび上がる。

「見て! イザナギとイザナミが国生みの矛を振るう姿が……」


館長が驚愕する。

「これは江戸時代の大火事の夜、巫女が踊った『鎮魂の舞』だ!

あなたは本当に『記憶の橋』の継承者なのか!?」


決戦:地脈の蛇


陥没穴の底で仲間たちが集結する。

悠馬が青銅の剣を掲げて叫ぶ。

「これは『アラハバキ』の御神体だ! 古代の地震鎮めの剣を、現代の技術で補強するんだ」


カナエが巻物を広げ、涼太が地質データを投影。

「地脈のエネルギーを分散させるには、東側の断層にコンクリート杭を――」

「いや、伝承通りに柳の木を植えるべきだ」

サラが鏡をかざす。

「神話と科学、両方の知恵を合わせましょう」


その時、地面が激しく揺れ、巨大な岩が落下してくる。

レナが叫ぶ。

「データ通り、あと3分で本震が来る!」

カオルが石灰袋を投げつける。

「オレが時間を稼ぐ! みんなは剣を祭壇に戻せ!」


新たな橋の誕生


雷鳴轟く中、仲間たちがそれぞれの力を結集する。

カナエが古代文を解読し、涼太が地質図を修正。

サラの舞で鏡が輝き、レナのデータが災害予測を更新。

カオルが石灰で地盤を固め、悠馬が剣を祭壇に突き立てる――


「「「記憶の橋、架橋――!!」」」


青白い光が収束し、地鳴りが静まる。

崩落した岩の隙間から朝日が差し込み、

祭壇の剣は現代の合金で補強され、

柳の苗木が植えられた新しい地層の上に立っていた。


選択の果てに


一週間後、町の広場で記者会見が開かれる。

カナエがアラハバキ神の巻物を公開。

「神話を隠すことで失った命がある。真実こそが未来を守る」

涼太が地質データを示す。

「伝承には科学的真実が、科学には神話的英知が宿る」

サラが鏡を掲げ、レナがSNSの反響を報告。

「全国から『記憶の橋プロジェクト』への参加希望が……」

カオルが石灰袋を放り投げて笑う。

「てめえら、神様もデータもびっくりさせてやるぜ!」


悠馬が静かに締めくくる。

「僕たちは『選択の刻』を超えた――

次は世界の神話と現実の橋を架ける番だ」


人々の拍手が鳴り止まぬ中、仲間たちは視線を交わした。

彼らの背後では、柳の若葉が初夏の風に揺れ、

青銅の剣が静かに未来を見据えていた――。

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