55話 「過去と現在をつなぐ“橋”の発見」
初夏の朝、仲間たちは地方の山間部にある古代遺跡を訪れていた。
“記憶の橋”プロジェクトの一環として、実際に神話の現場を巡り、過去と現在をつなぐ手がかりを探す調査だ。
カナエが、苔むした石碑の前で目を輝かせる。
「見て、これ! 石碑に不思議な模様が刻まれてる。もしかして、これが“神代文字”ってやつじゃない?」
涼太が手帳を取り出し、慎重に観察する。
「神代文字……漢字伝来以前の日本にあったとされる古い文字体系だよね。学術的には否定されてるけど、江戸時代や近世には“発見”されたって話も多い。例えば阿比留文字やカタカムナ文字なんかが有名だ[1][2]。でも、実際には偽作説が強いんだ」
レナがスマホで検索しながら補足する。
「でも、こうして現地で見ると、何か意味がある気がしてくるよね。神話や伝承が、現代に残した“形”かもしれない」
サラが、静かに石碑に手を触れる。
「私たちの家にも、こういう不思議な文字が記された巻物があった。母は“これは祖先が未来に託したメッセージ”だって言ってた。“記憶の橋”って、こういう過去からの贈り物を、今の私たちがどう受け止めるかにかかってるのかもしれない……」
カオルが、石碑の周囲を調べながら言う。
「この場所、昔は村の人たちが祭りをしたって記録が残ってる。神話の現場って、ただ伝説が語られるだけじゃなくて、現実の人々の“祈り”や“願い”が積み重なった場所なんだな」
悠馬が、石碑の模様をノートに写し取りながら語る。
「もしこの文字が本当に神代文字だとしたら、解読できれば何か新しい発見があるかもしれない。たとえ学術的に否定されていても、僕たちが感じた“つながり”や“想い”は、今を生きる人たちにとって大切な意味を持つと思う」
カナエが明るく声を上げる。
「そうだよね! 過去の神話や伝承が、現代の希望や知恵として生き返る瞬間を、私たち自身が作っていけるんだよ!」
その後、仲間たちは遺跡の近くにある古い橋を訪れた。
そこには“記憶の橋”と刻まれた小さな銘板が残されていた。
レナが感慨深げに呟く。
「この橋、昔は村人たちが祭りのたびに渡ったって。過去と現在、そして未来をつなぐ“象徴”だね」
サラが、橋の上でそっと目を閉じる。
「私たちも、この橋のように、過去から未来へ“想い”をつなぐ存在になれたらいいな……」
仲間たちは橋の上で手を取り合い、静かに誓い合う。
悠馬が、みんなに向かって言う。
「僕たちの“記憶の橋”は、ここから始まる。神話や歴史、そして今を生きる僕たち自身の物語を、未来へつなごう」
カナエが笑顔で応える。
「うん! この場所も、私たちの新しい出発点になるね!」
こうして“記憶の橋”は、過去と現在、そして未来をつなぐ本当の“橋”として、静かにその第一歩を踏み出した――。




