表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/101

53話 「“記憶の橋”プロジェクト始動」

晴れた土曜の午後、大学のセミナールーム。“記憶の橋”の仲間たちは、ホワイトボードを前に円陣を組んでいた。


カナエが、緊張した面持ちで口火を切る。


「ねえ、私たち、このまま神話や歴史の話を自分たちだけで終わらせていいのかな? せっかく色んなことを知ったのに、現実の社会には何も還元できていない気がするんだ」


涼太が、ノートパソコンを開きながら熱を込めて応じる。


「僕も同じこと考えてた。神話や伝承って、ただの昔話じゃなくて、現代の社会問題にもヒントをくれると思う。たとえば、災害の伝承は防災意識につながるし、分断や孤独の問題には“和解”や“共生”の神話が役立つはずだよ」


サラが、少しだけ不安げに口を開く。


「でも、どうやってそれを形にすればいいの? 私たちに何ができるのか、まだ見えてこない……」


カオルが、腕を組んで真剣な表情で言う。


「まずは身近なところから始めてみよう。たとえば、地域の子どもたちや高齢者に神話や昔話を語る会を開くとか。祭りや行事に参加して、神話のエピソードを現代の意味で伝えていく。小さなことでも、誰かの心に残れば十分だと思う」


レナが、スマホで資料を検索しながら提案する。


「SNSや動画配信も使えるよ。神話や歴史の知恵を分かりやすく現代語訳して発信したり、現代の悩みと神話の教訓を結びつけてみたり。若い世代にも届くような“記憶の橋”を作りたい」


悠馬が、みんなの顔を見回しながらゆっくり語る。


「僕たちが体験した神話の世界には、困難に立ち向かう勇気や、違いを認め合う寛容さ、自然や命への畏敬があった。それを現代の社会問題――たとえば災害や分断、喪失感――にどう活かせるか、みんなで考えていこうよ」


カナエが明るく手を叩く。


「“記憶の橋”プロジェクト、始めよう! まずは地域のワークショップと、SNSでの発信からやってみない?」


サラが、少しずつ笑顔を取り戻しながら頷く。


「うん。私も、自分の家系や神話の知識を、誰かの希望や力にできたら嬉しい。みんなと一緒なら、きっとできる気がする」


こうして、“記憶の橋”プロジェクトが静かに動き出した。

過去の神話や伝承は、現代の希望や知恵として、少しずつ社会に広がり始める――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ