45話 「スサノオと出雲の国づくり」
ヤマタノオロチ退治の大業を果たしたスサノオは、出雲の大地に新たな息吹をもたらした。
“記憶の橋”の面々は、出雲の山々に響く神話の余韻に包まれながら、その後の物語を幻視していた。
カナエが、しみじみと語る。
「……スサノオはただの荒ぶる神じゃなかったんだね。ヤマタノオロチを倒した後、この地に平和と豊穣をもたらした。出雲の国造りの始まりだよ」
涼太が古文書を手に、熱を込めて続ける。
「出雲国風土記には、スサノオが飯石郡や安来郷などに地名を与えたって記録がある。たたら製鉄の伝承も残ってるし、スサノオは製鉄や開拓の神としても崇められてきたんだ。彼の子孫には大国主命もいる。つまり、出雲の国の礎を築いた祖神なんだよ」
レナがタブレットで出雲大社の写真を映しながら補足する。
「出雲大社や須佐神社には、今もスサノオが祀られている。神話の中では荒々しいけど、風土記では安来の郷で“心が安らいだ”と伝えられているの。追放された神が、異郷で新しい秩序を築き、平和をもたらす……それが出雲神話の本質なんだね」
カオルが護符を握りしめ、静かに言う。
「スサノオの物語は、破壊と創造の両方を意味してるんだな。暴風雨や災厄の神だった彼が、最後は土地を癒し、豊穣をもたらした。人もまた、苦しみや孤独を越えて、新しい世界を築くことができるってことかもしれない」
スサノオが、出雲の民に向かって語りかける。
スサノオ「我は高天原を追われ、幾多の苦難を越えてこの地に至った。だが、ここで新しい国を築き、子孫に未来を託す。オオクニヌシよ、お前にこの国を任せる。人々を守り、豊かな大地を育んでくれ」
オオクニヌシ「父上、必ずやこの地を守り抜きます。あなたの意思と力を継ぎ、出雲を平和と実りの国にします」
“記憶の橋”の面々は、出雲の神話が現代まで続くことに思いを馳せる。
悠馬が静かに言う。
「スサノオの物語は、ただの神話じゃない。土地の人々の祈りや苦しみ、再生への願いが込められている。だからこそ、今も出雲の祭りや信仰に生き続けているんだ」
カナエが微笑みながら頷く。
「追放と再生、苦しみと希望……神話は、私たちの人生そのものだね」
出雲の大地に、静かな朝日が差し込む。
スサノオの魂は、国づくりの神として永遠にこの地に息づいている――。




