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42話 「追放の真実――高天原から出雲へ」

高天原――日高見国の宮殿には、重苦しい沈黙が広がっていた。

スサノオの暴走は、ついに神々の怒りを買い、追放の決定が下される。

“記憶の橋”の面々は、縄文の森に響く風の音とともに、神話の決定的な瞬間を幻視していた。


カナエが、胸を締めつけるように呟く。


「……スサノオは、どうしてここまで孤独なんだろう。ムーの血を引く者として、日高見国で異端視されたのかな……」


涼太が古文書を手に、熱を込めて語る。


「高天原=日高見国は、ムーの民と縄文の民が融合してできた祭祀国家だった。でも、スサノオの“荒ぶる魂”は、時に秩序を乱し、神々の不安を煽った。彼の暴走は、古い血と新しい秩序の衝突だったのかもしれない」


レナがタブレットで地図を映しながら補足する。


「スサノオは、日高見国の北辺――今の東北地方や関東の外れに追いやられたという伝承もあるわ。けれど彼は、そこからさらに海を越えて朝鮮半島へと渡り、新羅の地で新たな力を蓄えたの」


カオルが護符を握りしめ、低く呟く。


「追放って、単なる罰じゃないよな。神話のスサノオは、異郷で力を磨き、やがて出雲に“降臨”する。そこには、ムーの記憶と日高見国の誇り、両方を背負った新しい物語が始まるんだ」


高天原の神々が集い、評議が始まる。

アマテラスが厳粛に宣言する。


アマテラス「スサノオよ、汝の所業はもはや看過できぬ。田畑を荒らし、機織り小屋を壊し、民の心を乱した。高天原の秩序を守るため、ここから去れ!」


スサノオが叫ぶ。


スサノオ「姉上、なぜだ! 俺はムーの記憶を、この国に伝えたかっただけなのに……。誰も俺の心を分かってはくれぬのか!」


アマテラスが静かに目を伏せる。


アマテラス「お前の孤独も悲しみも、分かってやれなかったかもしれない。だが、国を守るため、断腸の思いでこの決断を下す。去れ、スサノオよ。新たな地で、お前自身の道を見つけよ」


“記憶の橋”の面々は、神話の場面に胸を締めつけられる。


悠馬が静かに言う。


「スサノオの追放は、ムーの民が日高見国からさらに西へ、新しい土地を求めて旅立つ物語でもあるんだ。神話の追放劇は、実は大きな文化の移動や変革を象徴しているのかもしれない」


カナエが涙ぐみながら呟く。


「きっと誰の心にもある“理解されたい”って願いが、神話の中でこんな形になったんだね……」


涼太が古文書を掲げて締めくくる。


「スサノオは、朝鮮半島を経由して出雲に降り立つ。ムーの記憶と日高見国の誇りを胸に、新たな神話を刻むために――」


スサノオは、涙をこらえながら高天原を後にする。

その背中に、北風が唸り、遠い海の波音が重なった――。

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