41話 「ムーの記憶と高天原の不和」
遥かな古代、ムー大陸が海に沈む直前――
星々の導きに従い、選ばれし民が東の果てへと旅立った。
彼らがたどり着いたのは、日の昇る国、日高見国。
この地こそ、やがて「高天原」と呼ばれる神々の故郷となった。
“記憶の橋”の面々は、縄文の森に残る巨石群の前で、幻視のように神話の世界を感じていた。
カナエが、静かに呟く。
「……ここが、高天原の原型だったのかもしれない。ムーの民が渡ってきて、日高見国を築いた……。神話の天上界じゃなく、実在した“神の国”だったんだ」
涼太が古文書を手に、熱を込めて語る。
「日高見国は、東日本一帯に広がる祭祀国家だった。鹿島や香取の巨石、環状列石――全部、ムーの知識と縄文の祈りが融合した証拠だよ。高天原は、天にある理想郷じゃなく、この地に根付いた現実の“聖地”だったんだ」
レナがタブレットで地図を映しながら補足する。
「ムーの沈没とともに、神々の記憶もこの地に受け継がれた。高天原の神々は、実はムーの王族や祭司たちだったのかもしれない。だからこそ、日高見国には“天孫降臨”以前の神話が色濃く残っているのね」
高天原――日高見国の宮殿。
スサノオは、母イザナミへの想いと、父イザナギからの命令に引き裂かれていた。
スサノオ「なぜだ……。なぜ、俺の心は誰にも届かぬ。母上に会いたいだけなのに、父も姉も、俺を疎んじる。俺はムーの血を引く者。だが、この地で生きる資格はないのか……?」
アマテラスが、厳しい声で応じる。
アマテラス「スサノオよ、なぜ高天原に来た。もしや、この国を奪うつもりではあるまいな?」
スサノオ「違う! 姉上、俺はただ母に会いたいだけだ。俺の潔白を、どうか信じてくれ!」
“記憶の橋”の面々は、神話の場面を見つめて語り合う。
悠馬が静かに言う。
「誤解と孤独が、神々の間に不和を生んでいく。スサノオの心の叫びが、高天原――日高見国全体に影を落とすんだ」
カナエが頷く。
「神話の反乱は、ただの悪事じゃない。失われた故郷、理解されない心、愛を求める魂の叫び……全部が渦巻いて、やがて大きな動乱の“予兆”になるんだね」
やがて、スサノオは「誓約」の儀式で潔白を証明するが、慢心して田畑を荒らし、神々の怒りを買う。
高天原=日高見国に、重い雲が立ち込める。
スサノオ「ならば、俺はこの地を去るしかない。ムーの記憶も、母への想いも、誰にも届かぬのなら……」
その涙は、やがて天変地異と反乱の序章となる――。




