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28話 「白鳥伝説と神代文字の目覚め」

武甲山での発見から数日後、悠馬たちは関西へと向かった。目的は、ヤマトタケル最期の地・能褒野と、白鳥伝説の痕跡をたどることだった。

車窓から見える伊勢の山並みは、どこか神秘的な気配を漂わせていた。


カナエが地図を広げ、静かに語る。


「能褒野は、ヤマトタケルが東征の帰り道、伊吹山で傷を負い、命尽きた場所。『日本書紀』や『古事記』にも記されているわ。ここで彼は、故郷の大和を偲ぶ歌を詠んだの」


涼太が古文書を開き、熱を込めて続ける。


「“倭は国のまほろば たたなづく青垣 山籠れる 倭し麗し”……。英雄が最期に残したのは、剣でも武勲でもなく、魂の奥底から湧き上がる祈りの歌だった。神代文字で刻まれたこの歌は、今も残されているんだ」


レナがタブレットで伝説地を示しながら言う。


「能褒野の他にも、白鳥となったタケルが舞い降りたと伝わる地がいくつもある。大和の琴弾原、河内の古市、そして尾張の地……。それぞれに“白鳥神社”や“白鳥塚”が建てられているの」


カオルが護符を握りしめ、遠くを見つめる。


「古代日本じゃ、鳥は魂の象徴だった。特に白鳥は、天に昇る神聖な霊鳥。死者の魂が鳥となって旅立つ――それが“白鳥伝説”の本質だ。タケルの魂も、祈りとともに空を翔けたんだな」


悠馬は、能褒野の静かな丘に立ち、手の石板を見つめた。

石板の神代文字が、淡く光り始める。


その瞬間、夢の中で聞いたタケルの声が、現実に重なる。


「私は、国のために命を削り、ついには白鳥となって天に昇った。だが、魂は未だにさまよっている。お前たちの時代に、神代文字の“未来”を託す。記憶の橋となり、希望をつなげ」


悠馬がそっと石板をなぞりながら呟く。


「タケルの魂も、祈りも、神代文字に刻まれている。英雄の遺志を、僕たちが現代へと受け継ぐんだ」


アレックスが感心して言う。


「世界の神話でも、魂が鳥になる話は多いけど、日本の“白鳥伝説”は、英雄の魂を悼む人々の祈りが土地に根付いた証なんだな」


レナが資料を見つめながら続ける。


「白鳥伝説は、ただの神話じゃない。各地の神社や古墳、地名にまで刻まれてる。英雄の魂を忘れないために、人々が祈りを重ねてきたのよ」


カナエがしみじみと言う。


「神代文字で綴られた歌や祈りは、時を越えて魂を癒し、未来へと希望を託す“橋”になる。私たちも、その祈りを受け継いでいく……」


涼太が古文書を掲げて締めくくる。


「ヤマトタケルの白鳥伝説、神代文字の歌。どちらも、失われた魂を未来へつなぐ“継承”の証だ。僕たちが“記憶の橋”となり、祈りの歌を現代に響かせよう!」


悠馬は石板を胸に、仲間たちと誓う。


「タケルの魂、神代文字の祈り――必ず未来へと受け継いでみせる!」


能褒野の風に、白鳥の羽が一枚、静かに舞い降りた。

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