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26話 「英雄の孤独と神の契約」

能褒野の古墳を後にした悠馬たちは、伊勢路を北へと進んだ。

道中、彼らはふと立ち寄った山間の神社で、苔むした石碑と、奇妙な神代文字が刻まれた木札を見つける。


カナエが木札を手に取り、目を凝らす。


「この文字……阿比留草文字? いや、どこか違う。神代文字の一種なのは間違いないけど、まるで“契約書”みたいな構成になってる」


涼太が古文書を取り出し、熱心に調べる。


「ここは大御食神社――ヤマトタケルが東征の帰路に立ち寄ったという伝説がある神社だ。社伝には神代文字で記された由来が残ってる。景行天皇48年創建って……考古学的には無理があるけど、伝説の力は侮れない」


レナがタブレットで情報を検索し、画面を見せる。


「長野や関東にも、ヤマトタケルが甲冑や剣を岩に納めたという伝説が点在しているわ。武甲山の岩に神代文字を刻んだ話も有名。『唐の文字なき折からなれば、巌の面に御手鉾を以て神代の文字をきりつけたまひてあり』って記録が残ってる」


カオルが木札を手に、静かに呟く。


「契約……神と人、英雄と未来。その証を神代文字で残すことで、祈りも誓いも、時代を超えて伝わる。“忘却”に抗う最後の砦だな」


そのとき、悠馬の手の石板が淡く光り始める。

夢の中で、ヤマトタケルの姿が再び現れる。


タケルは静かに語りかける。


「私は、父に疎まれ、都を追われ、戦に明け暮れた。だが、最期まで守りたかったのは、国の安寧と人々の絆だった。神器・草薙剣と共に、私は神々との“契約”を交わした」


悠馬が問いかける。


「その契約とは……?」


タケルは深く頷く。


「剣の力は、ただの武力ではない。神々の御魂が宿り、正しき心と祈りを持つ者に力を貸す。だが、慢心すれば加護は離れる。私は、神代文字で“契り”を記し、後の世に託した。忘却されぬように、魂の証を残したのだ」


アレックスが感心して言う。


「神話の英雄が、武力だけじゃなく“契約”や“祈り”で国を守ろうとしたなんて、すごい話だな。現代の俺たちにも通じるものがある」


レナがタブレットを見つめ、呟く。


「神代文字は、ただの記録じゃない。祈りや誓い、魂の約束を未来へ伝える“鍵”だったのね」


カナエがしみじみと言う。


「タケルの孤独も、契約も、すべてが神代文字に込められている。私たちも、その証を受け継いでいく……」


涼太が古文書を掲げて締めくくる。


「英雄の遺志、神代文字の契約。どちらも、失われた魂を未来へつなぐ“橋”だ。僕たちが“記憶の橋”となり、タケルの誓いを現代に刻もう!」


悠馬は石板を胸に、仲間たちと誓う。


「タケルの魂、神代文字の契り――必ず未来へと継承してみせる!」


山の風に、白鳥の羽が一枚、静かに舞い降りた。

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