表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/19

12話 「黒き炎の継承者たち」

東京の夜は、どこか不穏な熱気に包まれていた。

悠馬は、信頼できる仲間たちと新たな拠点――大学近くの古いマンションの一室に集まっていた。

小林はパソコンで監視カメラの映像を解析し、カナエは都内の動向をネットワークで追っている。


「先生、昨日の“縄文の仮面”盗難事件、やっぱり“カグツチの末裔”の仕業みたいです。現場で“火”の紋章が見つかったって」


小林が画面を指差す。

カナエが、冷静な声で続ける。


「彼らは“火”を象徴にしている。日本神話でカグツチは火の神、誕生と同時に母を焼き殺し、父に斬られた――その血から新たな神々が生まれた。彼らは“再生”と“破壊”の両方を信奉しているのよ」


その時、部屋のドアがノックされた。

現れたのは、悠馬の大学時代の友人で民俗学専攻の三宅涼太、そして若きITセキュリティの天才城崎レナだった。


「新田、久しぶり。カナエさんに呼ばれて来たけど、なんだか面白そうなことになってるな」


涼太は、屈託のない笑顔で言う。

レナはノートPCを抱え、クールな表情を崩さない。


「“カグツチの末裔”の通信を傍受したわ。彼らは“夢の門”と呼ばれる儀式を計画している。場所は……都心の地下神殿跡」


悠馬が驚く。


「地下神殿……まさか、あの戦前に封印されたという“江戸の迷宮”?」


レナが頷く。


「都心の地下には、古代の祭祀施設や謎の空間がいくつもある。彼らはそこを“門”として開こうとしているの」


カナエが資料を広げる。


「“夢の門”は、ムーの記憶と現実を繋ぐ“通路”でもある。もし彼らが門を開けば、古代の力が現代に流れ込むかもしれない」


その時、スマートフォンが震えた。

【サラ】からのメッセージ。


「先生、今夜また夢を見ました。黒い炎に包まれた東京タワー、仮面をつけた男が“カグツチの名のもとに”と叫んでいました……」


涼太が、興味津々で聞く。


「“カグツチの末裔”って、どんな連中なんだ?」


カナエが、低い声で答える。


「リーダーは“火野烈ひの・れつ”。表向きは大手不動産グループの御曹司で、裏では新興宗教組織の教祖。“火の浄化”を掲げ、過激な信者を従えている。彼の右腕が“香月沙羅こうづき・さら”――元考古学者で、古代文明の力に取り憑かれた女性。冷静で知的だが、目的のためなら手段を選ばない」


レナが補足する。


「さらに、“火守ひもり”と呼ばれる精鋭部隊がいる。彼らは火災や災害現場で暗躍しているらしい」


悠馬は、胸の奥にぞわりとした不安を感じた。


「……火野烈、香月沙羅、火守。彼らが“夢の門”を開けば、何が起きるんだ?」


涼太が真顔で言う。


「古代の神話じゃ、火の神カグツチの死から新たな神々が生まれた。現代で門が開けば、“破壊”と“再生”の大きな波が東京を襲うかもしれない」


カナエが、悠馬の肩に手を置く。


「新田さん、あなたは“記憶の橋”。彼らの儀式を阻止できるのは、ムーの記憶を受け継ぐあなたしかいない」


悠馬は、仲間たちの顔を見渡した。


「……僕たちで、“夢の門”を守ろう。ムーの記憶も、島の祈りも、東京の未来も、全部守りたい」


レナが、ニヤリと笑う。


「任せて。地下神殿のセキュリティは私が突破する。涼太は民俗学の知識で“門”の封印方法を調べて」


涼太が親指を立てる。


「了解! 神話と都市伝説のプロの腕の見せどころだな」


カナエが、資料を鞄にしまいながら言う。


「私はメディアと警察に根回しして、表沙汰にならないよう動くわ」


小林も、力強く頷いた。


「僕は監視カメラとネットワークで、敵の動きをリアルタイムで追うよ!」


悠馬は、胸の奥に新しい決意が宿るのを感じた。


「みんな、ありがとう。僕たちの“記憶の橋”チームで、東京の夢の門を守ろう!」


その夜、都心の地下に“黒き炎”が蠢き始めていた――。




都心の地下神殿跡をめぐる作戦会議は、夜更けまで続いた。

レナが大型ディスプレイに地下鉄路線図と古地図を重ねて映し出す。


「“夢の門”とされる場所は、旧江戸城下の地下――今は立入禁止の廃駅“銀座零番線”の奥にある可能性が高い。火野烈たちは、今夜そこに集結するつもりよ」


涼太が興奮気味に身を乗り出す。


「都市伝説で有名な“幻の銀座零番線”か! まさか本当に儀式に使われるなんて……」


小林がネットワーク監視画面を指差す。


「火守の一団が、都心の地下変電所にも動き始めてる。都市インフラを“火”で制圧するつもりかもしれない」


カナエが、真剣な表情で皆を見渡す。


「火野烈は“火の浄化”を掲げているけど、実際は自分のカリスマ性を最大限に利用したいだけ。彼の演説動画、SNSでバズってるわ。“新しい時代の神になる”って……」


その時、部屋のインターホンが鳴った。

レナがカメラ映像で確認し、ドアを開ける。


「……あんたたちが“記憶の橋”チームか?」


現れたのは、派手な銀髪にピアス、和装に革ジャンを羽織った青年――神楽坂カオル。

その後ろには、長身で筋肉質な黒人青年――アレックス・ジョーンズが控えている。


「俺は神楽坂カオル。下町の陰陽師の家系で、霊感と占術が得意だ。火守の一部と因縁があってな。こっちはアレックス、元米軍の特殊工作員で今はフリーのボディガードだ」


アレックスが流暢な日本語で微笑む。


「悠馬さん、あなたのことは噂で聞いてます。僕は“火”の力に興味があってね。仲間に入れてくれないか?」


涼太が目を丸くする。


「陰陽師と特殊部隊!? なんか一気にパーティ感が増したな!」


カナエが冷静に尋ねる。


「カオルさん、なぜ私たちを?」


カオルが懐から古びたお札を取り出す。


「火野烈の組織は、古代の“火の呪”を現代に蘇らせようとしている。俺の家系はそれを封じる役目だった。アレックスは、火守の一人に命を救われた過去がある」


アレックスが真剣な表情で続ける。


「火守の中には、烈のやり方に疑問を持つ者もいる。僕は“力”より“記憶”を大事にしたい。あなたたちとなら、未来を守れると思った」


悠馬は、仲間たちの顔を見渡し、深く頷く。


「歓迎するよ。僕たちは“記憶の橋”――過去と未来を繋ぐために集まった。力も知恵も、全部必要だ」


その頃、地下神殿跡では――


火野烈が、黒い法衣に身を包み、信者たちを前に炎のような演説を繰り広げていた。

「我ら“カグツチの末裔”は、古き束縛を焼き払い、新たな時代を創る! “夢の門”を開き、ムーの力を現代に蘇らせるのだ!」


その隣に立つのは、冷ややかな瞳の女性――香月沙羅。

彼女は悠馬の論文を読み込み、ムーの知識を逆手に取って儀式を設計していた。


「烈様、準備は整いました。地下の“火の祭壇”に、石板と仮面を捧げれば、門は開きます」


烈が不敵に笑う。


「面白い。だが、悠馬――“記憶の橋”の男が現れるのを待とう。彼こそが、儀式の“鍵”になる」


沙羅が鋭く言い返す。


「彼は危険です。ムーの記憶を守る者……油断は禁物です」


烈が炎のような視線で囁く。


「危険こそ、時代を動かす触媒だ。さあ、門を開く時が来た!」


――その夜、悠馬たちは地下神殿跡へ向かう準備を整えた。

カオルが護符を配り、レナが地下のセキュリティをハッキング、アレックスが装備を点検する。


小林が緊張した声で言う。


「先生、敵は本気です。でも、僕たちならきっと……!」


カナエが微笑む。


「“記憶の橋”チーム、出発よ!」


東京の地下に、夢と現実を繋ぐ“門”が、静かに開かれようとしていた――。



新キャラクター紹介

- 三宅涼太:民俗学専攻。明るく社交的で都市伝説や神話に詳しい。行動力と好奇心が武器。

- 城崎レナ:ITセキュリティの天才。クールで頭脳明晰、ハッキングや情報収集が得意。

- 火野烈:「カグツチの末裔」のカリスマ的リーダー。カリスマ性と破壊衝動を併せ持つ危険な男。表向きは実業家、裏では過激な信仰者。

- 香月沙羅:火野烈の右腕。元考古学者で、冷静沈着。古代文明の力を現代に蘇らせることに執念を燃やす。

- 神楽坂カオル:下町の陰陽師の家系。霊感と占術の達人。派手な外見と江戸っ子気質。

- アレックス・ジョーンズ:米国出身の元特殊部隊員。火守の一人に命を救われた過去を持ち、正義感と肉体派の頼もしさを併せ持つ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ