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「カルロッタ。貴方、本当に聖女の木について祈ったの? 国境付近の魔獣について祈ったのではなくて? 」
母の言葉通り、私が祈ったのは国境付近の魔獣についてだ。
だが、私が何について祈ろうと聖女ではないのだから関係ない。
「……いえ、私が祈ったのは聖女様の木についてです」
魔獣について祈った事は言わずにいた。
「……そう……」
どこか納得していない母だったが、渋々去って行く。
「カルロッタ」
母の確認が終わると、今度は父に呼び止められる。
「はい」
「教会で何について祈った? 」
父からも同じ質問を受けた。
「王宮に植えてある聖女様の木について祈りました」
「……聖女の木? 雨が降るように祈ったんじゃないのか? 」
「はい、聖女様の木を祈りました」
「……そうか」
父も私が何について祈ったのか確認を終えると去って行く。
「どうしてそんなに気になるのかしら? 聖女はソレーヌなのだから、私ではなくソレーヌが何について祈ったのかを聞いたらいいのに」
ソレーヌのように両親に気に掛けてほしいと願った事はある。
だけどそれは幼い頃であり、しかも今の私ではない。
もう、両親に必要とされたいと思うことは無くなってしまった。
「そんなっ、ラウーレン伯爵令嬢が聖女候補だなんておかしいです。あの方にそんな能力があるなんて信じられないわっ。そんな素振り今までありませんでしたもの」
突然の報せにソレーヌは感情を抑えられず喚いている。
「カルロッタ、本当に貴方は国境付近の魔獣については祈っていないの? 」
「……はい、私は聖女様の木について祈りました」
何度も確認されるので本当の事を話そうか悩むも、今の両親に私を分かってもらおうという気力がない。
「魔獣について祈ったのは、ソレーヌではないのですか? 」
「私ですか? 」
母の追及が面倒になりソレーヌに話題を逸らしたかっただけなのだが、ソレーヌは素直にその言葉を受け取る。
そういうところが聖女の素直さなのかもしれない。
「ソレーヌではないわっ」
「お……母様? 酷いです。どうして私じゃないと断言できるんですか? 」
「あっ貴方は……日照りについて祈ったのでしょ? 」
「それは……そうですが……でしたら、お姉様だって一緒じゃないですかっ」
「カルロッタは貴方と違って……」
「私と違って……お姉様は何ですか? お姉様も日照りについて祈ったんですから私と一緒じゃないですかっ」
母とソレーヌの言い争いは続くので、私はそっと離れた。
どうして今回は国境付近の魔獣なのだろうか?
「ソレーヌは日照りについて祈ったと話していたのにどうして? 」
その後聞いたのだが、スカルキー地域の日照りはまだ続いているらしい。
「ソレーヌは能力に目覚めていないのかしら? 」