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二度と聖女は致しません  作者: 天冨 七緒
勝利の女神編
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「ヴィルヘルム卿……確認しました。どうぞ」


 許可がおり、会場へ。 


「席は決まっていない、主催者の挨拶の後は自由。食事はビュッフェスタイル。中央ではダンスホールで、ダンスは貴族流ではなく音楽に合わせて自由で構わない。騎士は貴族だがパートナーには平民もいる。平民の参加も理解しているので、この場での多少の無礼は目をつぶる。まぁ、無礼講だな。とは言うが、全て試合でやり返されるけどな」


 安心していいのか……

 それは結局、私の失態はヴィルが試合で受けるという事だよね?

 失敗は出来ない。

 ヴィルと並んで席に着くも、緊張して周囲ばかり見渡してしまう。

 

「ヴィルゥ、本当にその子を『勝利の女神』にするつもりなの?」


 隣のヴィル見れば、彼を後ろから抱きしめるようにシルビアの姿があった。

 

「俺のパートナーは彼女だ。シルビアも今日参加しているという事はパートナーがいるんだろう? 相手の元へ行った方が良いんじゃないのか?」


「んふ? 彼は今日の前夜祭に参加する為だけよ。私は『勝利の女神』になりたいの」


「それなら俺でなくても良いな」


「私はヴィルが優勝すると思っているわ」


「こちらに視線を送っているのがシルビアのパートナーなんじゃないのか? シルビアのパートナーが優勝する可能性だってあるだろう?」


 先程からこちらを凝視する一人の男がいた。

 彼がシルビアをパートナーに選んだ人だろう。


「彼? それはないわ」


 シルビアという女性は自身のパートナーである選手が勝利するのを信じていないことに驚く。


「俺だって分からないさ。勝負は時の運。何が起きても不思議じゃない。だから勝利の女神が微笑むって言うんだろう?」


「そうね。その為にも私が今からパートナーになっておいた方がいいんじゃないかしら? そこの人より私の方が貴方の勝利の女神に相応しいんじゃない?」


「俺はパートナーを変更するつもりはない。シルビア、先程からパートナーが待っているように見えるぞ」


 ヴィルへの嫉妬か、パートナーに蔑ろされた屈辱かは分からないが彼が苛つきをこちらに向けているのは伝わる。


「ん? そうね。そろそろ戻るわ。そうだ、ヴィル。サッシュを準備してあるの。今日、あなたのテントに行ってもいいかしら?」


「俺はサッシュを貰う相手も決めている。シルビアのサッシュは彼に贈るといい」


「……そう。私のサッシュが欲しくなったら、いつでも言ってちょうだい。待っているわ」


 シルビアはパートナーの元へ。

 

「わぁお……」


 振り返った彼女の後ろ姿に釘付けになり、声が漏れてしまった。

 今回のパーティーは、出場者の気分を高める為の前夜祭。

 本番は試合後の優勝者を主役とした後夜祭なので、そこまで服装に気合を入れている人は少ない。

 そんな中、シルビアのドレスは目を惹く。

 何故なら、彼女は背中がバックリ開いた魅力的過ぎるドレスを着用している。

 そのようなドレスを見たことがない訳ではないが、今回のパーティーでは誰も露出していないので彼女のドレスが奇抜に見えて仕方がない。

 自身の魅力を分かっていて、自信に満ちた人のみが着用する事が許されたドレス。

 私にあのドレスを着る勇気はない。

 あんな綺麗な人の誘いを遠ざけるヴィルは、もしかして国に婚約者や慕っている誰かがいるのかもしれない。

 ヴィルに婚約者の有無や慕っている人がいるかなんて聞ける関係ではないので、そのことには触れないよう気を付けようと思う。

 その後のパーティーは問題なく、私にとっては食事会のようだった。


「美味しい」


「以前も思ったが、ロッティは美味しそうに食べるな」


「ん? 美味しいですよ? ヴィルは苦手な味ですか?」


 準備された料理はどれも美味しいと思う。

 国によって味付けが異なるので、ヴィルにとっては苦手なのだろうか?

 私からすると過去に色々あり、あの家で食べるモノは一般的には美味しいのだろうが私は美味しいと思えなかった。

 この国に来てから食べるモノを美味しいと感じ、更に皆と食べると愉しいという事も知った。


「いや、どれも美味しいと思うが……ロッティが食べていると俺も食べたくなる」


「人が食べている姿は美味しそうに見えますよね。私もヴィルが食べている姿に見惚れちゃう時ありました」


「そうなのか?」


「はい、美味しそうで。私も食べたらやっぱり美味しかったです」


「そ、そうか」


 今日のも美味しいが、あの時食べた料理は本当に美味しかった。

 私とヴィルは料理に夢中だが、他の人はあまり料理を味わっているようには思えなかった。

 ダンスをしたり贈り物をしたり……

 贈り物?

 忘れてたっ


「あっ、そうだ。私これ、用意したんですよ」


 準備していたサッシュを渡す。

 ターナムに聞いたのだが、身に着けていた物を渡すとより効果的と聞きどうするべきか相談していた。

 その結果、私はヴィルが準備してくれたロングワンピースのベルトとしてサッシュを使用。

 リボンのように結んでいたサッシュを解きヴィルに手渡す。


「ありがとう、嬉しいよ」


 このタイミングで良かったのか分からないが、サッシュを渡すという私に与えられた任務は遂行。

 安心すると、より食べ物が美味しくなり沢山食べてしまった。

 腹部を圧迫していたリボンを解いたことも関係があるだろう。

 それに……ヴィルが、私が食べている姿に『俺も食べたくなる』と言ってくれたことも影響しているだろう。

 私はなんて、単純なのだろう。

 浮かれて食べていたが初めての前夜祭は、私にとって食事会で終わってしまった。

 後になって、ダンスをしたりしてヴィルの『女性避け』として選ばれた任務をするべきだったんじゃないかと反省した。

 過ぎてしまった事はどうにもできないので仕方がない。

 

 大会が始まる。


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― 新着の感想 ―
こんだけ袖にされてんのにアプローチ続けられる根性凄いな。 よっぽど自分に自信あるねんな。 会場に入るためのダシに使った男をぞんざいに扱っても、そいつは自分の不利になる事はしないと確信しているのか(自惚…
いきなり出てきた人について国出ちゃったのでもう過去話とか関係ない別のお話みたいに。。。
45話の旅立ち以降、カルロッタの心がほころんでゆく様子が手に取るように分かります。祖国のざまぁ‥じゃなくて、喜劇も見てて愉快ですが、鬱屈していた状態から緩んで花開いてゆくシーンも美しいですね。ヴィルと…
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