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〈記憶のある者〉
〈バルリエ公爵〉
分かった……
考えを改め、カルロッタをちゃんと可愛がる。
聖女であることを疑わない。
あの子の望む物を与える。
だから、この苦しみから解放してくれ。
頼む……
「うわぁっ……なんだ? 夢……なのか?」
王都から領地へ向かう馬車が転落し、炎を確認。
痛みや苦しみに襲われながら薄れゆく意識の中で、誰かの会話を耳にした。
『こんな奴らがいなければ聖女様は死なずにすんだのに……』
聖女だと認定されたソレーヌは、聖女ではなかった。
聖女ではないと判定されたカルロッタこそ、本物の聖女だった……という夢。
「間違った判断を下したのは教会と王家、私は巻き込まれただけじゃないか……」
あまりにも理不尽な夢。
「私は何も悪くない、王家と教会の判断に従ったに過ぎない」
国が災害に見舞われ困難に見舞われたのは、私の責任ではない。
それなのに民衆は聖女を死に追いやった我が家の責任だと押し付け、公爵家に雪崩れ込み私達は領地へ向かうはめに。
「なんなんだ、気分の悪い夢だ」
私からすれば、聖女がカルロッタでもソレーヌでもどちらでもいい。
王家と強固な繋がりさえできれば問題ない。
ソレーヌの方が王子の婚約者になる可能性が高いと思って優先していただけ。
カルロッタに利用価値があるのであれば、あれも優遇する。
見た目は悪くないのに、控えめ過ぎて魅力を発揮できていないカルロッタ。
それに比べると、ソレーヌは自身の魅力を理解し最大限に利用している。
そこを考慮しあれには色々と買い与えた。
周囲からの評価を得られるのであれば、利用価値も広がる。
「これからはソレーヌではなく、カルロッタも可愛がればいいだけのこと。今までは厳しくし過ぎたが、少し甘やかせば問題ないだろう。私はあの夢のように愚かな結末を迎えたりはしない」
二人を平等に扱う。
教会で聖女審査が行われるも、カルロッタの能力が認められず。
ソレーヌにも能力がないと判定された。
「あの夢は、本当にただの夢だったのか? まぁ、ソレーヌの散財をやめさせる事が出来たから良しとするか。カルロッタが聖女と判定されれば、万々歳だったんだがな……」




