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<記憶のある者>


 <シュルベステル・ザッカリー二>


「うわぁぁああ」


 悪夢で飛び起きた。

 貴族に囲まれ、多くの人間に剣を向けられ切られ……死……

 

「夢?」


 あまりにも現実的な夢。

 時間が経つにつれ、あれは予知夢だったのではないかと。

 

「今は、聖女が選ばれる前……」


 カルロッタ・バルリエが聖女ではないかと判断される。

 その後、ソレーヌが『自分こそ聖女』と訴える。


「今度は惑わされない」


 あの女の虚言に騙され私は間違った選択をした。

 その結果、国は混乱……そして私は……


「同じことはしない……カルロッタ、私は今度こそ君を幸せにする」


 そう決意するも、夢とは違う現実。


「カルロッタが聖女候補ではない? ソレーヌが聖女候補?」


 おかしい。

 ソレーヌに祈りの力はない。

 教会に確認するも、カルロッタはラウーレン地方について『祈っていない』の一点張り。

 

「あの夢は予知夢ではないのか?」


 予知夢ではラウーレン地方の魔獣ではなく、スカルキー地方の日照りだった。

 聖女候補となった令嬢達を確認するも、カルロッタの氏名はなく。

 候補者達の能力を確認するが、聖女と断定できる人物は現れなかった。


「やはり、カルロッタが本物の聖女……」


 その後、王妃のお茶会にソレーヌが招待された。

 

「ソレーヌ令嬢から花を頂いたの。それが今も美しいままなのよ」


 母の言葉には覚えがある。

 聖女が育てた花は枯れるまでの時間が長く、体調不良の続く母に活力を与えた。

 

「それは……不思議ですね」


「ソレーヌ令嬢は本物の聖女様かもしれないわね」


 後に分かる事だが、その花はソレーヌではなくカルロッタが丹精込めて育てた花だと判明する。

 

「私も、ソレーヌ令嬢にお会いしてみたいですね」


「えぇ、貴方も令嬢の事を気に入ると思うわ」


 それからすぐにソレーヌに会いに行った。

 教会で聖女の能力について学んでいる時間の為、本人は不在だったがカルロッタがいた。

 令嬢と会い夢を鮮明に思い出す。

 その後、ソレーヌと対面。

 カルロッタは違うが、ソレーヌは予知夢の通り良くいる令嬢そのもの。

 夢の私が何故令嬢に騙されたのか、今では考えられない。


「……その花を育てたのは……」


「勿論、私です私」


 ソレーヌとカルロッタの反応からして、花を育てたのはカルロッタと判断出来た。

 予知夢は全てが現実になるわけではないが、私に対する予言なのかもしれない。 

 王族に与えられた特別な能力……

 ソレーヌの能力とカルロッタを確かめるべく、私がした行動は…… 


「私にお守りとして……刺繍入りのハンカチを頂けないか?」


 聖女の刺繍入りハンカチには魔物除けの効果もあり、騎士達に人気だった。

 ソレーヌは『私が刺繍しました。拙いですがお守りに……』と言っていたが、聖女としての祈りの集中力を上げる練習としてカルロッタが刺繍したものだと判明する。

 令嬢の困惑具合で、刺繍は苦手と判断出来た。

 刺繍が苦手だからと聖女の能力が無いという事にはならない。

 一つ一つ確認し、ソレーヌが聖女ではないと確信したかった。

 そして、カルロッタと今度こそ婚約・結婚し私は国王となる。


「……ハンカチがお渡しできる状態ではなくなってしまったので、もう一度お時間を頂けませんでしょうか?」


 ソレーヌのハンカチを受け取りに行くと、案の定というかハンカチを拒まれる。

 それでも受け取ると、夢のソレーヌのハンカチとは似ても似つかない代物だった。

 事前に伝えていた通り魔獣の発生が多発するという場所に向かう。

 タイミングがいいのか、魔獣を確認したので、騎士に持たせて向かわせるも魔獣は躊躇うことなく騎士に突進。


「夢のお告げ通りか……」


 ソレーヌの能力は無しと判断。

 その事実と共に、私はカルロッタへの婚約話を進めた。

 母は、聖女の能力がなかったとしてもソレーヌに好印象を抱いていた。

 仮令夢の通りカルロッタが聖女でなかったとしても、私はカルロッタを望む。

 令嬢は公爵家なので、王妃に相応しい家柄と言える。

 

「どうしてお姉様なのでしょうか? バルリエ公爵との後ろ盾や繋がりでしたら、私でも問題ありませんよね? むしろ社交的で名が知れ渡っている私の方が適任ではないでしょうか?」


 婚約話をバルリエ公爵家に伝えると、予想通りの反応を示すのはソレーヌ。

 カルロッタは、私が婚約を望むと話すと困惑の表情を見せる。


「……私と第一王子は互いを知らないと言いますか……後に、やはりソレーヌの方が良かったと心変わりするのではないかと……」


 夢では、確かに私はソレーヌに変更してしまった。

 だが、現実で同じことは無いと断言できる。


「そんな事は無いと思う。それに、王族の婚約は簡単に反故に出来るものではない。婚約解消になる事を恐れているのであれば、誓約書を認めてもいい」


 あの予知夢は私への神からの戒めだったに違いない。

 間違った判断を下せば、国を混乱に導き王族であろうと罰を受けると……


「いえ、そこまでする必要は……」


 私がいくらカルロッタとの婚約を望んでいると話すも、困惑するばかり。

 令嬢に喜ばれると思っていた……予知夢のように……


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― 新着の感想 ―
結局、前回の使用人も王子も 自分の都合が1番 なんですよね。 ある意味全く反省していない…
なるほど予知夢だという認識なのね。実際にやらかしたことではないという認識なら謝ったり悔いたりしないわなあ。
しかし、この王子、女性は誰も私と結婚したいと願っていると思っていると考えてるね。相手が本当に私との結婚を望んでいるか聞く王子はいないのかな。相手の感情無視しすぎだよね。
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