34
〈前回〉
「……ソレーヌ、祈りの方は捧げているだろうか? 」
今のソレーヌは毎日祈りを捧げている。
それでも改善したという報せが届くことは無い。
「祈りは捧げているのですが……なんだか調子が悪いみたいで……」
祈るも改善の見込みがない。
シュルベステルだけでなく、お茶会に参加する令嬢達からも競うように自身の領地について訴えられているくらい。
次第にお茶会を楽しむ雰囲気ではなくなり、ソレーヌはお茶会の招待を欠席するように。
「国全体が災害に見舞われている。今後ソレーヌとのお茶会は落ち着くまで延期させてくれ」
「そんな……畏まりました」
数週間、数か月経過しても国は安定せず。
シュルベステルとソレーヌのお茶会も延期のまま。
それだけでなく、貴族達の間で囁かれ始める。
「ソレーヌ様はどうして祈ってくださらないのかしら? 」
「あれだけ贈り物しているのに、全く領地は改善しないどころか悪化するばかりです」
「ソレーヌ様の聖女の能力が衰えたのではありませんか? 」
「聖女の能力が衰えるって、令嬢はまだ十八歳でしたわよね? 」
「私……ずっと思っていた事があるんです……」
「……なんですか? 」
「憶測ですが……ソレーヌ様は本当に聖女なのでしょうか……」
一人が疑惑を口にすると、波のように不信感は広まっていく。
「まっまさか、ソレーヌ様は……聖女……ですよね? 」
「そっそうよね? 以前は日照りや魔獣、それに王妃の体調も回復させたではありませんか……」
「そうよ。ソレーヌ様でなかったら、一体誰の祈りが通じたというのよ……」
「それは……カルロッタ様ではないでしょうか……」
「そんな……まさか……」
ソレーヌの能力を否定するも、カルロッタが聖女であったのを認めることは出来なかった。
認めてしまえば、既に聖女は亡くなったという事になる。
偽聖女という汚名の中で……
彼女の葬儀に出席した者は僅か。
出席しても、最後の見送りに相応しくない態度だった……
「ですがカルロッタ様が聖女として活動していた時は、こんなにも災害が発生する事はありませんでしたわ」
「だとしても、カルロッタ様は……」
「教会に掛け合い、ソレーヌ様が本当に聖女なのか再度確認して頂く必要がありそうですね」
「えぇ。それで、今度こそ本物の聖女を探さないと……」
貴族達は一丸となり教会へ。
「失礼ながら司祭様、聖女様は本当に祈りを捧げていらっしゃるのかしら?」
「もちろんです。我々も同席しておりますから」
「では、ソレーヌ様が本当に聖女様なのですか?」
「……貴方方は聖女様を疑うのですか?」
「疑いたくはないのですが、こうも災害が続くとソレーヌ様に対し疑念を抱いてしまいます。私達は聖女様と教会に多額の寄付をしておりますのよ」
「……聖女様も努力はされております。教会では聖女として学び、王宮では王子の婚約者として教育を受けていると聞いています。それにソレーヌ様自身から姉のカルロッタ様の死が受け入れられず、能力が不安定になってしまうと……」
「カルロッタ様の死から一年は経過しております。そろそろ能力が安定しても良いのではありませんか?」
「それは我々が決める事ではありません」
「司祭様……カルロッタ様が聖女様だったのではありませんか?」
「なっ、そんなはずありません」
「そうでしょうか? カルロッタ様が聖女であった頃、国は安定していました。ソレーヌ様が聖女となってからですよ、こんなに国が乱れているのは」
「これは新たな聖女様への神からの試練です」
「……カルロッタ様の時にはそのような事はありませんでしたように記憶しております」
「あの方は……聖女……ではありませんでしたから……」
「それが教会の判断ということでよろしいのですね?」
「我々は、ソレーヌ様を聖女と認めました」
「……そうですか」
教会に聞き入れてもらえなかった貴族達は、王宮へも手紙を送る。
ソレーヌの聖女としての能力は本物だったのか。
再度検査・検討する必要があるのではないか? と……




