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<前回>


 カルロッタの死を悼み、シュルベステルとソレーヌは結婚の延期が決定。


「どうして、私の結婚を延期しなければならないのですか? 」


 結婚の延期が不満なソレーヌ。


「公爵令嬢であり、聖女の姉が衰弱死したんだ。一年は喪に服す」


「お姉様は私の結婚が延期されることの方を悲しみます」


「これは決定事項だ」


 その後ソレーヌがいくら王宮や教会に訴えても、結婚の延期は覆らなかった。

 

「ソレーヌお嬢様、本日も沢山の手紙が届いております」


 最近のソレーヌ宛の手紙はお茶会の招待状ではなく、嘆願書ばかり。


「はぁ……こんな時まで祈らなきゃいけないなんて……誰も聖女の幸せや苦労を分かってくれないのね……私の人生を犠牲にしているのに、皆は自分の事ばかり」


 領地の問題は領主が、魔獣は騎士が、病は医者が解決すべきこと。

 聖女に祈って解決してもらう他力本願な貴族に不満を覚え始める。

 そんな気分も、婚約者とのお茶会で忘れられた。

 

「ソレーヌ嬢、最近再びスカルキー地方の日照りが報告され始めた」


 シュルベステルと楽しいお茶会だと思っていたが、開口一番は嘆願書で目にした内容。

 スカルキー地方は以前私が祈り、日照りが解消された場所。


「そうなのですか? 大変ですわね」


「王宮に支援の手紙が届いている」


「シュルベステル様もお忙しいのですね」


「ソレーヌ嬢、忙しいとは思うが祈ってほしい」


「畏まりましたわ。スカルキー地方を優先でお祈りいたします」


「……いや、スカルキー地方も同時進行で祈ってほしい」


「同時にですか? 」


「最近、各地で災害が多発している。日照りに豪雨に地滑り、森林火災、魔獣による被害で人が襲われ作物も減少。底なし沼が拡大し動物が嵌り、死骸から腐敗臭が広がるなど毎日何かしら報告が上がる。私も騎士を派遣し金銭的支援もしているが追いつかない状況だ。それに最近では、以前祈り解決した問題が再び浮上し始めている」


「まぁ……そうなのですか……」


「ソレーヌ嬢の方には嘆願書は届いてないか? 」


「嘆願書……お茶会やパーティーへの招待状は届くのですが……嘆願書については……」


「……そうか。これから届くだろうから、一つ一つ目を通し祈ってほしい」


「……畏まりました」


 シュルベステルとのお茶会はいつもであれば、次のパーティーに着用する新しいドレスや宝石など華やかな話題だった。

 なのに、今回は各地の状況や祈りをせがまれ終わった。

 

「お茶会なのに、楽しくなかったぁ。折角シュルベステル様とのお茶会だったのに……」

  

 ソレーヌは屋敷に戻り今まで届いた手紙を興味なく確認する。

 

「日照りに豪雨……地滑り、火災……魔獣に農作物の不作……動物の腐敗臭……その他にもあるのね……」


 シュルベステルの言葉通り、新たな内容もあれば以前叶えた願いもある。

 

「はぁ……私を休ませる気ないのね。仕方がない。聖女として祈りますか」


 教会でしか祈らないソレーヌだが、今日だけは全て解決するように祈る。


「ぜ~んぶ、解決しますように……っと……よし。これで解決」

  

 聖女として祈りを終えたのに、それからも祈るよう催促された。


「ソレーヌ様、最近祈りを怠っているのではありませんか?」

「ソレーヌ、災害について祈っているのか?」

「今日のお茶会で、いつになったら祈ってくれるのか詰め寄られたわ」


 彼らの答えに同じ言葉で言い返す。


「私、ちゃんと祈っています」


 シュルベステルだけでなく、司祭や両親にまで祈るよう懇願されるように。


「……祈ってるわよっ」


 次第にソレーヌの情緒は不安定に。

 祈っても祈っても改善したという報せは無く、それどころが他の領地の嘆願書も追加され手紙の束が積み重なり崩れていく。


「聖女にばかり頼らないで、自分達でどうにかしてよっ」


 最近のソレーヌは、手紙を読む事すら避けるように……

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― 新着の感想 ―
「聖女にばかり頼らないで、自分達でどうにかしてよっ」 これに尽きる。 他の人も判ってるのは新しいけど、世界の構造が歪に感じる。
聖女ありきのシステムが当たり前すぎて 聖女なしの社会のシステムが働いてないんだな まるでリンで潤っていたが枯渇し国民が働くことすら知らないナウルみたい
ここまで何でもござれだと聖女というよりも神 いなくなったら数年で滅びそう
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